英作文の直し合いでは、読み手が受け取った主張と理由を確かめます。友だちへの頼み方、指摘を選ぶ基準、ひとりでの書き直しを具体化し、家庭でも使える確認の問いをまとめました。

友だちと直し合う英作文—何を見てもらうか
「よかったよ」の先を聞けないとき
よくあるのは、昼休みの中庭で英作文のノートを友だちに渡し、「変なところはあるかな」と聞く場面です。相手は少し考えて「よかったよ」と返します。赤字はつかず、本人も安心しますが、家で読み直すと、どの部分が伝わったのかはわかりません。反対に、細かな綴りをたくさん直してもらったのに、理由が主張につながっているかは手つかずということもあります。
友だちと直し合う学習は、ピアフィードバックと呼ばれます。英語が得意な人に正解を書き込んでもらう時間にするより、読み手が文章から何を受け取ったかを確かめる時間として組み立ててみてください。書き手が頭の中で補っていた説明を、相手も文章から読み取れるかが焦点になります。
英検などの英作文を練習するときも、全部を一度に見てもらう必要はありません。「私の意見はどれだと思う」「この理由だけで納得できる」という小さな問いから始められます。仲のよさを採点に持ち込まず、自分の文章を自分で選び直せるようにするため、頼み方、読む順番、指摘を採用する基準をそろえていきます。

書いたつもりと伝わった内容の間にあるもの
自分の意見について書くとき、書き手はすでに結論も、その結論に至った経験も知っています。たとえば「学校で読書の時間を設けることに賛成です」と考える人には、普段は本を手に取らない自分の姿が浮かんでいるかもしれません。ところが本文に「よい習慣になるからです」としか書かなければ、読み手は、何を繰り返してどんな習慣になるのかを補うことになります。
このとき友だちに頼みたいのは、書き手の事情を思い出すことではありません。ノートに書かれた言葉だけを手がかりに、意見と理由を受け取ってもらうことです。「あなたは普段忙しいからね」と会話で意味が通っても、その説明が本文にあるとは限りません。書き手の口頭説明をいったん待ち、相手がどこまで読めたかを先に聞くと、文章に足すべき内容を探せます。
第二言語の作文を扱った研究では、仲間からの指摘が作文の改善につながり、特に書き直しと内容面で力を発揮することが報告されています(Vuoganほか・2022)。対象は仲間からの指摘を扱う26研究をまとめたメタ分析であり、その結果だけから、目の前のお子さまが友だちと原稿を交換すれば同じ改善を得られるとまでは言えません。そこで練習では、交換したかどうかに加え、何を聞き、どこを書き直したかまで確かめます。
内容への指摘とは、賛成か反対かを相手に決めてもらうことではありません。「読書の時間に賛成していることは伝わりました。ただ、習慣になるまでの説明がほしいです」という返し方なら、本人の立場を尊重したまま文章の不足を示せます。意見が違う相手でも、文章の意味を読み取る役割は担えます。相手の好みに合わせて結論を変える必要はありません。
ここで区別したいのが、読み手としての反応と、英語の規則についての判断です。「この代名詞が何を指すのか迷いました」は、読んだ本人が伝えられる反応です。「この語順は必ず間違いです」は、規則を確かめてから伝える判断です。両者を一緒にすると、友だちが戸惑った場所まで文法の誤りとして扱ってしまいます。迷いを示す印と、確かめた訂正の印を分けてください。
書き手にも、指摘を受け取ったあとの役割があります。相手がわからなかったと言ったら、まずどこで止まったかを聞きます。そのあと、自分の考えに合う説明を足すのか、順番を変えるのか、すでに書いてある箇所を明確にするのかを選びます。「友だちに言われたから直した」で終えず、「理由と具体的な行動をつなぐために直した」と説明するところまでを学習に含めます。
読み手の疑問が出たとき、すぐに文章全体を書き換える必要もありません。主張は伝わり、理由の一部だけで止まったなら、まずそのつなぎ目を扱います。残す箇所と直す箇所を分けると、自分がすでに書けていた内容も見失わずに済みます。指摘を文章全体への評価として受け止めやすい人は、「どの文の、どの言葉についての話ですか」と範囲を確かめてください。扱う場所を定めてから修正案を考えます。
見る場所を絞り、ひとりでも書き直せる手順
まずは、手元の作文課題から短い原稿を1つ選びます。初めての題材を増やすより、すでに自分の意見を書いた原稿を使うと、修正に取りかかりやすくなります。課題の指示を原稿と一緒に置き、相手にも何について答える文章なのかを見せてください。練習時間は、準備に3分、読み手の確認に5分、書き直しに10分を取って始めます。途中で説明したいことが増えたら、残りは次の練習へ回します。
