英単語の覚え方——回数と間隔の設計|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

英単語帳を1冊買って、最初の50ページだけが真っ黒になっている。そういう単語帳が家に何冊もある——これは意志の弱さの問題ではなく、回数と間隔の設計が無いまま始めたことの当然の結果です。単語は「覚える」ものではなく、「決めた日に決めた回数だけ思い出す」ものとして扱うと、途中で崩れにくくなります。

この記事では、何語を選び、1日に何語を入れ、何日後に何回目を置き、間違えた語をどこへ戻すかを、日程表の形まで下ろします。研究が示しているのは「分散させると良い」という方向だけで、最適な日数は学習者や語の難しさによって変わります。ですから本文では、研究が示した数値と、当塾が手順として置いている目安値を、はっきり分けて書きます。

この記事の結論

  • 1回の出会いで覚えられる語はほとんどありません。同じ語に5回以上、別々の日に出会う設計を先に作ってから語を選びます。
  • 読書や動画だけで語彙を増やすのは効率が悪い。メタ分析では、読んだ語のうち覚えられたのは 9-18% にとどまります。単語リストやカードのほうが1語あたりの効率は高く、両方を役割分担させるのが現実的です。
  • 間隔は「広げる」ことより「空けること自体」が効きます。拡張間隔(だんだん広げる)と均等間隔の差は小さく、まとめてやらないほうが影響が大きい。
  • カードは「見て思い出す」形にします。答えが見えてしまう作り、書き写すだけの作業は、学習を減らすことがあると報告されています。
  • 意味が分かる語(受容)と、書ける・使える語(産出)は別物です。入試や英検で書かされる語だけ、産出まで引き上げる工程を別に置きます

何回出会えば覚えるのか

まず、回数の感覚を現実に合わせます。読んでいるうちに自然に覚える「付随的学習」について、内原(Uchihara)らは、出会った回数と学習量の相関を集めたメタ分析を行いました。26本の研究・N = 1,918 から得た相関は中程度で、回数を増やせば増えるが、回数だけで決まるわけではない、という結果でした。

Uchihara. The effects of repetition on incidental vocabulary learning: A meta-analysis of correlational studies. Language Learning. 2019;69(3):559-599.

では、読むだけでどれくらい増えるのか。ウェッブ(Webb)らのメタ分析は、意味に注意を向けた入力(読む・聞く・読みながら聞く)による語彙の増え方をまとめています。直後のテストで覚えられていたのは対象語の 9-18%、遅延テストでは 6-17%。読む 17%、聞く 15%、読みながら聞く 13% と、方法による差は小さいものでした。

Webb. How effective is second language incidental vocabulary learning? A meta-analysis. Language Teaching. 2023;56(2):161-180.

一方、カードや単語リストのように語そのものに注意を向ける「意図的学習」では、直後の意味再生で 60.1%、語形再生で 58.5% が覚えられていました。ただし遅延テストでは 39.4% と 25.1% まで落ちます。活動の種類によって 18.4% から 77.0% まで幅があり、「リストをやれば覚える」わけではないことも同時に示されています。

Webb. How effective are intentional vocabulary-learning activities? A meta-analysis. The Modern Language Journal. 2020;104(4):715-738.

ここから引ける実務上の結論は2つです。第一に、覚えたい語はリストかカードで直接扱う。多読や動画は、その語を定着させる場として後ろに置く。第二に、直後にできても3割から6割は落ちる前提で、復習日を最初から日程に入れる。落ちるのが異常なのではなく、落ちることが標準です。

何語を、どの順で選ぶか

語の選び方を間違えると、回数の設計は無駄になります。基準は「その語を知っていると、読める文章がどれだけ増えるか」です。ラウファー(Laufer)らは、語彙サイズ・文章の既知語率・読解の関係を調べ、読解に十分なカバー率として 98%(8,000 word families)、最低限として 95%(4,000-5,000 word families)という2つの閾値を示しました。

95% は「20語に1語わからない」、98% は「50語に1語」です。この差は体感で言えば、辞書を引かずに話の筋が追えるかどうかの差になります。つまり語彙は、頻度の高いほうから順に埋めるのが最も効率が良い。同じ1語でも、頻度上位の語は文章の中で何度も返ってきます。

実務では次の順で拾います。

  1. 教科書の巻末語彙表を、学年の最初から全部。ここが最も頻度が高く、かつ定期テストに直結します。
  2. 模試・過去問で自分が止まった語。止まった語だけを書き出すと、自分の穴に沿った頻度順リストになります。
  3. 級や入試の語彙表(英検の級別、共通テスト水準の基礎語)。ここで初めて市販の語彙リストを使います。
  4. 専門的な語・固有名詞は最後。覚えなくても読める語に時間を使わない

