宿題は終えたのに提出できない、切り替えると続きが分からない。途中情報のメモと作業の合図を分け、開始から提出までの抜ける工程を補います。
宿題を終えたのに鞄へ入れ忘れる。解き方は分かるのに、問題の条件を途中で抜かしてしまう。次の教科へ移るよう言うと、今のノートを閉じられず時間が過ぎる。保護者は「分かっているならやって」と言いたくなりますが、知っていることと実行することの間に支援が必要な場合があります。
実行機能という言葉は、計画を立てる、必要な情報を保ちながら進める、活動を切り替えるなど、目的に沿って行動を調整する働きを指すときに使われます。ここでは家庭で能力を判定するのではなく、学習のどの操作を外から補えるかという視点で扱います。
この記事では、頭の中だけで管理していた情報を外へ残し、開始から提出までの型を作る方法を考えます。道具を使わずに覚えることを目標にせず、本人が学習内容へ力を使えるようにすることが目的です。最初から立派な予定表を作る必要はありません。よく抜ける操作へ、本人が見つけられる手がかりを置きます。

学びの困りごとはどこで生まれるのか
課題を進めるには、答えを知る以外の仕事があります。必要な物を選ぶ、手順を決める、途中の情報を保つ、間違いに気づく、終えた物を提出する。それぞれを分けると、失敗を「不注意」のひと言で説明せずにすみます。どの仕事が難しいかは、同じ子でも課題や疲れによって変わる可能性があるため、場面を具体的に観察します。
作業中に保持する情報が多いなら、条件や途中結果を書いて残す方法を試せます。計画を立てることが難しいなら、完成形から必要な工程を一緒に分けます。切り替えが難しいなら、今の作業をどこへ残し、次に何を開くかを示します。「実行機能を鍛える」という抽象的な目標より、課題に必要な操作を明確に教えることを優先します。
ADHDの中学生を扱った研究では、プロンプトや自己管理の有効性が報告されています(Harrison et al.・2022)。この知見は、手がかりを使い自分の行動を確かめる指導を考える参考になります。ただし、特定の学習の型が脳の機能全体を改善する、他の生活場面へ自動的に広がるとまでは言えません。使える場面をそれぞれ確認してください。
外部の道具を使うことは、自分でできていないという意味ではありません。道具の中から必要な情報を選び、操作する技能も必要です。表を作っただけで使えると思わず、どのタイミングでどこを見るかを教えます。手順を見られなかった日は、本人の意思より先に、道具の位置や情報量を見直します。
作業の失敗を調べるときは、最後にできていた地点から見ます。完成した宿題が机に残るなら、計画や解法の説明より、持っていく物を入れる操作が焦点です。鞄に入ったが出せないなら、学校で提出する時点の手がかりを相談します。同じ未提出でも必要な支援は変わります。本人へ「なぜ忘れた」と理由を求め続けず、物がどこで止まっているかをたどると、大人が変更できる条件を見つけやすくなります。
Sharabi et al.(2025)は、SLD・ADHDのある学生の成績差を、学業的自己効力感と自己調整学習が統計的に媒介したと報告しています。計画し、取り組みを確かめる視点を持つ参考になりますが、実行機能を測って特定のメモの効果を検証した結果とは同じではありません。予定表を導入する際は、この子が何を見て動けたかを別途確かめます。関連のある研究と、教室で試す具体的な方法を分けて受け止めてください。
道具の中身だけでなく、見るきっかけも外へ残します。忘れ物の一覧が部屋の壁にあっても、玄関で靴を履くまで見なければ役立たないことがあります。鞄を置く場所で表を見る、課題を閉じるとき提出袋を開くなど、動作に結びつけます。本人が一覧を暗唱できるかより、必要な瞬間に使えるかが重要です。使わなかった日には、表を見るまでに別の仕事が挟まっていなかったか確認します。
作業が進まない原因をすべて実行機能にまとめないことも必要です。取りかかる順は分かっていても、問題文の意味が不明なら内容の説明が要ります。課題を前に「何をするか」「どう解くか」「次に何を見るか」を分けて確かめます。順序のメモで動けた部分は残し、解法が不明な部分は教師へ戻します。手順表を増やすだけで解決しないとき、本人の使い方を責める前に、別の支援が必要かを見直せます。
家庭での接し方
終える操作と提出する操作をつなぐ
家庭では、宿題の終了を答えを書いた時点だけにしません。「終えた紙を提出用の場所へ入れるところまで確認しよう」と伝えます。避けたいのは、忘れた後にだけ注意することです。入れる場所を決め、実際に移す動作を一緒に練習してください。
