【中3理科】仕事とエネルギーを図解で総まとめ—仕事の原理から力学的エネルギーの保存まで|武蔵野個別指導塾

荷物を持って歩いても仕事が0になる理由を、力と移動の向きから考えます。斜面の計算、エネルギーの変化を示す図、変換効率の例題を通して、式に入れる数値を自分で選べるようになれば、計算問題は手順どおりに解けます。

よくあるのは、休日の駅の階段で荷物を持ち上げたあと、踊り場を歩く場面を思い浮かべ、「どちらも腕が疲れるのに、なぜ理科の仕事は違うのだろう」とノートの手が止まる場面です。日常でいう仕事は、努力や疲れを含む広い言葉です。一方、理科では、ある力によって物体がその力の向きに動くことを仕事と呼びます。同じ言葉でも、何を数えるかが違います。

この区別がつくと、斜面で荷物を運ぶと楽になる理由や、坂を下る台車が速くなる理由をつなげて考えられます。式を選ぶ前に「どの物体に、どの力が、どちら向きにはたらくか」を見つけるのが出発点です。さらに、道具で力を小さくできても仕事を減らせないこと、運動が止まってもエネルギーが消えたわけではないことまで、図と計算で確かめていきましょう。

この単元で身につけること

  • 仕事の有無を、力と移動の向きで判断します。力を加えていても、物体が動かなければその力のする仕事は0です。
  • 仕事を力と距離から求めます。力の単位 N と距離の単位 m をそろえ、答えを J で表します。
  • 仕事の原理を道具に当てはめます。てこ・滑車・斜面では、力が小さくなる分だけ力を加える点の移動距離が増えます。
  • 仕事率で仕事の速さを比べます。同じ仕事を短い時間でするほど、仕事率は大きくなります。
  • 位置エネルギーと運動エネルギーの移り変わりを読みます。保存を使える条件と、摩擦がある場合の違いも説明します。
  • エネルギーの変換効率と熱の伝わり方を区別します。目的に使われる割合と、熱が移る仕組みは別の問いです。

多くの教科書では中3で学ぶ内容で、これまでに学んだ力のつり合い、速さ、電力と電力量につながります。新しい記号を増やすより、力・距離・時間を図のどこから読むかを確かめると理解が進みます。

基本の考え方

仕事は力と移動を組にして考えます

物体に一定の力を加え、その力と同じ向きに動かすとき、仕事 = 力 × 力の向きに動いた距離 で求めます。単位はジュールで、記号は J です。1 N の力で力の向きに1 m 動かしたときの仕事が1 J なので、1 J = 1 N × 1 m と表せます。ここで使う距離は、人が歩いた道のりとは限りません。

図1のように、荷物を上向きに持ち上げる場合は、手の力も荷物の移動も上向きです。しかし、荷物を同じ高さに保って水平に運ぶ場合、手が荷物を支える上向きの力と移動は直角です。この上向きの力が荷物にする仕事は0です。動き始めや止まるときに加える水平な力の仕事とは分けて考えます。

図1 荷物を持ち上げる場合と水平に運ぶ場合の力と移動

壁を押しても壁が動かなければ、壁にした仕事は0です。腕が疲れたかどうかでは判断しません。体の中ではエネルギーを使っていても、ここで問うのは「壁に加えた力による仕事」です。問題文の「誰が何にした仕事か」に線を引くと、対象を取り違えにくくなります。

荷物を一定の速さで真上に持ち上げるとき、手の上向きの力は重力とつり合います。問題で100 g の物体にはたらく重力を1 N とすると指定されたら、1 kg の物体の重力は10 N として計算します。kg は質量、N は力の単位なので、そのまま掛け合わせないようにしましょう。

道具と仕事率を区別します

摩擦や道具の重さを無視できるとき、同じ物体を同じ高さまでゆっくり持ち上げる仕事は、道具を使っても変わりません。これが仕事の原理です。定滑車は力の向きを変えますが、必要な力の大きさは変えません。1個の動滑車を2本の鉛直なひもで支える場合、引く力は直接持ち上げるときの半分、引く距離は2倍です。

てこでも、支点から力を加える点までの距離を長くすると、小さい力で物を持ち上げられます。その分、力を加える点は長い距離を動きます。斜面では高低差より長い道のりを進むことで必要な力が小さくなります。どの場合も、小さい力だけに注目せず、動かす距離と組にして比べます。実際の道具では摩擦などがあるため、人がする仕事は理想的な値より大きくなることがあります。

仕事率は単位時間あたりにする仕事で、仕事率 = 仕事 ÷ 時間 です。単位はワットで、1 W = 1 J/s です。仕事が同じでも、かかった時間が違えば仕事率は違います。電力も、電気エネルギーを単位時間あたりにどれだけ使うかを表すため、同じ W を使います。