原稿と依頼をひとりで用意します
準備の3分では、原稿をすぐ清書せず、余白に「自分が言いたいこと」を日本語で短く書きます。これは最初は相手に見せないでおきます。先に答えを知らせると、文章から読み取れたのか、説明を聞いて理解したのかが分けにくいためです。次に、原稿の中で主張に当たる文に自分用の印をつけ、各理由がどの文にあるかを確認します。原稿を写真で残すか、修正前の紙を保管しておけば、あとで変化を見比べられます。
頼む内容は、読むたびに1つへ絞ります。最初の読みでは「私の意見を日本語で短く言ってください」、次の読みでは「理由に納得しにくい場所を示してください」、最後の読みでは「誰や何を指すか迷った言葉を教えてください」と依頼します。主張、理由、言葉のつながりの順で見れば、綴り探しだけで終わることを避けられます。全部を見てもらえない日には、その日の困りごとに合う依頼だけを渡します。
依頼は原稿の余白か小さなメモへ書き、口頭のお願いだけにしないでおきます。相手は途中で見る目的を確かめられ、書き手も返ってきた反応が依頼に合うかを見られます。交換するなら、それぞれが依頼を書いてから渡してください。読む側の都合だけで点検箇所が決まらず、書く側も学びたいことを選べます。
原稿を見せる相手がいない日は、この依頼を紙の上部に書き、自分が読み手役になります。いったん原稿を閉じ、別の作業をしたあとで読み直してください。余白に書いた意図を隠し、本文だけから「何に賛成しているか」「なぜそう考えるか」「具体的に何が起きるか」を抜き出します。抜き出す言葉が原稿に見当たらなければ、頭の中の説明を文章に足せる場所として印をつけます。
読み手には答えよりも読んだ経路を聞きます
相手に見てもらえるときは、5分の間、書き手が横から言い足すのを待ちます。読み手には、わかった主張に線を引き、止まったところに疑問符をつけてもらいます。コメントは日本語でかまいません。「意味が変です」だけでは修正箇所を選べないので、「この文の『それ』は読書と時間のどちらですか」のように場所と疑問を結びつけてもらってください。
ここでは、学校の読書時間について書いた原稿を考えます。「I think schools should have reading time. It is good for students.」とあれば、学校で読書の時間を設けてほしいという立場は読み取れます。一方で、生徒にとってどのようによいのかは、まだ広いままです。読み手からは「よい点として何を考えていますか」と聞いてもらいます。難しい語を提案してもらう前に、説明したい中身を確かめます。
書き手が伝えたいのが「毎日本を開くきっかけになること」なら、読み手の質問を受けて「It gives students a chance to read every day.」という文を考えられます。これで、ただ「よい」と述べていた箇所が、どんな機会をつくるのかという説明になります。書き換えたあとは、「この文は、自分の考えを表しているか」「最初の主張を支える理由になっているか」を本人が判断します。
相手の作文を読む番になったら、同じ見方を使います。最初に読み取れた内容を返し、そのあと疑問を添えてください。「毎日本を読む機会が増える点を理由にしているのですね。読書の時間があるとなぜ毎日続けられるのかも聞きたいです」と伝えれば、理解した場所と追加してほしい場所を分けられます。書き手は、原稿のどこを残すかも選びやすくなります。
読み手は、書き手の代わりに全文を書き直さず、まず質問を返します。書き手が説明を考えている間は少し待ち、必要なら「どんな行動が増えると思いますか」と問いを狭めてください。言いたい内容が日本語で整理できたら、英語にする作業は書き手へ返します。相手の表現を借りる場合も、その文が何を説明するのかを本人の言葉で確かめます。
指摘は採用、保留、見送りに分けます
書き直しの10分では、すべての指摘をすぐ本文へ移さず、短いメモに分けます。自分の意図に合い、説明を補える指摘は採用します。文法や語の使い方について確信が持てないものは保留します。課題と関係のない内容を足す提案や、本人の考えを別の意見に変えてしまう提案は見送ります。採用しないことも、理由を説明できれば、文章を自分で判断する練習になります。