切り替えの前には、作業を残す方法を示します。「続きはここに印を付けて、次に開く本を出そう」と伝えます。急に片づけさせて、考えていた内容まで失わせることは避けます。終了できない理由が未完成への心配なら、再開する予定も確認します。
長い課題は、本人と完成までの工程を並べます。「何からするかを一緒に決めよう」と提案し、親が全部管理する予定表を渡すだけにしません。本人が選べる工程を残し、必要な道具と相談先を書き添えます。
抜ける工程へ印を置き、見る時点を決める
長い課題を計画するなら、完成品から逆に必要な物を並べます。自由研究の提出なら、調べる、メモを選ぶ、文章にする、図を貼る、名前を書いて提出する、と分けられます。「調べる」だけで予定を埋めないようにします。本人が得意な工程は任せ、見積もりにくい工程は親と相談します。日付を置く前に準備物も確かめ、必要な紙がないため止まった時間を、本人のやる気の不足と扱わないでください。
一度うまく提出できたら、「忘れなかったね」だけでなく、どこで提出袋を見たかを聞きます。本人が鞄の手前に入れたことで取り出せたなら、その配置を残せます。親が全部準備した場合は、本人が担った操作を確認して次に任せる箇所を選びます。結果が同じでも、自分が再利用できる方法は違います。学校からの返却物が混ざるなら、提出前と返却後の収納を分ける案も試せます。
予定が遅れたときは、後ろの時間を全て圧縮する前に残りの工程を見ます。清書を急いで記名や提出袋への収納を飛ばすと、完成したのに出せないことがあります。「何を今日終え、何を先生へ相談するか」を分けてください。大人が設定した所要時間が短すぎた場合は、その見積もりを直します。本人が予定変更を知らせたことを責めず、準備や片づけにも時間が必要だと計画へ反映します。
毎晩の振り返りは、止まった工程へ一つ印を置く程度から始められます。「今日は入れるところを忘れたので、明日はノートを閉じる時に袋を開く」と具体化できれば十分です。反省の長さで改善を測らず、次の動作が変わるかを見ます。印を付けること自体が負担なら、保護者が本人に確認して残す方法もあります。本人がその印をいつ見るのかまで決め、記録を作るだけの仕事にしないでください。
途中の情報と次の行動を別々に残す
長い課題では、内容のメモと作業のメモを分けます。調べたことはノートへ、次にする操作は付箋へ書くなど、役割が分かる形を本人と選びます。同じ紙へすべてを書いて探しにくいなら、場所を分ける工夫を試します。道具を増やしすぎず、どこを見れば再開できるかを本人が説明できる状態を目指してください。
複数の用事を頼む際は、聞き終える前に動き出す必要がないと伝え、記録する時間を残します。復唱できても、別の活動後に覚えているとは限りません。「牛乳をしまう」と「宿題の紙を出す」のように場所が違う用事なら、先にどちらへ向かうかを決めます。途中で新しい用事を追加するときはメモも更新し、口頭で足した内容まで忘れず行うことを当然にしないでください。
端末での課題では、作成、保存、送信、受付の確認を分けます。画面に文章が残っていても、送信まで済んだとは限りません。学校で使う画面を本人と見て、提出した状態の表示を担当者へ確認します。家庭では「送ったつもり」と「受け付けられた」を区別できるようにし、通信の不調で送れないときの連絡先も決めます。紙の提出袋と同じ発想で、画面上の最後の工程を確かめます。
期限が違う課題を並べる場合は、提出日だけでなく、取りかかる日を別に記します。来週の工作でも、材料を週末にそろえる必要があるなら、買い物の相談は先に行います。「期限が遠いから後で」とした結果、必要な物がないことを本人の怠けとして扱わないでください。親が全て逆算する代わりに、「自分だけでは用意できない物はどれ」と尋ね、その工程だけを一緒に計画します。
二つの課題が同じ日に重なったら、本人に「優先して」とだけ命じず、提出先、必要な時間、他の人の協力が要るかを並べます。短く終わる物から始める案と、先に大人へ頼む準備をする案を比べられます。決めた順で終わらなければ、次はどの見積もりを直すかを相談します。計画を守ったかだけで採点せず、実際にかかった工程を次の予定へ反映します。

個別指導での教え方
課題の手順を本人と組み立てる
授業では、教師が完成した手順表を渡すだけでなく、課題を解きながら必要な工程を選びます。本人が既に自分でできる操作は細かく書きすぎず、抜けやすい箇所を残します。表が長くなったら、今の課題に必要な部分へ絞ります。