エネルギーと熱の伝わり方

物体がほかの物体に仕事をする能力をもつとき、エネルギーをもつといいます。高い位置の物体がもつのが位置エネルギー、動いている物体がもつのが運動エネルギーです。同じ物体なら、基準の面から高いほど位置エネルギーが大きく、速いほど運動エネルギーが大きくなります。高さや速さが同じなら、質量が大きい物体ほどそれぞれのエネルギーも大きくなります。

エネルギーには電気・光・化学エネルギーなどの形もあります。電池で動くモーターでは、化学エネルギーが電気エネルギーを経て運動エネルギーなどへ変わります。目的以外の熱や音になる分も含めて追う必要があります。

温度差によって移るエネルギーを熱といいます。熱伝導は、金属のスプーンの端から持ち手へ伝わるような伝わり方です。対流は、温められた水や空気などが移動して熱を運ぶことです。熱放射は、太陽から熱が届くように、物質のない空間も通してエネルギーが伝わることです。熱伝導と対流を分ける目印は、水や空気そのものが移動しているかどうかです。

例題で解き方を確かめる

例題1 仕事と仕事率を順に求める

質量2 kg の荷物を一定の速さで1.5 m 持ち上げるのに3 s かかりました。手が荷物にした仕事と仕事率を求めます。100 g の物体にはたらく重力を1 N とします。

  1. 質量を力に直します。一定の速さなので手の力は重力とつり合い、2 kg の荷物を引く力は20 N です。仕事に必要なのは質量でなく力だからです。
  2. 力の向きの移動距離を選び、仕事 = 20 × 1.5 = 30 J とします。力も移動も上向きなので、持ち上げた高さをそのまま使えます。
  3. 時間で割り、仕事率 = 30 ÷ 3 = 10 W とします。仕事率は1 s あたりの仕事に直した値だからです。

答えは30 J、10 W です。もし同じ荷物を同じ高さまで6 s で上げれば、仕事は30 J のまま、仕事率は5 W になります。「ゆっくりなら仕事も半分」とせず、仕事の式に時間が含まれているか確かめましょう。

例題2 斜面で小さくなる量を読む

重力が60 N の荷物を、高さ1 m、斜面に沿った長さ3 m の斜面で、一定の速さで引き上げます。摩擦を無視し、斜面と平行に引く力と、その力がする仕事を求めます。

図2のように、直接持ち上げるときの高さと、斜面に沿って引く距離は違います。右の三角形の底辺の長さは、仕事の計算に使いません。

図2 同じ荷物を直接上げる場合と斜面で上げる場合の比較
  1. 直接持ち上げる仕事を求め、60 × 1 = 60 J とします。同じ高さまで上げる仕事を先に知れば、仕事の原理を使えるからです。
  2. 斜面でも仕事は60 J と置きます。摩擦を無視し、速さを変えずに同じ荷物を同じ高さへ上げる条件だからです。
  3. 斜面に沿う力を60 ÷ 3 = 20 N と求めます。力と同じ向きの移動が3 m なので、仕事をこの距離で割ります。

答えは20 N、60 J です。力は直接上げる場合の3分の1ですが、距離は3倍です。ここで60 N と3 m を掛けると、鉛直な重力と斜面に沿う移動を混ぜてしまいます。数値を式に入れる前に、力の矢印に沿った距離を選ぶことが必要です。

例題3 道具の名前とエネルギーを説明する

軽い1個の動滑車を2本の鉛直なひもで支え、重力が40 N の荷物を0.5 m ゆっくり持ち上げます。ひもや滑車の重さと摩擦を無視すると、ひもを引く力と距離はどうなりますか。また、荷物にはどんなエネルギーが蓄えられますか。

  1. 荷物を支えるひもを2本と読み取り、力を40 ÷ 2 = 20 N とします。荷物と動滑車を上向きに支える力を2本が等しく分担するためです。
  2. 引く距離を0.5 × 2 = 1 m とします。荷物が上がると支える2本がそれぞれ0.5 m ずつ短くなるためです。
  3. 仕事を20 × 1 = 20 J と確かめます。直接上げる仕事40 × 0.5 = 20 J と一致すれば、力と距離の組が正しく読めています。

答えは20 N、1 m で、荷物の位置エネルギーが20 J 増えます。持ち上げる前を高さの基準にすると、この増加をそのまま位置エネルギーの値として表せます。定滑車と動滑車は見た目の円の数だけで区別せず、荷物と一緒に滑車が動くかを確かめます。

例題4 変換効率を割合で表す

ある装置に200 J の電気エネルギーを与えたところ、荷物を持ち上げる仕事に使われたエネルギーが50 J でした。この仕事を目的とする変換効率を求めます。

  1. 目的に使われた量を50 J、与えた全体を200 J と決めます。割合では、何を全体とするかを先にそろえるためです。
  2. 変換効率 = 目的に使われたエネルギー ÷ 与えたエネルギー × 100 として、50 ÷ 200 × 100 = 25 % と求めます。