目安として、小学生は 1,000 語、中学卒業時に 1,500 語前後、高校で 3,000 語、難関私大や英語での読書まで見るなら 5,000 語から 6,000 語。ここは研究が示した数値ではなく、教科書と入試の実情から当塾が置いている目安です。

1日の語数と、戻す日の決め方

間隔については、まとめてやるより空けたほうが良いことが繰り返し確認されています。中田(Nakata)は、日本語を母語とする大学生 128 名が英日の語ペア 20 組を学ぶ実験で、拡張間隔(だんだん広げる)と均等間隔を比べました。拡張間隔がわずかに有利でしたが、差が大きかったのは間隔を空けたかどうかのほうでした。

Nakata. Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning? Studies in Second Language Acquisition. 2015;37(4):677-711.

同じ研究者らは、初回学習と再学習の両方で長い間隔を取った条件が、長期の保持でも1試行あたりの効率でも最も良かったと報告しています(Nakata・Suzuki・He 2023)。一方で、子どもの教室では逆の結果も出ています。ロジャーズ(Rogers)らが香港の小学生 52 名を対象に1日間隔と8日間隔を比べたところ、4週間後のテストでは1日間隔のほうが良かった。大人の実験室で得た「長いほど良い」は、そのまま子どもの教室には移りません。

この2つを踏まえた当塾の既定は、学年が下がるほど間隔を短く、上がるほど長くです。日程表にすると次のようになります。

いつ やること 1語にかける時間
1回目 その日 英語を見て意味を言う。言えなければ答えを見て、もう一度自分で言い直す 5秒
2回目 翌日 同じく英語から意味。3秒で出なければ不正解として扱う 3秒
3回目 3日後 英語から意味。ここで通った語は「仮合格」の束へ移す 3秒
4回目 1週間後 仮合格の束を確認。落ちた語は1回目の束に戻す 3秒
5回目 3週間後 最終確認。ここを通った語だけ、産出(書く・使う)の工程へ 5秒

1日に入れる新規語は、小学生 5 語、中学生 10 語、高校生 20 語を上限の目安にします。これも研究の数値ではなく、上の日程表を毎日回したときに復習量が破綻しない上限として置いたものです。新規 20 語なら、4日目以降は毎日およそ 60 語から 80 語の復習が乗ります。ここを見積もらずに「1日50語」と決めると、3日目で崩れます。

束の作り方には自由度があります。中田とウェッブは、20語を1かたまりで回す方法と、4語・10語に分けて回す方法を比べ、間隔が同じなら分け方はほとんど影響しないと報告しました。つまり「5語ずつ小分けにすると覚えやすい」というのは、小分けにしたことで結果的に間隔が空いたからである可能性が高い。小分けそのものにこだわる必要はありません

カードの作り方——英日か、日英か

方向には役割があります。英→日(英語を見て意味を言う)は読解のため、日→英(日本語を見て綴りを書く)は英作文と和文英訳のためです。全部の語を両方向でやると時間が倍になり、しかも産出まで必要な語は全体の一部でしかありません。既定は次のとおりです。

  • すべての語を英→日で5回(上の日程表)。
  • 教科書の本文語・英検の writing で使う語・入試で書かされる語だけ、日→英を2回追加(3回目と5回目の日に重ねる)。
  • 例文を付けるのは、多義語・前置詞を伴う語・可算不可算が問われる語に限る。単義の名詞に例文を付けても時間が増えるだけです。

作り方でもう一つ重要なのが、「思い出す隙間」を殺さないことです。ファン・デン・ブルック(van den Broek)らは、意味を推測できる文脈で練習した場合と、手がかりのない文脈で記憶から引き出して練習した場合を比べました。推測できる文脈はその場の理解を助けますが、後で思い出せるようになるのは、引き出す練習をしたほうでした。

van den Broek. Contextual richness and word learning: Context enhances comprehension but retrieval enhances retention. Language Learning. 2018;68(2):546-585.

実務に直すと、答えが見えるカードを作らないということです。英単語の横に日本語を並べて眺める、絵や例文が答えを教えてしまう、赤シートをずらしながら流し読みする——いずれも「思い出す」工程が抜けています。同じ研究グループは、答えを明かしてしまう画像を付けると語彙の学習が減ることも報告しています。カードは表に英語だけ、裏に意味。3秒待って、出なければ不正解にして次の束へ落とす。この「待つ3秒」が練習の本体です。

「書いて覚える」は何回まで意味があるか

日本の教室でいちばん多い方法が、ノートに10回書く、20回書くというやり方です。これは綴りを書けるようにする工程としては有効ですが、意味を覚える工程としては逆効果になりうることが示されています。バークロフト(Barcroft)は、スペイン語の名詞 24 語を語と絵の反復で学ばせ、語を書き写す条件・一部だけ書く条件・書かない条件を比べました。得点が最も高かったのは書かない条件でした。

Barcroft. Effects of word and fragment writing during L2 vocabulary learning. Foreign Language Annals. 2007;40(4):713-726.