たとえば計算の途中結果を頭に置いたまま次の式へ進み、数字を見失う場面です。教師は余白を「途中の数」の欄にし、そこへ書いてから続きを解く見本を示します。本人が書いた数を参照して進めたら、計算の正確さとメモの使い方を別に確かめます。次の問題でも欄を残し、覚えられたかを試すために取り上げることは避けます。
途中の数を書く欄には、数値だけでなく何の数かも添えます。「十二」だけでは、戻ったときに人数なのか合計金額なのか分からない場合があります。「人数十二人」と残し、次の式でどこへ使うかを本人に指してもらいます。計算を終えた後も参照する数と、もう使わない数が混ざるなら、使い終えた欄へ線を引く方法を試します。メモの量より、必要な数を選べるかで調整します。
教師の判断を見える形にする
教師は問題を解く前に、頭の中で整理した条件を紙へ出す過程を見せます。「求める数はここ、使う数はここ」と位置を分け、途中でどこへ戻るかも示します。本人が同じ配置で試し、見やすくないと言ったら位置を変えます。きれいなノートの形を守ることより、本人が必要な情報を取り出せることが目的です。何でも書かせず、保持が難しくて抜けた情報から残す対象を選びます。
本人が作業するときは、教師が次々に次の工程を指示しない時間を設けます。止まったらすぐ答えず、使う手順の箇所を示し、そこから本人が動けるか確認します。表を見ても分からなければ、表の語と実際の教材を対応させます。「確認する」という項目なら、単位をどこで見るかまで教えます。教師の声を待つ代わりに、紙の情報へ戻れるようにする指導です。支援を減らす前に道具の使い方を確かめます。
自己点検では、完了の印と実物を照合します。「提出の準備」に丸があれば、名前と課題が入った袋を本人に示してもらいます。印を埋めるだけなら、項目の意味が曖昧かもしれません。教師は虚偽の記録だと責めず、何を確かめたら印を付けるかを一緒に行います。慣れた操作まで毎回確認させる必要はなく、抜けやすい箇所へ項目を絞り、点検が課題本体より重くならないようにします。
算数で使った条件メモを作文へ移す際は、同じ表をそのまま渡さず用途を説明します。算数では数、作文では出来事や理由を残すなど、情報の種類が違います。共通するのは、途中で必要な情報を見返すという役割です。本人に各課題で何を残すか選んでもらい、足りなかった部分を補います。新しい場面で使えなくても意欲の問題とせず、転用に必要な説明を授業の中で行ってください。
再開と持ち帰りを授業に組み込む
開始時には、前回の続きの印を本人が見つけるところから確認します。教師がページを開いて渡すだけでは、再開する技能を教えられません。付箋を見ても何をするか不明なら、「この問いの図を描く」など動作の言葉を加えます。印が外れていた場合に使えるページ記録も用意できます。忘れず覚えていたかを評価する時間ではなく、忘れても続きへ戻れる手順を実物で練習します。
複数日にまたがる課題では、教師がいない間にどこまで行うかを、全体の計画へ書き込みます。「家で調べる」なら、調べる問いと戻す資料を決め、検索が終わらない場合は見つけた候補だけ持参してよいと伝えます。次の授業は、その資料を選ぶ工程から始めます。家庭で前の工程を完璧に終えないと授業へ戻れない構造にせず、途中の情報を受け取って一緒に計画を更新します。
誤りの訂正では、手順を知らなかったのか途中で抜けたのかを確かめます。知っている確認を抜かしたなら、工程のその位置に印を加える候補になります。一方で、解法が不明なら手順を増やすだけでは足りず、内容を教え直します。本人に全部の工程を再度書かせるより、必要な部分だけを直します。次の問題で印が使えたかを確認し、役立たない注意書きが紙の上に増え続けないようにします。
終了の少し前から、記名、持ち帰り、次回の開始位置を確認する時間を取ります。問題を最後まで増やして、片づけだけを急がせないでください。家庭で提出する物がある場合は、本人が鞄のどこへ入れるか選び、取り出す場面を想定します。教材が入ったことを教師が確認して終えるだけでなく、本人がどの合図で確認したかを記録します。授業で解けた成果を、次の場所へ運ぶ技能まで含めた支援です。
学校・医療・塾の連携
学校、家庭、塾で、課題の完了をどこまでとするか確認します。解き終えた、保存した、提出したという段階を分けておくと、どこで止まったかが分かります。連絡帳や学習端末など複数の情報源がある場合は、本人が見る順序を相談してください。