答えは25 % です。残りの150 J は消えたのではなく、熱や音など目的以外の形に変わったり、装置に蓄えられたりした分です。効率が小さいことと、エネルギーの総量が減ったことを混同しないようにしましょう。

つまずきやすいところと直し方

力が小さければ仕事も小さいのでしょうか

「道具で楽になったので仕事が減る」という考えでは、距離が抜けています。仕事の原理で変わらないのは力ではなく、力と距離の積です。誤りを直すときは、道具あり・なしのそれぞれについて、力の下に移動距離を書き添えます。摩擦がある問題なら、その影響を無視できるという条件があるかも読み直します。

エネルギーは落ちると増えるのでしょうか

「下るほど速くなるので、全体のエネルギーも増える」という考えでは、位置エネルギーの減少を見落としています。位置エネルギーと運動エネルギーの和を力学的エネルギーといいます。摩擦や空気抵抗がなく、重力だけが仕事をするような場合、この和は一定です。これを力学的エネルギーの保存といいます。

図3 摩擦のない下降で位置と運動のエネルギーが入れ替わる様子

図3は、20 J の位置エネルギーをもつ物体を静かに放した場合です。途中で位置エネルギーが12 J になれば、運動エネルギーは8 J です。基準の高さでは位置エネルギーが0 J、運動エネルギーが20 J になります。帯全体の長さが同じことが保存を表し、速さそのものが一定という意味ではありません。

止まったらエネルギーはなくなるのでしょうか

「摩擦で止まったのでエネルギーが消えた」という考えでは、熱などへの変化を数えていません。摩擦のある床で物体が止まると、力学的エネルギーは減り、物体や床などの熱エネルギーが増えます。ほかの形も含めたエネルギー全体は保存されますが、すべてが再び目的の運動に使いやすい形で残るわけではありません。

この誤りは、「力学的エネルギーの保存」と「エネルギー全体の保存」を区別して直します。問題に摩擦や空気抵抗が登場したら、位置と運動だけの合計で考えてよいかを立ち止まって確認しましょう。

練習問題

練習1 水平な床で箱を水平方向に15 N の力で押し、力の向きに2 m 動かしました。時間は5 s です。この押す力の仕事と仕事率を求めましょう。

練習2 重力が30 N の荷物を高さ0.4 m まで斜面でゆっくり上げます。斜面に沿う距離は1.2 m で、摩擦はありません。必要な仕事と斜面に平行に引く力はいくらですか。

練習3 図3の下降中、位置エネルギーが5 J の地点での運動エネルギーはいくらですか。また、摩擦があって熱に変わる分があるとき、同じ地点で同じ答えになるでしょうか。

練習4 入力80 J のうち目的に使えた量が24 J の装置の変換効率を求めましょう。あわせて、日なたで手が温まる主な熱の伝わり方を答えましょう。

答えと解説

練習1 仕事は15 × 2 = 30 J、仕事率は30 ÷ 5 = 6 W です。求める対象は、箱を押した力の仕事です。

練習2 仕事は30 × 0.4 = 12 J、力は12 ÷ 1.2 = 10 N です。高さで仕事を求め、斜面の距離で力を求めます。

練習3 20 – 5 = 15 J です。摩擦で熱に変わる分があれば、同じ位置まで達したときの運動エネルギーは15 J より小さくなります。

練習4 24 ÷ 80 × 100 = 30 %、熱放射です。太陽からのエネルギーは、途中に物質がなくても届きます。

次の単元へのつながりと家庭での確かめ方

エネルギーを形ごとに追う見方は、発電やエネルギー資源を考えるときにも使います。同じ量を入力しても目的に使える量が違う理由を、変換効率から説明できます。

5分ほどの時間で、家でも次の2つを確かめられます。まず、軽い消しゴムを机から少し持ち上げる場合と、同じ高さで横に動かす場合を描き、支える力と移動の矢印を入れます。次に、手のひらを軽く数回こすり、温かさの変化を感じます。痛くなるほどこすらず、運動に使ったエネルギーの一部が熱へ変わることに注目しましょう。

個別指導で式の選択が止まる場合は、力の矢印や質量と重力の区別まで戻って確かめます。計算が合っていても、選んだ距離の向きを言葉で説明できるかを見ます。

まとめ

仕事の問題では、式に並ぶ数値の前に、力の矢印と移動の矢印があります。道具の問題では、その矢印に沿う距離がどう変わるかを追い、エネルギーの問題では、目に見えない熱まで行き先に含めます。答えの数値だけでなく、使った条件を図に書き込めれば、似た問題でも判断の根拠が残ります。

荷物を運ぶ腕の疲れと、荷物にした仕事を分けて説明できたとき、日常の感覚は理科の判断へと一歩進みます。


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