理由として挙げられているのは、書く作業が、新しい語形を頭に入れるための処理資源を食ってしまうことです。したがって当塾の既定は次のようにしています。

  1. 初回に書き写すのは1回だけ。綴りを目で確認するためで、覚えるためではありません。
  2. 意味を入れる段階(1回目から3回目)では書かない。口で言う、あるいは頭の中で言う。
  3. 綴りを書けるようにするのは、意味が通った語だけを対象に、5回目の日以降。方法は「書き写す」ではなく「日本語を見て、何も見ずに書く。間違えたら正しい綴りを見て、もう一度何も見ずに書く」。
  4. この書き取りは1語につき2回まで。3回目以降は、正答した語に時間を足しているだけになります。

発音と音声をどこに入れるか

音は「覚えるための材料」であり、同時に「思い出す手がかり」でもあります。位置は次のとおりです。

  • 1回目(初出)で必ず音を聞き、自分で1回声に出す。 綴りだけを見て自己流の読みを付けてしまうと、あとでリスニングと結びつきません。
  • 2回目から4回目では音を再生しない。 音を流すと、それが答えの手がかりになって「思い出す」工程が消えます。
  • 5回目の後、音声だけを聞いて意味が出るかを確認する。ここで出ない語は、綴りとしてしか覚えていない語です。
  • リスニングが課される中学生以上は、この「音声だけ」の確認を週3回、1回10分ほど別枠で置くと、読解語彙と聴解語彙のずれを早く見つけられます。

学年別の設計

同じ原理でも、扱える量と目的が違います。

項目 小学生 中学生(教科書+英検) 高校生(入試・共通テスト)
1日の新規語 5 語 10 語 20 語
1回の時間 1回10分 1回15分 1回20分
復習の間隔 翌日・3日後・1週間後(短め) 翌日・3日後・1週間後・3週間後 翌日・3日後・1週間後・3週間後・6週間後
方向 英→日のみ。音から意味も 英→日が既定。教科書本文語と英検 writing 語のみ日→英 英→日が既定。和文英訳・自由英作文で使う語のみ日→英
綴りを書く 原則やらない(音と意味を優先) 定期テストで書かされる語のみ 英作文で使う語のみ
語の出どころ 教科書・絵本で何度も出る語 教科書巻末+英検の級別語彙 模試で止まった語+共通テスト水準の基礎語
置かない工程 日→英、長い例文 1日30語以上の詰め込み 頻度の低い専門語の先取り

小学生で日→英を外すのは、綴りの負荷が音と意味の結びつきを壊しやすいからです。中学生は定期テストで綴りを問われるので、「テストで書かされる語」だけを産出まで上げます。高校生は量が増えるぶん、間隔を長く取っても保持できる語が増えるので、6週間後の回を足します。

効かない条件

この設計が崩れる場面を、あらかじめ挙げておきます。

1日に詰め込みすぎたときの干渉

似た語をまとめて覚えると、互いに混ざります。中田と鈴木は、日本語話者の大学生 133 名が英日の語ペア 48 組を学ぶ実験で、意味的に関連した語(たとえば色の名前をまとめて)は、関連しない語より混同による誤答が多くなったと報告しました。単語帳がテーマ別に並んでいる場合、そのまま順に覚えると混ざりやすい。テーマ別のページは、あえて飛ばし飛ばしに拾うのが安全です。

意味は分かるのに綴りが書けない

ウェッブは、受容(見て分かる)と産出(書ける・使える)の語彙サイズを同じ形式で測り、受容のほうが常に大きく、語の頻度が下がるほど差が広がることを示しました。これは失敗ではなく標準です。ただし、英作文や和文英訳で点を取りたい語については、受容だけで止めると得点になりません。産出が必要な語を先に決めて、別工程で扱うほかありません。

リストで覚えた語が読解で出てこない

カードで再生できても、文章の中で出てくると気づかないことがあります。カードは語を単独で、決まった形(原形)で見せるからです。対策は、5回目を通った語を、その週に読む文章の中で拾い直すこと。教科書本文でも、模試の復習でも構いません。語を「探しに行く読み方」を1回入れるだけで、形が変わった語にも反応しやすくなります。

