花の断面、葉脈と根、分類の枝分かれを3枚の図で確かめます。アブラナとマツの違いやシダとコケの見分け方を、観察の手順と例題から学べる植物の入門です。
よくあるのは、宿題のノートの余白に植物の名前を書き出したものの、マツを「花が目立たないからシダのなかま」に入れてしまう場面です。花屋で見かける花の姿を思い浮かべると、マツの花も、種子をつくらない植物も、同じように見えるかもしれません。けれども、植物の分類では、見た目の華やかさよりも、種子をつくるか、胚珠が何に包まれているかを確かめます。
この単元は、多くの教科書では中1で学びます。名前を覚えるだけでなく、「どのつくりが分類の根拠になるか」を説明できることが目標です。花の内側、葉の筋、土の中の根へと観察する場所を変え、最後に植物全体の分類へつなげていきましょう。植物の名前を知らなくても、与えられた特徴からなかまを絞れるようになります。
この単元で身につけること
- 観察した事実を記録します。「葉が細い」という形と、「筋が並んでいる」という葉脈の特徴を分けて、分類に使える情報を取り出します。
- 花の各部分の名前と位置を結びつけます。おしべのやく、めしべの柱頭・子房・胚珠を、図の向きが変わっても探せるようにします。
- 受粉後の変化を対応させます。胚珠が種子に、被子植物の子房が果実になることを、変化する前後の名前で整理します。
- 被子植物を双子葉類と単子葉類に分けます。子葉の枚数を中心に、葉脈と根の典型的な特徴を組み合わせて考えます。
- 種子をつくる植物と、胞子でふえるシダ植物・コケ植物を区別します。さらに根・茎・葉の区別などを使い、分類を最後までたどります。
小学校で観察した発芽や花のつくりが出発点です。今度は、別々に見ていた葉・根・花の特徴を、一つの植物の情報としてつなぎます。
基本の考え方
観察は全体から細部へ進めます
まず植物全体を見て、花や葉がどこについているかを確認します。次に観察する部分を決め、ルーペで細部を見ます。ルーペは目に近づけて持ち、動かせる観察物を前後させて、はっきり見える距離を探します。動かせない枝などを見る場合は、自分の顔とルーペを一緒に動かして距離を調節します。太陽は絶対に見てはいけません。
スケッチでは、見えた輪郭を細い線で描き、影を塗り重ねず、部位名を引き出し線で示します。日付、場所、大きさも記録すると、別の植物と比べやすくなります。「たぶん種子だ」と決めつけず、見えた形と考えたことを分けて書くのが基本です。知らない植物を口に入れたり、許可なく採集したりせず、授業では先生の指示に従って扱います。
花の中では何がどこにあるのでしょうか
アブラナなどの花では、外側からがく、花弁、おしべ、めしべという位置関係が見られます。おしべの先にあるやくでは花粉がつくられます。めしべの先が柱頭、根元のふくらんだ部分が子房で、その中に胚珠があります。図1の左では、子房の内側を見るために切り開いたようすを模式的に描いています。実際の数や形は植物によって異なります。

被子植物では、花粉が柱頭につくことを受粉といいます。受粉のあと、受精を経て胚珠は種子に、子房は果実へと育ちます。受粉した瞬間に種子が完成するわけではありません。「果実」は甘くて食べられる部分だけを指す言葉ではなく、アブラナの細長いさやも果実です。子房が胚珠を包むという関係が、果実が種子を包む関係につながります。
マツも種子をつくりますが、胚珠を包む子房がありません。このような植物を裸子植物といい、子房の中に胚珠がある被子植物と区別します。図1の右は、マツの雌花の一部であるりん片と、その表面の胚珠を示しています。雄花のりん片には花粉のうがあり、そこでつくられた花粉が風で運ばれて胚珠につくと受粉です。雌花はのちにまつかさとなり、種子ができますが、子房がないので果実はできません。マツやイチョウは裸子植物です。
葉・根と、種子をつくらない植物
