単語を覚えても長文で止まるときは、頻度の高い語と文中での意味を点検します。覚える語の選別、短い英文での確認、家庭と塾で共有する記録まで、次に取り組む内容を具体的に示します。

語彙の大きさが読解を決める—頻度の高い語から増やす順番
覚えた語があるのに読み進められない
よくあるのは、図書館の返却口に並びながら借りた英語の本を開き直し、覚えたはずの見慣れた語で読み進められなくなるという場面です。難しいつづりには日本語が浮かぶのに、短い動詞を含む文の意味がつながりません。「まだ覚える量が足りないのでしょうか」と考え、さらに新しい語へ進みたくなります。
英検などの読解に向けて語彙を増やすことは必要です。ただ、単語帳で先へ進んだ距離と、英文を読める範囲は同じではありません。よく出会う語に抜けがある場合もあれば、訳語を知っていても、その文で使われた意味を選べない場合もあります。追加する語の難しさだけを上げると、足元のつまずきが残ります。
まず取り組みたいのは、頻度の高い語を文中で確実に受け取り、そこから読む範囲を広げることです。覚えた数に加え、「どの語がわかると、どの文を読めたか」を記録してください。努力の量を責めずに、次の学習の行き先を決められます。

語彙の広さと出会う頻度をつなげて考える
語彙の大きさとは、大まかにいえば知っている語の範囲の広さです。読解では、その範囲と、目の前の英文で使われる語がどれだけ重なるかが関わります。知っている語が増えると、文の内容を受け取る手がかりも増えます。反対に、主張の中心になる動詞や、理由を説明する語が抜けると、周囲を読めても肝心の関係がつかめません。難しい名詞だけを拾って訳す読み方では、文章の筋道が途切れます。
頻度の高い語とは、さまざまな英文で繰り返し使われる語です。頻度が中くらいの語は、それより出会う機会が少なく、読む話題が広がるにつれて必要になります。Masraiほか・2019の研究では、高頻度語と中頻度語の知識が読解を予測し、力が低い群では高頻度語だけに予測への寄与が見られました(Masraiほか・2019)。学習の順番を考える際には、珍しい語を追加する前に、よく使われる語を点検する根拠になります。
もう1つの見方が、文章の語の網羅率です。その文章に出てくる語のうち、知っている語が占める割合を考えます。Zaafourほか・2025の研究では、語彙の大きさと文章の語の網羅率が批判的読解と関連し、おおよそ4,000語で97%の網羅が報告されています(Zaafourほか・2025)。批判的読解では、書き手が述べている内容を追うだけでなく、理由が主張を支えているかなども考えます。その検討をするにも、まず本文の言葉を受け取る必要があります。
前者はアラブ圏の学習者256名のIELTS読解、後者は大学生76名を対象としており、関連や予測の結果だけから中高生全員に共通する必要語数や、語彙を増やせば必ず読解が伸びるという因果関係までは決められません。したがって、4,000語を合格の境目として扱うのではなく、読む文章と手持ちの語彙の重なりに注目してください。学習者の語彙数を数えることと、受験する試験で必要な準備を確かめることも分けて考えます。
網羅率が高くても、残った未知語が結論を左右すれば読み違えます。一方で、知らない語があっても、それが補足的な名称なら、段落の中心はつかめることがあります。「知らない語があった」という事実だけで、その文章を難しすぎると判断する必要はありません。どこにあり、理解にどのような影響を与えたかを見ると、学ぶ優先順位がはっきりします。
また、頻度の高い語ほど、最初に覚えた訳語だけでは読みにくいことがあります。たとえば、runを「走る」と覚えていても、run a shopでは「店を経営する」という意味で受け取ります。語の形に見覚えがあることと、その文を理解できることを別々に確かめる必要があります。動詞の後ろに何が続くかまで見ると、訳語を無理に当てはめる読み方から離れられます。
語彙学習と文の組み立ての学習も、切り離しすぎないでください。語の意味を調べたあとに、誰が何をするのかを言えるなら、まず語彙の補充が役立ちます。意味を教えても関係がつかめないなら、主語と動詞の対応などを見直します。読めなかった原因をすべて単語不足にすると、覚える量だけが増えてしまいます。
今日の英文から覚える順番を作る
最初に用意するのは、普段使っている単語帳、短い英文、辞書、記録用の紙です。英文は、学習中の読解教材から内容を説明できそうな段落を選びます。いきなり長い文章全体を点検すると、語の選別だけで疲れてしまいます。今日の目的は、持っている語彙がどこで使えなくなったかを見つけ、次に覚えるものを決めることです。
