図や問いの向きが変わると止まるときは、見た目と解法を決める条件を分けて比べます。手持ちの教材で違いを少しずつ増やす練習から、初見にも使える関係を見つけてください。

問題の型を変えて解く—初見の問題に強くなる練習
見慣れたページでは動く手が、初めての図で止まる
よくあるのは、バス停のベンチで到着を待つ間に演習のページを開き直し、「家では解けたのに、図が変わったら何をすればよいのかわからなかった」とつぶやくという場面です。解き直したノートには丸が並んでいます。公式も言えます。それでも、見慣れない問いを前にすると、最初の式が書けません。
このつまずきを、練習量の不足だけで片づけると、同じページをもう一度繰り返すことになります。それで手順は滑らかになっても、別の形で出された問いへの入り口が見つからないまま、ということがあります。共通テストに向けて考えたいのは、何問解いたかとともに、どんな違いを経験したかです。
問題の型を変える練習は、次々に難問へ進むことではありません。同じ考え方を使う問題について、数字、条件の示し方、問われる向きなどを変え、「何が変わっても使えるのか」を確かめます。今日は、手元の教材で始める方法と、初見で立ち止まったときの戻り先を整えましょう。

答えの道順だけ覚えると、別の入り口が見えにくい
同じ問題を繰り返すと、問題文の出だしや図の位置が、解き方を思い出す合図になることがあります。「この図ならこの式」と結びついている状態です。最初の学習では、こうした合図が助けになります。ただ、合図と考え方が一体になったままだと、図の向きや文章の順番が変わったとき、知っているはずの方法を呼び出せません。
そこで区別したいのが、見た目の特徴と、解法を決める条件です。例えば割合の問題なら、商品や人数の話に変わっても、何を基準に比べるかという関係は残ります。一方、文章に同じ言葉が出ていても、比較の基準が違えば式は変わります。初見への備えは、似た言葉を見つける速さより、条件と方法を結び直す練習として考えると取り組みやすくなります。
多様な問題で練習した群は、新しい問題での成功率と効率が高く、自分で解くか、解く様子を観察するかによる差は小さかったと報告されています(Planellsほか・2026)。対象は成人200名であり、その結果から高校生の共通テストでの伸び幅を直接見積もることはできませんが、練習中に経験する問題の幅へ目を向ける手がかりになります。この知見を学習に取り入れるなら、解く量を増やす前に、並べた問題が何を変えているのかを確認したいところです。
同じ考え方を別の条件で使うには、以前の解答と今の問題をつなぐ関係を見つける必要があります。練習した問題と新しい問題の間に、どこまで共通点を見つけられるかが、この練習の焦点になります。「初見だから無理」と感じたら、初めて見る部分と、すでに知っている関係を分けて書いてみてください。
例えば、表の中に直接数値が並んでいた問いが、会話文の中から必要な数値を拾う問いに変わることがあります。このとき増えるのは、計算そのものの難しさとは限りません。計算に入る前に、情報の役割を整理する作業が増えています。数字だけを取り替えた問題では、この作業を十分に経験できない場合があります。どの段階を練習したいかによって、変える部分を選ぶ必要があるのです。
ただし、知らない語句も新しい公式も複雑な図も一度に加えると、止まった理由が見えにくくなります。練習では、共通する考え方を保ちながら違いを少しずつ増やすと、振り返る対象が定まります。これは、単元をいくつも混ぜることとも区別できます。同じ単元の中でも、示し方や問い方を変えれば、使える知識の確かめ方を広げられます。
見た目だけを頼りにしているかは、解く前の言葉にも表れます。「前のページと似ているから」と答えた場合は、どの条件が似ているのかを問い直してみましょう。「ある量を基準にして別の量を表しているから」と言えれば、問題の中身へ目が向いています。説明の巧みさを競う必要はありません。短くても、問題文の条件に結びついた理由を持つことが練習の目標です。
手元の教材で、変える部分を決めて練習する
最初の5分で、基準になる問題を選ぶ
まず、解説を読めば手順を説明できる問題を1問選びます。答えを覚えているだけでなく、「この条件があるので、この方法を使う」と言える問題が出発点です。最初から、解説を読んでもわからない問題を選ぶ必要はありません。使いたい考え方が定まらないまま形を変えると、何を練習しているのかも曖昧になります。
