力の合成と分解、水圧と浮力、記録タイマーの読み取りを図と例題で整理します。動いている物体の力や、つり合いと作用・反作用の違いを、自分で説明できるか確かめましょう。
よくあるのは、部活帰りの自転車置き場で「ペダルをこぐのをやめても進むのに、やがて止まるのはなぜだろう」と、授業で聞いた慣性の法則が気になる場面です。「動くには力が必要」と覚えていると、力を加えなくても動き続けるという説明に戸惑います。
ここで分けたいのは、物体が動いていることと、動き方が変わることです。また、力を考えるときには「何が、どの物体に及ぼす力か」を決める必要があります。この区別ができると、水中で物が軽く感じられる理由も、台車の速さが増す理由も、矢印を使って追えるようになります。
力と運動は、多くの教科書では中3で学びます。計算だけを急がず、力の矢印、移動距離と時間、力を受ける物体という3つの手がかりを順に確かめましょう。
この単元で身につけること
- 力を合成・分解する。同じ物体にはたらく複数の力を1つの合力で表し、逆に1つの力を指定した2方向の分力で表します。
- 水圧と浮力を説明する。水が面を押す向きと深さによる違いから、物体が上向きの力を受ける理由を考えます。
- 速さを距離と時間から求める。平均の速さと瞬間の速さを区別し、記録タイマーの打点から短い時間ごとの動きを読み取ります。
- 力と運動の変化を結びつける。合力が0のときと、運動方向に力がはたらくときで、速さがどう変わるかを判断します。
- つり合いと作用・反作用を見分ける。矢印の向きだけでなく、力を受ける物体が同じか違うかに注目します。
前に学んだ力の3要素である大きさ・向き・作用点と、2力がつり合う条件が土台になります。特に「反対向きの矢印がある」だけでつり合いと決めないことが、この単元を通した確認点です。
基本の考え方
力の合成と分解は矢印で考えます
同じ物体にはたらく2つの力と同じはたらきをする1つの力を、合力といいます。合力を求めることが力の合成です。同一直線上で同じ向きなら大きさを足し、反対向きなら大きい力から小さい力を引きます。向きは大きい力の向きです。力の単位には N を使います。
一直線上にない2力は、2本の矢印を隣り合う辺とする平行四辺形を描きます。共通の始点から向かいの頂点への対角線が合力です。図1の左では、右向きと上向きの力の合力が右上向きになっています。矢印の長さをそのまま足して斜めの長さにするわけではありません。

逆に、1つの力を同じはたらきをする2つの力で表すことを力の分解といい、その2力を分力といいます。図1の右では重力を、斜面に平行な方向と垂直な方向に分けています。重力は鉛直下向きのままで、斜面に沿って下る成分と、斜面を押す成分に分けて考えるのです。元の重力と2つの分力を別々の3力として足してはいけません。
なめらかな斜面で摩擦を無視できれば、斜面に垂直な分力と斜面から受ける垂直抗力はつり合います。斜面に平行な分力は残るので、手を離した物体は下る向きに速さを増します。同じ物体なら、斜面が急になるほど斜面に平行な分力が大きくなります。
水圧の差が浮力を生みます
水中の物体は水から押されます。単位面積あたりにはたらく力が水圧で、面に垂直にはたらきます。同じ水の中なら深いほど大きく、同じ深さでは向きによらず同じ大きさです。「水は上からだけ押す」と考えると、浮力につながりません。
水中の直方体を考えると、上面より深い下面のほうが大きな水圧を受けます。上面を押す下向きの力より、下面を押す上向きの力が大きいため、差し引きで上向きの力が生まれます。これが浮力です。左右の面を押す力は打ち消し合います。
浮力の大きさは、物体が押しのけた水にはたらく重力の大きさと等しくなります。同じ水なら水中にある部分の体積が大きいほど浮力は大きくなります。ただし、形や体積が変わらない物体が完全に沈んだ後は、さらに深くしても浮力は変わりません。水面に浮いて静止した物体では、浮力と重力がつり合っています。
速さは一定の時間に進む距離から読みます
平均の速さ = 移動距離 ÷ かかった時間 です。途中で止まった時間も含め、対象にする区間全体で計算します。一方、瞬間の速さはある時刻での速さです。ごく短い時間の平均の速さを調べると、その間の瞬間の速さをおよそ知ることができます。