保留した表現には、手元の辞書や文法の解説を使います。辞書では訳語だけでなく、その語がどんな形で文に入るかを用例で見ます。文法の解説では、疑っている箇所に対応する規則を探し、原稿の文と並べます。答えが絞れなければ、その箇所を残して講師に尋ねる準備をします。友だち同士の自信の強さで正誤を決めず、確かめた内容を原稿へ戻してください。
作文課題、修正前の原稿、辞書や文法の解説には、それぞれ役割を持たせます。課題の指示は、足した内容が問いから離れていないかの確認に使います。修正前の原稿は、何を直したかを振り返るために使います。辞書や解説は、保留した表現を確かめるために使います。何となくページを眺めるよりも、「いま何を決めたいのか」を一言書いてから開くと、調べる範囲を定められます。
読み手が複数いると、別々の提案が返ることもあります。片方が「具体的な行動を足すとよい」と言い、もう片方が「文を短くするとよい」と言ったら、どちらかの人を選ぶ話にはしません。自分が伝えたい理由を残し、同じ内容の繰り返しを減らせるかを考えます。両方を取り入れられなければ、まず課題に答えるために必要な説明を優先します。判断が難しい提案は、無理に結論を出さず保留欄へ戻してください。
書き直しのあとに自分で確かめます
修正後は、まず課題の問いと最初の主張を並べ、求められた内容に答えているかを見ます。次に、理由の文のあとへ「それによって何が起こるのか」と問い、本文に答えがあるかを探します。最後に、指示語の指す内容をたどり、読み手が途中で迷わないかを確認します。3つを一度に済ませず、見る目的を変えながら読み返してください。声に出すときも、読む速さより文のつながりを確かめます。
再び同じ友だちに読んでもらえるなら、「前よりよくなったかな」だけで終えず、「読書の時間がある利点を、今度はどう読みましたか」と尋ねます。返ってきた説明と、準備のときに隠しておいた自分の意図を比べてください。一致したところは残し、ずれたところだけを次の修正候補にします。友だちにもう一度頼めないときは、自分で理由を抜き出す確認を行い、余白に疑問が残っているかを記録します。
翌日に5分取れるなら、原稿を隠して同じ主張と理由をもう一度短く書きます。そのあと修正後の文を開き、足した説明を自分で再び入れられたかを比べます。違っていても、語句を同じに戻す必要はありません。「毎日読む機会になる」という理由が通っていれば、別の言い方でも本人の判断を確かめられます。直した文の丸暗記より、修正のねらいを説明できることを確認してください。

個別指導では、誰が何を判断したかを残します
個別指導で塾が持つのは、直し合いの目的を定め、友だちの反応を学習に変えるところです。最初から自由に交換させるのではなく、講師が短い原稿を一緒に読み、「意見を読み取る」「理由の不足を探す」「表現の正誤を確かめる」を区別して見せます。内容を受け取る作業と規則を判断する作業が分かれれば、生徒は自分が答えられる範囲を選びやすくなります。
扱う範囲は本人の状態に合わせて決めます。主張を文にするところで止まっているなら、友だちには主張が読み取れたかだけを聞きます。主張と理由が書けているなら、そのつながりを見てもらいます。表現の相談が多いときは、保留する印を先に決め、講師が確認します。英語が得意な相手へ任せきりにせず、講師が、何を生徒同士で扱い、どこを引き取るかを明らかにします。
講師がとくに確かめたいのは、よく整った完成稿の裏で本人の意図が失われていないかです。「この文を加えたのはなぜですか」「友だちの案のどこを変えましたか」と尋ね、本人の言葉で説明してもらいます。答えに詰まったときは、修正前の主張へ戻り、どの説明なら自分で選べるかを探します。完成稿をきれいにすることと、本人が判断できるようになることを、授業の中で結びつけます。
進み具合は、原稿の余白に残す短い記録で見えるようにします。日付、見てもらった点、読み手が止まった箇所、本人の選択、次に確かめる点を並べます。読書時間の作文なら、「よい点が広すぎるという反応を受け、毎日読む機会という説明を追加しました」と記録できます。指摘された数が少ないことだけをよしとせず、指摘を受けてどんな判断ができたかを見ます。
次の課題では、前回の原稿を横に置いて仕上げるだけでなく、まず本人だけで書いた状態も残します。前回は質問を受けて足した説明を、今回は自分から書けたかを見たいからです。まだ補えなければ、講師が同じ問いを短く示します。自分で点検できた箇所が増えたら、その箇所は本人へ任せ、別のつまずきを扱います。毎回すべてに指摘を加えるのではなく、本人が判断できる範囲に合わせて手助けを変えます。