ノートには、問題番号とともに「与えられたもの」「求めるもの」「両者をつなぐ関係」を短く書きます。割合なら基準にする量、グラフなら軸が表すものと変化の関係、読解なら主張と根拠の位置、といった具合です。問題文を丸ごと写すより、解法を選ぶ理由を残しましょう。ここまでを最初の5分の区切りにします。
説明が止まったら、解説の最初から全部を読み直す前に、止まった箇所を特定します。公式の意味が曖昧なのか、条件を式に直せないのか、計算の途中で迷うのかを分けてください。基準の問題を理解する時間が必要なら、その日はそこを練習の中心にします。型を変える日を急ぐより、比べるための土台を用意する方が、次の作業を進めやすくなります。
次の10分は、示し方だけ違う問題に取り組む
次に、同じ教材の練習問題や解き終えたプリントから、同じ関係を使い、示し方が違う問題を探します。文章と表、表とグラフ、説明文と対話文など、情報の置かれ方に注目してください。新しい教材を増やす前に、手元の解説を見比べ、同じ考え方が使われている問題を探す方法があります。選んだら解説を閉じ、白紙から始めます。
この段階では、10分を目安に取り組み、最初に何をしたかを残します。表を描いた、条件に線を引いた、求めるものを言い換えた、という動きで十分です。時間内に解き終わらなくても、取り出せた情報と不足している情報を分けて記録します。区切りは練習を振り返るために使い、最後まで届かなかったことだけで失敗としないでください。
採点では正誤に加えて、基準の問題との共通点を書きます。「同じ公式だった」だけで終えず、「全体と部分の関係が同じだった」「変化の割合を比べていた」と一段具体にします。違う言葉で書かれた問題から同じ関係を取り出せたかが、最初の確認点です。答えが合っていても、使う理由を説明できなければ、その部分に印を残しましょう。
問われる向きを変え、もう1問を選ぶ
次は、使う関係を保ったまま、求めるものの位置が変わる問題を探します。全体と割合から部分を求めたなら、部分と割合から全体を求める問いを比べる、といった方法です。読解では、結論を選ぶ問いと、その結論を支える根拠を選ぶ問いを比べられます。別々の手順を丸暗記する前に、何が与えられ、何が空欄になったかを確かめます。
ここでは、解き始める前の予告を書いてください。「今回は基準の量が未知なので、それを先に置く」のように、前の問題から変える動きを短く示します。採点後には、その予告と実際の解法を照らし合わせます。当たったかだけでなく、予告の理由が条件に合っていたかを見ることが2つ目の確認点です。うまく言えなければ、解説のどの条件を見落としたかに戻ります。
問題文を自分で書き換える場合は、数字を変えるだけにとどめ、答えや条件の整合性を確かめられる範囲で使います。条件を削った結果、答えが決まらない問題になることもあります。まずは解答のある既存の問題同士を比較する方が、解けなかった原因を追いやすくなります。問いの向きを変える練習も、適切な組み合わせが見つからなければ、塾へ問題番号を持っていけば十分です。
比べ方を割合の問題で考えてみます。基準の量が100、比べる量が20なら、基準に対する割合は20%です。次に、比べる量が20、割合が20%で、基準の量を求める問題を置きます。使う関係は同じでも、既知の数値をそのまま掛けるだけでは解けません。「何を100%と見るか」を確かめ、未知の量を置くところから始めます。
さらに、同じ数値でも「20は100の何%か」と「100は20の何倍か」では、比べる向きが変わります。数字が同じだから解き方も同じ、と判断していないかを確かめる組み合わせです。こうした短い問いで判断の理由を整理してから、文章量のある問題へ戻ると、どの情報に注目すべきかを試しやすくなります。小さな比較にも、初見への備えにつながる練習を置けます。
終わりの5分で、違いを短い言葉にする
演習の最後に5分を取り、「変わった部分」「変わらなかった関係」「最初に確かめること」をそれぞれ書きます。長い感想は要りません。「文章になったが、基準を決める点は同じ」「軸の単位が違うので、式を立てる前に見る」など、次の答案に生かせる言葉を選んでください。ここで言葉にできない違いは、次回もう一度比べる候補です。