最初の5分で止まった場所を残します
まず辞書を開かずに読み、段落で何について述べているかを日本語で短く書きます。読めない場所には印を付けますが、そこで調べ始めず、いったん段落の終わりまで進みます。最初からすべて調べると、自分の力で読めた部分と、説明を借りて読めた部分が混ざるためです。読み終えたら、主張とその理由を区別して言えるかを確かめます。
印は、「形も意味も知らない語」「見たことはあるが意味が出ない語」「意味は浮かぶが文につながらない語」で分けてください。記号の形は自分が使いやすいもので構いません。大事なのは、既知か未知かだけで片づけないことです。runを知っていてもrun a shopで止まったなら、最後の分類に入ります。意味を追加すれば進める箇所が見えてきます。
教材には直接書き込んでも、別紙に行の位置だけ残しても構いません。ただし、本文全体に日本語訳を書き込むと、次に英語だけで読めるかを確かめにくくなります。書き込み用の紙を分けるか、答えを隠せる形にしてください。学習のあとで同じ場所に戻れるよう、ページや段落も添えます。
次の7分で語を選びます
辞書や単語帳で意味を調べ、優先する語を選びます。最初に拾うのは、単語帳で基礎に位置づけられているのに思い出せなかった語です。次に、最近読んだ別の文章でも止まった語を拾います。そのあとに、今回の段落の主張を理解するために必要な語を加えます。見つけた語をすべて同じ重さで書き写す必要はありません。
教材に頻度や学習段階の表示があれば、順番を考える手がかりとして使ってください。表示がない場合は、単語の短さや見た目だけで高頻度語と決めないようにします。同じ話題の文章で繰り返す専門的な語は、幅広い英文で使われる語とは限りません。「いろいろな話題で出会った語」と「今の話題で必要な語」を記録上で分ければ、両方を扱えます。
今日覚える欄には、選んだ語と、その語を含む短いまとまりを書きます。runならrun a shopと残し、本文での意味を添えます。長い例文を丸ごと写すことに時間を使うより、意味を決める周囲の語を残してください。辞書に意味が並んでいても、一度に全部覚えようとせず、今の文に合う意味を選び、その選択を周囲の言葉で説明します。
同じ語の形の違いで止まったときは、単語帳にある形とのつながりも書きます。ただし、似たつづりの語をすべて同じ扱いにはしません。形が似ていても意味や働きが違うなら、文の中で区別する練習が必要です。覚えた語の総数を増やすための記録ではなく、次に出会ったときに読めるための記録にします。
選ぶときに迷った語は、保留の欄に置いてください。たとえば、本文の補足に出てきた名称は、その場で意味を確認するだけにします。一方、理由を述べる文で繰り返し使われた動詞は、今日の学習欄に残します。保留にした語でも、後日別の文章でまた出会えば優先順位を上げられます。今日の選択を固定せず、読む経験に応じて入れ替えると、記録が増えるだけの状態を避けられます。
続く8分で元の文を読み直します
選んだ語を確認したら、日本語のメモを隠して本文に戻ります。最初に、止まった文の意味を自分の言葉で言います。次に、その文が段落の中で理由を述べているのか、具体的な内容を加えているのかを考えます。最後に、段落の要点を書き直します。単語の訳が言えるだけで終えず、文と段落の理解まで戻すことが、この練習の中心です。
自分での確認には、英文の言い換えを難しく作る必要はありません。「誰が、何をしたか」「その結果どうなったか」「書き手は何を伝えたいか」を日本語で答えます。本文に書かれていないことを想像で補っていないかも照合してください。語の意味を知ったことで答えが変わったなら、変わった箇所に印を付けます。どの語が理解を支えたかが残ります。
解説がある教材では、先に自分の説明を書いてから解説を開きます。正解と同じ語句があるかだけでなく、主張と理由の関係が合っているかを見ます。選択式の問題に正解していても、本文の根拠を示せなければ、その段落は確認を続けます。逆に、選択肢を読み違えただけなら、本文の語彙を最初から全部覚え直す必要はありません。
説明がうまくできなかったときは、語のメモだけを見て読み直します。それで読めたなら、語の意味を受け取るところに課題が残っています。まだ読めなければ、主語と動詞に印を付け、文を短いまとまりに分けます。その助けで読めた場合は、語彙の復習と文の組み立ての確認を別々に予定します。自分に必要な助けを調べる作業なので、すぐに説明できなかったことを失敗と考えなくて構いません。
終わりの3分で次回の確認を予約します