本人が持つのは、何を伝えたいかと、どの修正を採るかの決定です。講師や友だちが候補を示しても、最後に本人が読み返し、自分の意見として書ける内容を選びます。家庭が持つのは、原稿と修正の記録をしまう場所、取り組む時間、無理なく相談できる環境です。保護者が文法を教えたり、友だちの指摘を再採点したりしなくても、学習の流れを支えることはできます。
保護者への連絡には、修正前後の短い言葉を並べ、その間に本人の判断を添える形が使えます。「今回は『生徒によい』という理由を『毎日読む機会が生まれる』まで具体化しました。ご本人は、読み手に効果の中身を伝えるためと説明しています。次回は別の課題でも、理由を具体化できるかを見ます」と伝えると、授業で行ったことと、これから確かめることがつながります。
家庭から返していただく内容も、正誤の報告に限りません。「書き直した理由を話してくれた」「原稿を見ずに説明するのは難しそうだった」といった様子が、次の指導を考える材料になります。社会人の学習なら、このやり取りを自分用の学習記録に置き換えられます。直した箇所の一覧に加え、「次の作文で自分から試すこと」を短く書き、授業の冒頭で講師と確かめます。
家庭で原稿を見せることを嫌がる場合は、全文の提出を求めず、本人が選んだ修正箇所について話してもらう形も取れます。「理由を詳しくした」という報告があれば、「どこを詳しくしたかは、次の授業で先生に伝えてね」と返せます。塾は授業で原稿を確かめ、家庭は本人が取り組んだ過程に耳を傾けるという分担です。連絡を増やすために本人の負担を増やさず、次の学習につながる材料を共有します。
また、誰とでも原稿を交換する必要はありません。知ってほしくない経験を書いた原稿は選ばず、学校生活など話してよい題材で練習します。読み手は原稿の内容について尋ね、性格や能力について評価する言い方を避けます。講師は、コメントが本人への批判に変わっていないかも見ます。やり取りに負担がある場合は、講師が読み手を引き受け、本人が落ち着いて判断できる形へ戻します。
直し合いで迷いやすい3つのこと
英語が得意な友だちでないと頼めませんか
まずは読み手として、何が伝わったかを返せる相手に頼めます。文法の説明に自信がなくても、「読書の時間に賛成していると読みました」「この理由の意味をもう少し聞きたいです」と伝えられます。難しい表現で止まったら、場所に印をつけて講師へ渡します。相手に正解を全部用意してもらう依頼を避け、できる確認を明確にしてください。英語力に差がある場合も、助言を与える側と受ける側を固定せず、互いの原稿について読み取った内容を返し合います。
友だちの指摘が間違っていたら困りませんか
表現の訂正は、そのまま採用する前に確かめます。相手の案を別の欄へ書き、辞書や解説で調べ、迷いが残る箇所は講師へ持っていきます。ただし、訂正案が適切でなかった場合も、「そこで読み手が止まった」という反応は残せます。語順を変える必要はなくても、指示語を具体的な名詞に替えると意図が伝わるかもしれません。相手の提案を採るかどうかと、読みにくかった場所に目を向けることを、分けて考えてください。
仲がよいので、よいことしか言い合えません
「悪いところを見つけて」と頼むと、相手を否定するようで言いにくくなることがあります。依頼を「私の理由を読んで、もう少し聞きたいことを1つ教えてください」に変えてみてください。よかった点も「よかった」だけで終えず、伝わった主張や具体的な言葉を挙げてもらいます。それでも遠慮が強ければ、講師が同じ問いで読み手役を務め、その返し方を一緒に確認します。友だち同士で無理に評価をつけず、文章について質問できるやり取りから始めます。
最後に選ぶ言葉を、自分のものにします
次の英作文では、原稿を渡す前に「今日は理由が伝わるかを聞く」と決めてみてください。返ってきた指摘の中から、自分の意図を伝える修正を選び、直した理由を余白に残します。相手がいない日も、読み手の問いを使って本文を点検し、次に相談する箇所を選べます。
家庭では「いくつ間違っていたの」と数える代わりに、「どの言葉を自分で選び直したの」と尋ねてみてください。その答えに、書き手として考えた道筋が表れます。完成稿と一緒にその判断を残せば、次の作文で試したいことも見えてきます。友だちの疑問に耳を傾け、採用する理由を自分で説明することで、書き手としての選択に責任を持てます。
参考文献
- Vuoganほか・2022、TESOL Quarterly。仲間からの指摘と作文の改善に関する26研究のメタ分析。 https://consensus.app/papers/details/374d7b4400955cf09dd378a99e9ba165/