一直線上を一定の速さで進む運動が等速直線運動です。等しい時間に等しい距離を進みます。摩擦などを無視できるとき、物体にはたらく合力が0なら、静止していた物体は静止を続け、動いていた物体は等速直線運動を続けます。これが慣性の法則です。
これに対して、進む向きに合力がはたらけば速さは増し、進む向きと反対なら速さは減ります。自転車がこぐのをやめて減速するのは、摩擦や空気の抵抗などがあるからです。動いているという事実だけから、進行方向の合力があるとは判断できません。
例題で解き方を確かめる
例題1 反対向きの2力の合力
台車に右向きに 5 N、左向きに 2 N の力が同一直線上ではたらいています。この2力の合力の大きさと向きを求めます。
- 右向きと左向きの矢印を描きます。同じ物体にはたらく力か、一直線上の力かを図にして確かめるためです。
- 反対向きなので、5 – 2 = 3 N と引きます。一部が打ち消し合い、右向きのはたらきが残るからです。
- 答えを「右向きに 3 N」と書きます。力は大きさだけでは決まらず、向きも必要だからです。
この結果は、台車が今どちらに動いているかとは別です。左向きに進んでいる途中なら、この右向きの合力によって速さが減る場合もあります。合力は、その瞬間の運動方向を示す矢印ではありません。
例題2 ばねばかりから浮力を求める
空気中で物体をつるすと、ばねばかりは 3.0 N を示しました。水中に完全に沈めて静止させると 1.8 N でした。物体は容器の底や壁に触れず、空気の浮力は無視します。浮力はいくらでしょうか。
- 物体にはたらく力を選びます。下向きの重力 3.0 N、上向きの浮力、ばねばかりが引く上向きの力 1.8 N の3つです。
- 静止しているので、「浮力 + 1.8 N = 3.0 N」と置きます。上向きと下向きの力の合計が等しいからです。
- 浮力 = 3.0 – 1.8 = 1.2 N と求めます。示す値の減少分が、水に支えられている分です。
水に入れても物体の質量や重力がこの差の分だけ減るわけではありません。また、底に置いた場合は底からの力も加わるので、同じ3力だけでは説明できません。計算前に「どこに触れているか」を確認することにも意味があります。
例題3 記録タイマーの区間を読む
1秒間に50回打点する記録タイマーで、同じ方向へ進む台車を調べました。打点間隔を5つずつまとめると、順に 2 cm、4 cm、6 cm、8 cm 進んでいました。最初の区間の平均の速さと、4区間全体の平均の速さを求め、運動のようすを説明します。
- 打点間隔1つの時間は 1 ÷ 50 = 0.02 s、5つ分は 0.10 s と求めます。数えるのは点の数ではなく、点と点の間の数だからです。
- 最初の区間は 2 cm = 0.02 m なので、0.02 ÷ 0.10 = 0.20 m/s です。距離を m、時間を s にそろえると単位を確認できます。
- 全体は 20 cm = 0.20 m、時間は 0.40 s なので、0.20 ÷ 0.40 = 0.50 m/s です。全体の平均には、全距離と全時間を使います。
- 等しい時間ごとの距離が増えているため、だんだん速くなる運動と判断します。図2のように区間の平均の速さを並べると、増え方も読み取れます。

図2は横軸に区間の番号、縦軸にその区間の平均の速さをとっています。第2区間から順に 0.40 m/s、0.60 m/s、0.80 m/s です。棒の高さは区間内の平均なので、区間の終わりの瞬間の速さと読み替えないようにします。
例題4 動き続ける台車にはたらく力
なめらかな水平面で台車を押し出し、手を離しました。摩擦と空気の抵抗を無視すると、その後の運動はどうなるでしょうか。
- 手を離した後に残る力を選びます。下向きの重力と上向きの垂直抗力はありますが、手が押す力はもうありません。
- 上下の力はつり合い、水平方向の力は0なので、合力は0と判断します。力の有無を向きごとに整理するためです。
- 答えは等速直線運動です。慣性の法則により、動いていた台車は速さと向きを保ちます。
押し出したときの力が台車の中に残る、という説明はしません。力は物体どうしの相互作用であり、手が離れた後の動きは慣性によって説明します。