記録の最後に、「今日読めるようになった箇所」と「まだ説明できない箇所」を書き分けます。次回は、残った箇所から始めてください。基礎の語が安定して受け取れるようになったら、読む範囲を広げ、そこで出会う中頻度語を追加していきます。基礎を完璧にするまで新しい語を一切扱わない、という進め方にする必要はありません。
別の短い英文で同じ語を見つけたら、メモを見る前にその文の意味を説明します。元の例文だけで答えられる状態と、違う文でも意味を選べる状態を区別してください。出会った文が難しすぎる場合は、その語を含む短い部分に戻ります。新しい文章で止まった理由が、語の意味なのか文の長さなのかも分けて残します。
時間が取れない日は、すでに印を付けた文だけを開き、意味を説明して終えても構いません。途中まで進んだページを埋めるために新しい語を増やすより、どこから再開するかを残す方が次の行動につながります。予定の時間で終わらなければ、続きに目印を付けます。毎回の学習を長引かせず、語の確認から本文へ戻る流れを保ってください。
紙の記録を続けにくければ、教材の余白に短く残しても構いません。「意味を確認」「文の関係を確認」など、戻る理由が読める形にします。記録を清書する時間が増えて本文を読めなくなるなら、項目を減らしてください。使いやすさを確かめる基準は、次に開いたとき、何を読んで何を試すかを迷わず決められることです。
記録を見直す日は、正しく答えられた数とともに、迷い方の変化も読み取ります。前は訳語が出なかった語について、今は候補の意味から選べるなら、次は周囲の語との組み合わせを確認します。元の文では読めても別の文で止まるなら、覚える語の追加より、使い方を広げる練習に時間を使います。どの段階にいるかを言葉にすると、同じページへ戻る理由が明確になります。
中頻度語へ広げる目安も、単語帳を終えたかだけで決めません。基礎に位置づけられた語で止まる場面が減り、意味を調べたい語が話題の中心に集まってきたら、その話題の文章をもう少し読みます。そこで繰り返す語を選び、元の段落へ戻る手順を続けます。新しい語を増やしてから基礎の抜けを見つけた場合は、同じ記録に戻してください。行き来できる計画なら、進むことと戻ることを対立させずに済みます。

個別指導では読むときのつまずきを記録します
個別指導で最初に確かめたいのは、単語テストの得点と、実際の読解がどこで離れているかです。講師は、本人が読んだ段落について説明を聞き、止まった語を一緒に見ます。訳語が出なかったのか、別の意味を当てはめたのか、語はわかっていても文の関係を取り違えたのかを区別します。単語帳を何ページ進めるかは、その確認をしてから決めます。
塾が持つのは、優先順位を付ける判断と、確かめるための課題です。よく出会う語に抜けがあるなら、その語を含む短い英文を用意します。語彙は受け取れているのに文の関係がつかめないなら、文の組み立てを確認します。難しい文章を追加して負荷を上げる前に、どの支援で読めるようになったかを記録し、次の教材選びにつなげます。
たとえば、run a shopを「店を走る」と受け取っていた場合は、まずそのまとまりでの意味を確認します。そのうえで、誰が店を経営するのかを本人に説明してもらいます。講師の訳を聞いてうなずいたことだけで習得とせず、メモを隠しても説明できるかを見ます。さらに別の文で同じ使い方に出会ったときに、支援なしで受け取れたかを残します。
本人が持つのは、止まった場所の印と、考えた跡です。最初から整った日本語訳を作って持参する必要はありません。「この動詞の意味を迷った」「ここから先は予想で読んだ」と残っていれば、授業で確かめられます。わからなかった語を隠さず提出できる形にすると、講師も次の課題を絞れます。ノートの見栄えを評価の中心にしないことも必要です。
家庭が持つのは、学習を始めやすい時間と、終えたことを確認する程度の役割です。保護者が毎回英文を訳したり、新しい単語を選んだりする必要はありません。お子さまに声をかけるなら、「今日はどの文が読めるようになったの」と尋ね、本人の説明を聞いてください。英語の正誤に迷うところは印を付けて塾へ戻せば、家庭で判断を抱え込まずに済みます。
進み具合は、覚えた語の数だけを並べると見えにくくなります。記録には、扱った語、元の文での理解、別の文での理解を並べます。「訳語を確認して読めた」「何も見ずに説明できた」「別の意味では迷った」という違いが残ると、同じ語を学び直す理由も伝わります。できなかった印が増えても、それが未確認だった場所を見つけた結果なら、学習の後退とは扱いません。
記録をもとに本人と相談するときは、取り組む語の候補を講師が絞り、その中でどの文章へ戻りたいかを本人に選んでもらいます。自分が読みたかった内容と語彙学習を結びつければ、課題の目的を言葉にできます。本人にすべての選別を任せるのではなく、講師が難しさと必要性を確かめたうえで選べる範囲を用意します。進め方に迷う負担も、個別指導で扱う対象です。