多読だけでは増えにくい

上に挙げたとおり、読むだけの学習で覚えられるのは 9-18% です。しかも同じ語に何度も出会う必要があり、頻度の低い語ほど出会いません。多読は、すでにカードで入れた語を定着させる場としては有効ですが、新しい語を集める場としては効率が悪い。どちらか一方ではなく、入口をリスト、定着を読書、と分けます。

この記事で言えないこと

研究が示しているのは、まとめてやるより空けたほうが良いという方向と、思い出す練習が再認より保持に効くという方向までです。最適な間隔の日数も、1日の最適な語数も、決まっていません。 上の日程表の日数と語数は、研究の方向に沿って当塾が置いた目安であり、実験で検証された値ではありません。

また、引用した実験の多くは大学生を対象に、20 語から 48 語程度の人工的な語セットで、数週間の範囲で測られています。1年かけて 3,000 語を積む場面にそのまま当てはまるかは分かりません。ロジャーズらの結果が示すように、子どもの教室では大人の実験室と逆になることがあります。個人差も大きく、同じ日程で回しても定着の速さは人によって変わります。

語彙が増えれば成績が上がるとも、この記事は述べていません。読解は語彙だけで決まらず、背景知識や文の構造の理解も関わります。語彙はそのうちの、手を付けやすく、進み具合が測りやすい部分だと考えてください。

当塾の立場

ここに書いた手順は、塾に来なくても実行できます。 必要なのは、教科書の巻末語彙表と、表に英語・裏に意味だけを書いた紙のカード(または同等のもの)、そして日付を書き込んだ束の管理だけです。市販の単語帳を買い足す必要も、特定のアプリを入れる必要もありません。むしろ、道具を増やすほど「思い出す」工程が薄くなりがちです。

それでも通いたいという方には、武蔵野個別指導塾を挙げます。理由はこの回の研究に即して2つあります。第一に、崩れる場所が日程の設計にあるからです。新規語数と復習量の見積もりを誤ると3日で破綻しますが、本人にはその原因が「やる気が続かない」としか見えません。束の大きさと戻し方を外から調整する人がいると、原因を正しく特定できます。第二に、受容と産出の切り分けを、本人が判断しにくいからです。どの語を産出まで上げるかは、その生徒が受けるテストと志望校の出題で決まります。個別指導は、この線引きを生徒ごとに引き直せる形式です。

出典

  1. Uchihara, T., Webb, S., & Yanagisawa, A. The effects of repetition on incidental vocabulary learning: A meta-analysis of correlational studies. Language Learning. 2019;69(3):559-599.
  2. Webb, S., Uchihara, T., & Yanagisawa, A. How effective is second language incidental vocabulary learning? A meta-analysis. Language Teaching. 2023;56(2):161-180.
  3. Webb, S., Yanagisawa, A., & Uchihara, T. How effective are intentional vocabulary-learning activities? A meta-analysis. The Modern Language Journal. 2020;104(4):715-738.
  4. Nakata, T. Effects of expanding and equal spacing on second language vocabulary learning: Does gradually increasing spacing increase vocabulary learning? Studies in Second Language Acquisition. 2015;37(4):677-711.
  5. Nakata, T., & Webb, S. Does studying vocabulary in smaller sets increase learning? Studies in Second Language Acquisition. 2016;38(3):523-552.
  6. Nakata, T., Suzuki, Y., & He, X. Costs and benefits of spacing for second language vocabulary learning: Does relearning override the positive and negative effects of spacing? Language Learning. 2023;73(3):799-834.
  7. Rogers, J., & Cheung, A. Input spacing and the learning of L2 vocabulary in a classroom context. Language Teaching Research. 2020;24(5):616-641.
  8. Nakata, T., & Suzuki, Y. Effects of massing and spacing on the learning of semantically related and unrelated words. Studies in Second Language Acquisition. 2019;41(2):287-311.
  9. van den Broek, G. S. E., Takashima, A., Segers, E., & Verhoeven, L. Contextual richness and word learning: Context enhances comprehension but retrieval enhances retention. Language Learning. 2018;68(2):546-585.
  10. Barcroft, J. Effects of word and fragment writing during L2 vocabulary learning. Foreign Language Annals. 2007;40(4):713-726.
  11. Webb, S. Receptive and productive vocabulary sizes of L2 learners. Studies in Second Language Acquisition. 2008;30(1):79-95.
  12. Laufer, B., & Ravenhorst-Kalovski, G. C. Lexical threshold revisited: Lexical text coverage, learners’ vocabulary size and reading comprehension. Reading in a Foreign Language. 2010;22(1):15-30.

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