見直しには、解説を隠して最初の一手だけ再現する方法も使えます。全部を解き直さなくても、必要な情報を拾い、方法を選び、その理由を書けるかを確かめられます。途中の計算で間違えた場合は、入り口の判断と計算の修正を分けましょう。毎回すべてをやり直すより、自分が止まった場所に時間を向けやすくなります。
ノートの記録は「問題番号/違い/選んだ方法/理由/次に見る条件」の順にしておくと、後から使えます。ページをきれいに仕上げることより、次の練習で同じ迷いが現れたかを照合できることが目的です。書く作業が負担なら、理由だけを短い文にして、ほかは単語で残しても構いません。使い続けられる量に絞ってください。
次の学習日には、まだ解いていない問題で確かめる
次の学習日には、同じ関係を使う未着手の問題を選びます。前回のノートを開く前に、「何を求めるか」「どの条件が方法を決めるか」を書いてから解いてください。記憶にある答えを再現できたかではなく、新しい見た目から関係を取り出せたかを見ることが3つ目の確認点です。難しい問題へ進む判断も、この記録を材料にします。
次の問題を選ぶ際は、前回と何が違い、どんな助けで進めたかを記録から確かめます。図を見て解けたなら今度は自分で図に直し、条件の違いが重なって止まったなら、違いを1つに絞った問題へ戻ります。時間が少ない日は基準の問題との比較までで区切り、「次は条件を表に直すところから」と書いて翌日に続けてください。途中まで比べた条件と、まだ比べていない条件が分かれていれば、翌日は続きから試せます。自力で関係を説明できた場合には、次の問題で情報の示し方を少し変え、使える範囲を広げます。

個別指導では、問題の組み合わせと迷った場所を持つ
家庭で難しいのは、解くことより、ちょうどよい違いのある問題を選ぶことかもしれません。見た目が似ていても必要な知識が違う問題や、同じ解法でも読む負担が大きく違う問題があります。個別指導では、まず基準の問題を解く様子を見て、現在使える考え方を確かめます。そのうえで、どの条件を保ち、どの部分を変えるかを決めます。
塾が持つのは、問題の選定と、その選定理由です。「初見に弱いから応用を増やす」という指示では、生徒が何を直せばよいかが伝わりません。「表からは数量を拾えるので、次は文章から同じ数量を拾う」「求める対象が変わると式が逆になるので、基準を言葉にしてから立式する」と、練習の焦点まで具体にします。
授業中に最初から解法を教えると、本人が何に気づけなかったかが見えにくくなることがあります。そこで、まずは求めるものを書いてもらい、どの条件を使おうとしたかを聞きます。声かけが必要なら、「この式を使って」より先に、「比べる基準はどれですか」と条件に戻す問いを置きます。必要な支援の位置を確かめたうえで、次の問題ではその支援を減らします。
例えば、ヒントを受けて正解できた答案と、自分で関係を見つけて正解できた答案は、同じ丸でも次の課題が違います。前者なら、ヒントになった条件を自分で探す練習を置きます。後者なら、示し方をもう少し変えて確かめます。正答数に加えて、どの声かけが必要だったかを記録すると、家庭学習で一人で始められる範囲も決めやすくなります。
進み具合は、「表から文章への変更」「求める対象の変更」「不要な情報の追加」のように、経験した違いを並べて見えるようにします。それぞれに、自力で始められたか、条件を尋ねられれば進めたか、解説が必要だったかを添えます。すべてを一度に埋める必要はありません。前回の迷いが、次の別問題でどう変わったかを追える記録にします。
この記録があると、演習中の誤答の受け止め方も変わります。新しい示し方に取り組んだ日の正答数だけを見て、学習が後退したと決める必要はありません。何を変えたことで止まったかがわかれば、次に戻る場所が定まります。一方、基準の問題でも条件を説明できないなら、変化を増やす前に土台の理解を確かめ直します。挑戦を続けるか、戻るかの判断も塾が担う部分です。
家庭は、決めた練習を始めやすい環境を整え、困ったことを塾へ伝える窓口になります。保護者の方は、「今日はどんな違いがあった」と尋ね、お子さまの言葉を受け取ってください。説明が短くても、その場で正しい答えに導こうとしなくて構いません。うまく話せない場合は、止まった問題に付箋をつけ、塾へ持ってくる方法があります。