葉に見える筋を葉脈といいます。網の目のようなものが網状脈、ほぼ並んで走るものが平行脈です。根には、太い主根から側根が枝分かれする型と、細い根が多数出るひげ根の型があります。被子植物のうち、子葉が2枚の双子葉類は網状脈と主根・側根、子葉が1枚の単子葉類は平行脈とひげ根が典型です。アブラナやアサガオは双子葉類、イネやトウモロコシは単子葉類に入ります。
シダ植物とコケ植物は、花や種子をつくらず、胞子でふえます。シダ植物には根・茎・葉の区別があり、水などを運ぶ維管束があります。イヌワラビなどでは、葉の裏に胞子のうが集まっています。コケ植物にはシダ植物のような根・茎・葉の区別や維管束がなく、水は体の表面から取り入れます。地面などに体を固定する仮根は、種子植物の根と同じつくりではありません。ゼニゴケやスギゴケがこのなかまです。
例題で解き方を確かめる
例題1 花の内側を順に読んでみましょう
花の断面に、めしべの根元のふくらみAと、Aの中の小さな粒Bが描かれています。AとBの名前、受粉後にそれぞれ何になるかを答えましょう。また、花粉がつくられる場所と、被子植物で花粉がつく場所も答えます。
- まず「めしべの根元」という位置からAを子房と判断します。ふくらんでいるという形だけでなく、めしべの一部であることが根拠です。
- 子房の内側にあるBを胚珠と判断します。図1の左で、外側の子房と内側の胚珠を指で別々にたどると取り違えを防げます。
- 子房は果実、胚珠は種子になると対応させます。包む側と包まれる側の関係を保って考えるためです。
- 花粉をつくる場所はおしべのやく、花粉がつく場所はめしべの柱頭と答えます。出発点と到着点を分ければ、受粉を花粉づくりと混同しません。
答えは「Aは子房で果実になる、Bは胚珠で種子になる、やくでつくられた花粉が柱頭につく」です。問題の図が横向きでも、紙面の上下を頼りにせず、めしべの先と根元という位置関係を探しましょう。
例題2 葉脈と根からなかまを考えましょう
図2のPとQは、どちらも被子植物の典型的なつくりを示しています。それぞれ双子葉類・単子葉類のどちらか、また発芽時の子葉は何枚かを答えましょう。

- 葉の形ではなく、葉脈の通り方を見ます。Pは枝分かれした筋がつながる網状脈、Qは筋がほぼ並ぶ平行脈です。
- 次に根を照合します。Pは中央の太い主根から側根が出ており、Qは細い根が多数出るひげ根です。違う部分の特徴が合うかを確かめるためです。
- Pを双子葉類、Qを単子葉類と判断し、子葉をそれぞれ2枚、1枚と答えます。葉脈と根から、発芽時の特徴へ結びつけます。
答えは「Pは双子葉類で2枚、Qは単子葉類で1枚」です。ここで数える子葉は、発芽の初めに見られる葉であり、成長した植物についている葉の総数ではありません。図2では根の長さを比べる必要もありません。見るべき点は太い軸から分かれるか、細い根が束になって出るかです。
例題3 四つの植物を根拠つきで分類しましょう
Aは子房のない胚珠から種子をつくり、Bは子房の中に胚珠があります。Cは種子をつくらず根・茎・葉の区別があり、Dは種子をつくらず仮根で体を固定します。A〜Dを裸子植物・被子植物・シダ植物・コケ植物に分けましょう。
- 種子をつくるかでA・BとC・Dを分けます。最初に共通する大きな特徴を使うと、葉の見た目に引きずられにくくなります。
- A・Bでは子房の有無を確かめます。Aは裸子植物、Bは被子植物です。種子になる前の胚珠が包まれているかが決め手です。
- C・Dでは根・茎・葉の区別に注目します。Cはシダ植物、Dはコケ植物です。仮根をシダ植物の根と同じものとして扱わないようにします。
答えは「A:裸子植物、B:被子植物、C:シダ植物、D:コケ植物」です。ただしBが双子葉類か単子葉類かは、この情報だけでは決まりません。子房があることは被子植物だという根拠になりますが、その先へ分けるには子葉などの情報が必要です。わかった段階まで答え、足りない特徴を挙げられることも分類の力です。
つまずきやすいところと直し方
花が見えない植物を全部同じにしてしまう