つまずきやすいところと直し方
水中では深いほど浮力も大きいと思う
「水圧は深いほど大きいので、完全に沈んだ物体の浮力も増す」という考えは、上面への力を見落としています。深くすると下面への上向きの力だけでなく、上面への下向きの力も大きくなります。
図3の左のように、上下の力の差を見るのが直し方です。同じ水中で、体積が変わらず完全に沈んでいれば、押しのける水の体積は一定なので浮力も一定です。半分だけ浸かっていた物体をさらに沈める場合とは、分けて考えましょう。

つり合いと作用・反作用を同じものと考える
「等しい大きさで反対向きなら、すべてつり合う」という判断には、力を受ける物体の確認が抜けています。作用・反作用の法則では、AがBに力を及ぼすと、同時にBもAに同一直線上で反対向きの等しい力を及ぼします。
図3の右では、接触したAとBが互いに押しています。赤はAがBに及ぼす力、紺はBがAに及ぼす力です。別々の物体にはたらくため、1つの物体の上で打ち消し合う2力ではありません。机上の本にはたらく重力と垂直抗力はつり合いますが、この2力は作用・反作用の組ではありません。本が机を押す力と、机が本を押す力なら、その組になります。
打点が6個なら時間も6間隔分と考える
「6個の点だから 0.02 × 6 = 0.12 s」という数え方では、最初の点より前の時間まで加えています。最初の点から最後の点までには、点が6個でも間隔は5つしかありません。
点の下に隣同士を結ぶ短い線を描くと、0.02 × 5 = 0.10 s と確かめられます。さらに、点の間隔が広いほど速いといえるのは、打点する時間間隔が同じ場合です。違う設定の記録を、紙の長さだけで比べてはいけません。
練習問題
練習1 物体に同一直線上で右向きに 7 N、左向きに 4 N の力がはたらきます。この2力の合力を求めましょう。
練習2 重力が 2.5 N の物体を水中につるして静止させると、ばねばかりは 1.6 N を示しました。底や壁には触れていません。浮力を求めましょう。
練習3 1秒間に50回打点する記録で、連続する6個の点の最初から最後までの距離が 5 cm でした。この間の平均の速さを m/s で求めましょう。
練習4 摩擦などを無視できる水平面を台車が動いています。はたらく合力が0になった後の運動と、その説明に使う法則を答えましょう。
答えと解説
練習1 右向きに 3 N です。反対向きなので 7 – 4 = 3 N とし、大きい力の向きを残します。
練習2 上向きに 0.9 N です。静止の条件から、浮力 = 2.5 – 1.6 = 0.9 N となります。
練習3 0.50 m/s です。6個の点の間は5間隔なので 0.10 s です。5 cm = 0.05 m より、0.05 ÷ 0.10 = 0.50 m/s です。
練習4 等速直線運動を続けます。慣性の法則により、動いている台車の速さと向きは変わりません。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
次に学ぶ仕事とエネルギーでは、力の向きと物体が動く向きの関係を使います。斜面に平行な分力を選ぶ考え方や、速さの変化を読み取る力が、そのまま土台になります。
家では5分ほどで2つ試せます。まず、机上の消しゴムを指でゆっくり押して離し、止まるまでを観察します。机との摩擦がある条件だと説明してみましょう。次に、紙に等間隔の点を6個描き、点の数と間隔の数を比べます。実際に乗り物を急停止させる実験は不要です。
個別指導では、式を選べない原因が速さの意味なのか、単位換算なのか、力を受ける物体の取り違えなのかを確かめます。必要なら力の矢印1本や、距離と時間の対応まで戻って整理します。
まとめ
答えが合っていても、「この矢印は何が何に及ぼす力か」と尋ねられると迷うことがあります。そんなときは物体の名前を添え、同じ物体の力だけを集め直してみましょう。記録の読み取りなら、割り算の前にどこからどこまでの距離と時間なのかを指で示します。
止まっているか動いているかだけでは、力のつり合いは決まりません。運動を説明する出発点は、速さの印象ではなく、対象を決めた1本の矢印です。