確認に使う文章の難しさも記録に添えます。短い文で意味を取れたことと、長い段落を読み切れたことを同じ欄で評価すると、進歩を見誤ります。語の意味を確かめる課題では文を短くし、読解へのつながりを見る課題では段落に戻します。課題の目的を分けておけば、本人も「今日は何をできるようにするのか」を理解して取り組めます。
保護者への連絡は、学習量の報告だけで終えず、読むときの変化を具体的に伝えます。「身近な動詞の意味を確認したあと、段落の理由を説明できました。別の文章でも同じ使い方を受け取れるかを次に見ます」と、できたことから次の確認につなげます。家庭への依頼が必要なときだけ、「印のある文を開けるよう、教材を机に置いておいてください」など、行動を小さく添えます。
成人の受験者であれば、同じ内容を本人に返します。仕事で必要な話題と試験の読解で出会う話題が違うと、よく知る語の偏りも変わります。本人が読みたい文章を持ち込み、塾が基礎の語の抜けと話題固有の語を分けることで、目的に沿った順番を相談できます。限られた学習時間をどの語に使うかを、実際の英文に基づいて決めます。
次の授業では、前回の説明をそのまま再現することだけを求めません。別の文で意味を選べたか、段落を説明するときに助けが必要だったかを確かめます。進み具合に応じて、新しい語を増やす日と既知語の使い方を広げる日を組み替えます。宿題の量を固定するより、読むときの記録から次の一歩を決める方が、学習内容を本人に説明しやすくなります。
語彙を増やすときによくある質問
Q1. 目標の語数に達するまで長文は控えた方がよいですか
単語学習と並行して、自分で内容を追える短い英文を読んでください。英文に戻ることで、知っているつもりの語や、文中では意味を選べない語を見つけられます。語数だけで読解の開始時期を決めると、覚えた語が使えるかを確かめる機会がなくなります。反対に、ほとんどの文で止まる文章を無理に読み続けると、点検する語を絞れません。短い段落に戻り、意味を確認したあとに内容を説明できるかを見てください。受験する級を選ぶ際の制度上の確認には、実施団体の最新の案内を使ってください。
Q2. 難しい語を覚えた分は無駄になるのでしょうか
その語が出てくる文章では、理解を支える手がかりになります。すでに覚えたものを消して基礎だけに戻す必要はありません。ただ、難しい語を増やしても身近な動詞で止まるなら、次の学習時間を基礎の抜けに使います。興味のある話題の語も残しつつ、幅広い文章で出会う語を優先してください。単語帳で先に進む日と、読解から見つけた語に戻る日があって構いません。過去の努力を否定せず、これからの順番を調整する考え方です。
Q3. 知らない語はすべて辞書で調べるべきですか
最初に読むときは印だけを付け、段落の大意をつかめるか試してください。その後、主張や理由の理解を妨げた語から調べます。文脈から意味を考えた語も、学習後には辞書と照合し、推測が合っていたかを確かめます。調べた語をすべて暗記対象にする必要はありません。繰り返し出会うか、今回の理解を支えたかを見て選びます。読み終えた達成感を残しながら、次の文章にも持っていける語を増やしてください。
覚えた語が読める文を増やしているか
次の学習では、新しいページを開く前に、最近止まった英文へ戻ってみてください。見覚えのある語を確認し、その文の意味がつながるかを試します。つながったら、段落全体で何を伝えているかまで説明します。語彙の広さは、そのように読める文が増えることと結びつけて育てられます。
記録に残したいのは、「まだ知らない語が多い」という感想だけではありません。「この語の意味を選べたので、理由が読めた」という変化です。頻度の高い語から足元を確かめれば、次に増やす語にも理由を持てます。覚えた語の隣に読み取れた文を添えると、単語帳の進み具合とは別に、読める範囲の広がりをたどれます。
参考文献
- Masraiほか・2019、SAGE Open。高頻度語・中頻度語の知識と読解の関係。 https://consensus.app/papers/details/c7c6285d00e957b88cb9351d47347625/
- Zaafourほか・2025、Language Teaching Research Quarterly。語彙の大きさ・文章の語の網羅率と批判的読解の関係。 https://consensus.app/papers/details/529d6d17dc7a53549e47b49280136bef/