「花が見えないので種子をつくらない」という考え方では、花の季節が終わったアブラナや、花が目立たないマツを誤って分けてしまいます。観察した時点で見えないことと、その植物がそのつくりをもたないことは別です。マツには雄花と雌花があり、種子をつくります。季節の異なる観察記録なども確かめ、「種子をつくるか」という特徴で分け直します。
図3のように、分類は一度に名前を当てるのではなく、順番に条件を確かめます。線の分かれ目ごとに、種子、子房、子葉、体のつくりのうち何を比較しているかを言葉にしましょう。

葉が細ければ単子葉類だと決めてしまう
「細い葉だから単子葉類」という判断は、葉の外形と葉脈を混同しています。マツの葉は細くても、マツは裸子植物なので、被子植物の中の分類である単子葉類には入りません。まず被子植物かどうかを確かめ、そのあとで子葉や葉脈、根を照合します。葉脈と根は典型的な特徴であり、例外もあるため、実物の分類を一つの特徴だけで断定しないことも必要です。
胞子を小さな種子と考えてしまう
「小さい粒は全部種子」という考え方では、シダの胞子も種子になってしまいます。しかし、種子は胚珠からできるもので、胞子は胚珠が育ったものではありません。シダの葉の裏の粒状の集まりは、種子の集まりではなく胞子のうの集まりです。その中につくられる胞子と、胞子を入れる袋も区別しましょう。シダとコケは胞子でふえる点では共通ですが、維管束や根・茎・葉の区別まで同じではありません。共通点を一つ見つけたら、違う点も一つ確かめます。
練習問題
練習1 被子植物で、花粉が柱頭につくことを何といいますか。また、胚珠と子房はのちにそれぞれ何になりますか。変化の前後を矢印で結んで答えましょう。
練習2 ある被子植物は子葉が1枚で、葉脈がほぼ並んでいます。何類に入り、典型的にはどのような根をもちますか。
練習3 イヌワラビとゼニゴケは、種子と胞子のどちらでふえますか。また、根・茎・葉の区別があり、維管束をもつのはどちらですか。
練習4 「マツは種子をつくるので、その種子を包むまつかさは果実である」という説明の誤りを、子房という語を使って直しましょう。
答えと解説
練習1 受粉です。胚珠→種子、子房→果実です。内側と外側の対応を保って答えます。受粉と、その後の種子ができるまでの過程を同じ瞬間の出来事にはしません。
練習2 単子葉類で、ひげ根です。子葉が1枚という特徴が分類の根拠で、平行脈とひげ根を対応させます。
練習3 どちらも胞子でふえます。根・茎・葉の区別と維管束をもつのはイヌワラビです。ゼニゴケの仮根は体を固定します。
練習4 マツには子房がないので、果実はできません。まつかさは雌花が成長したもので、種子があっても果実があるとは限りません。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
葉脈と根のつくりは、植物が水を取り入れて運ぶ仕組みや、葉で行う光合成の学習につながります。花粉・胚珠・種子の関係は、生物が子を残す仕組みを考える土台になります。
家庭では、まず5分ほど、手元の野菜の葉や落ち葉を明るい場所で見て、葉脈だけを紙に写してみましょう。食材は保護者の了承を得て使い、葉の幅ではなく筋の分かれ方に注目します。もう一つは、図3を紙で隠し、マツ・アブラナ・イヌワラビ・ゼニゴケを、特徴を書いた枝でつなぐ方法です。植物を採ったり掘ったりせずに確かめられます。
個別指導では、分類名を間違えたとき、子房と胚珠を図で指せるかまで戻って確かめます。用語の記憶と、図で位置を見つける力のどちらで止まっているかを分けて扱います。
まとめ
見慣れない植物の問題でも、名前を思い出せるまで待つ必要はありません。与えられた情報に線を引き、分類のどの分かれ目に使えるかを確かめると、答えられる範囲が見えてきます。判断できない先が残ったら、次に観察したい部分を挙げてみましょう。「子房を確かめたい」「子葉の枚数が必要だ」という言葉には、分類の根拠が含まれています。
植物の分類の答えは、名前の隣に観察の根拠を書けたところで完成します。