家庭へは、基準にした問題と示し方を変えた問題を対にして渡し、迷った箇所へ付箋を添えます。表から文章へ変えても数値を選べた箇所は本人が印を付け、比較の基準を取り違えた箇所には講師が問いを残します。次の授業で問いの向きを変えて確かめたら、その付箋に結果を書き足します。保護者は問題の対を見ながら、何を変えて練習したかと、判断が続いた範囲を確かめられます。
家庭からは、解き始めるまでに止まっていた、解説を見るとすぐ進んだ、問題の選び方で困った、といった様子が助けになります。学習時間の長さだけでは見えない情報です。塾で選んだ問題が家庭で難しすぎたなら、量をこなすよう求める前に、組み合わせを調整します。本人の取り組みと問題の条件を一緒に見て、次の練習へつなげます。
授業と家庭で同じ問題だけを使うと、授業中の説明を覚えて進めたのか、自分で条件を読めたのかを分けにくいことがあります。そのため、授業では比較の仕方を練習し、家庭では同じ関係を使う別の問題に取り組む組み合わせを考えます。戻ってきた答案には途中の線や書き直しも残してもらいます。答えに至る前の迷いが、次の声かけを決める材料になるためです。
また、本人が問題を選ぶ機会も少しずつ設けます。「今日の問題と同じ関係を使うものを探し、選んだ理由を添える」という課題なら、選択そのものが理解の確認になります。塾が選び続ける段階から、自分で練習を組める段階へ進めるかも見ていきます。似ていると判断した理由にずれがあれば、問題同士を並べ、その条件の違いから話し合えます。
型を変える練習で迷いやすい3つのこと
Q1 同じ問題を繰り返す練習はやめた方がよいですか
やめる必要はありません。同じ問題には、基本の手順を確かめたり、前回の誤りを修正したりする役割があります。ただ、答えや行の並びを覚えて解けるようになった段階では、別の問題で使えるかを確かめる機会も入れましょう。繰り返す練習と、形を変えて試す練習をつなげる考え方です。
判断に迷ったら、解説を閉じて「この条件があるので、この方法を使う」と言ってみてください。言葉が出ない場合は元の問題へ戻り、理由を整理します。言える場合は、同じ関係を使う別の問題へ進みます。繰り返す回数だけを先に決めるより、今の答え方を見て次を選ぶ方が、練習の目的がはっきりします。
Q2 初見に強くなるには、難しい問題をたくさん解くべきですか
まずは、知っている考え方を違う形で使う経験を増やしましょう。必要な知識まで新しい問題ばかりでは、形の変化に対応できないのか、知識が足りないのかを見分けにくくなります。難しさを上げることと、経験する形を広げることを分けて計画してください。
例えば計算が同程度でも、図から読み取る問いを文章から読み取る問いに変えるだけで、新しい確認ができます。逆に、見た目が同じで計算だけ複雑な問題は、今回の目的に合わないこともあります。問題を選ぶときは「どの違いを経験するためか」を言えるかどうかを目印にしましょう。
Q3 形を変えた途端に間違うと、自信がなくなります
間違いを「初見が苦手」という一言でまとめず、止まった場所へ名前をつけてみてください。「基準を逆にした」「必要な情報を取り落とした」と言えれば、次に確認する動きが決まります。解けたかどうかに加え、最初の判断や、その理由を残しておくのはそのためです。
負担が強い日は、解説を使って共通点を探すところまででも構いません。次回は違いを減らした問題で、自力で始められるかを確かめます。保護者の方も、「また間違えた」より、「今回はどこまで自分で決められた」と問いかけると、お子さまが進んだ部分を話しやすくなります。
初めて見る問題にも、知っている関係を探す
初見の問題を前にしたとき、すべてを新しく考え直す必要はありません。求めるものを確かめ、条件を整理し、知っている関係を探す。その動きを、示し方や問いの向きが違う問題で練習していきます。まずは手元の教材から、同じ考え方を使う問題を選び、違いを短く書くところから始めてください。
丸が増える日も、迷いがはっきりする日もあります。どちらの日にも、次の問題で何を確かめるかが残れば、練習をつなげられます。見た目の違う図から既知の関係を取り出せた瞬間、覚えた解法は新しい問いにも使える道具へと変わります。
参考文献
- Planellsほか(2026). Acta Psychologica. https://consensus.app/papers/details/a4ce8c2824645b23960692f2661a89df/