支援の道具を共有するときは、本人が使い方を理解しているかを各場面で確認します。同じ表でも、学校と家庭では置ける場所や利用できる時間が違います。統一より、必要な情報を見つけられることを優先します。
忘れや切り替えの困難が生活全体で強く、本人や家族の負担が大きい場合は、学校の相談窓口や医療機関へ経過を伝えます。塾だけで原因を診断せず、学習で観察した具体的な場面を資料にします。
学校へは「宿題は終え、家庭で提出袋へ入れた。学校で袋を開く時点が分からなかった」と、最後に確認できた工程を伝えます。これなら学校で必要な合図を相談できます。家でまた解き直すよう求める前に、提出場所やタイミングを本人が知っていたかを確かめます。未提出という結果を家庭の監督不足へ戻さず、場所をまたぐ作業として分担することが重要です。
共有する手順表には、本人に必要な操作だけを載せ、家庭内の注意記録まで付けない方法があります。「提出袋を開く」という支援を相談するために、家族の口論の内容は通常不要です。本人が人に見られたくない表なら、手帳の内側や教材の裏など使える位置を選びます。診断名を書いた大きな表を持たせることより、必要な場面で目に入る小さな手がかりを検討できます。
引継ぎでは、表の書式より見る時点を説明します。「授業終了の合図の後、ノートを閉じる前に見る」と伝えれば、新しい担当者も促せます。使わなくなった項目は削り、今も抜ける工程は残します。家庭と学校で同じ順番にできない場合は、その場の動線へ合わせて構いません。誰がいつ表を更新するかも決め、古い提出先を記した手順が残らないようにします。
支援の効果を見る日は、忘れ物の数だけでなく、本人が確認できた箇所を見ます。家庭で準備を代行した結果なのか、本人が印を使った結果なのかを分けます。前者が必要な時期もありますが、次に教える工程は明確にしておきます。進級して提出方法が変わったら、以前の習慣を守らせる前に新しい経路を練習します。身についた型が新しい環境に合うかを点検することも、支援者の仕事です。

よくある誤解 Q&A
Q メモに頼ると記憶力が育ちませんか
学習内容を理解する場面で、すべてを頭の中に保つ必要があるとは限りません。途中結果や条件を残すことで考えやすくなるかを試します。記憶を学習する課題とは目的を分け、本人が必要な情報を取り出せる方法を教えてください。道具を使ったことを能力の低さの証拠にしません。メモが増えすぎて探せないなら、情報を残す場所を整理します。書く量を増やすこと自体を支援の目的にしません。
Q 手順表が増えるほど支援になりますか
多すぎる情報は必要な箇所を探す負担になる場合があります。本人が今使う操作へ絞り、見るタイミングを一緒に確認します。使わない表を掲示したまま増やすより、役立った項目を残して直す方が具体的です。表の完成度ではなく、課題へ戻れたかを確かめます。本人が項目の意味を説明できない場合は、教材を使って一緒に確かめます。言葉を覚えさせるより操作を共有します。
Q この学習法で実行機能そのものを改善できますか
ここで示すのは、実際の課題を進めるための支援です。脳の機能全体や、教えていない生活場面への効果を保証するものではありません。課題ごとに使える方法を教え、別の場面で必要な調整を確認します。できた操作と残る困難を分けて記録してください。新しい教科で試す際には、共通する工程と変わる工程を説明します。使えなかった結果を転用する意欲の不足と扱わないでください。
結び
完成した宿題が机に残っていたら、解く工程までを認め、紙が次に進む操作を一つ選びます。「ノートを閉じるとき提出袋を開く」と決めたら、明日はその場面だけを確かめます。忘れた後の叱責より先に、教室で提出までの一操作を教える時間を取ります。教師は本人が忘れても戻れる型を教え、必要な情報を見つけられるかを確認します。次の週も提出できなければ、記憶の反省を増やす前に紙が止まった場所を調べる。最後にできた工程を特定し、次の一操作を教え、その場で使えたかを見る。この順で支援を更新します。
参考文献
- Sharabi et al.(2025), Learning Disabilities Research & Practice. https://consensus.app/papers/details/57b38a11153f51cfb39776cf325dafcd/
- Harrison et al.(2022), Journal of Attention Disorders. https://consensus.app/papers/details/e2e17215a4e95285b8055343e3171892/





