理科で実物に触れる学習と画面上の操作を比べた分析では、全体の優位はどちらにもありませんでした。模型の結果は、触覚が概念に関係するか、空間理解か事実の知識かで読み分けます。家では模型を動かしたあとに位置関係を説明します。
模型を渡すと、子どもは黙って回し続けます。保護者には、見ているだけの授業より学んでいるように映ります。けれど、「どんな関係が分かった?」と聞くと、手が止まります。保護者が確かめたいのは、触った時間と、説明できる内容の間です。手を動かしたことを、そのまま理解の印にする前に研究を読みます。
今回の研究には、実物と仮想の探究を比べた分析、解剖学の模型の分析、有機化学の立体模型の比較があります。自分で操作するか見ているかを直接そろえて比べた研究とは区別し、模型や触覚を学習に置くときの判断を考えます。
1. 論文を役割で並べる
Sifra E. Muilwijkほか(2023)は、実物と仮想の探究による概念知識の獲得をメタ分析し、全体としてどちらにも優位はなかったと報告します。ただし、成人での比較や、触れることが学ぶ概念に関係する感覚情報を与えない場合には、仮想の探究がより有効でした。触れること自体に一律の価値を置かず、概念との関係を読む中心の論文です。35研究を統合した効果量はg = −0.14です [1]。
Kaissar Yammineほか(2016)は、解剖学の実物模型を他の教育方法と比べた研究を分析し、全体の知識、空間的な知識、長い期間を置いた知識に有意な利点があったと報告します。一方、事実の知識の獲得には有意差がありませんでした。模型の結果を、何を測ったかで分けて読むための論文です [2]。
M. D. Casselmanほか(2021)は、有機化学の立体化学で実物模型と仮想模型を比べ、実物模型の群は指導なしの群より理解がよかった一方、仮想模型と指導なしの群には差がなかったと報告します。反応機構への応用では実物模型の群が仮想模型や比較群を上回り、空間技能は各条件での理解に影響しませんでした。特定の空間的内容での比較として並べます [3]。
2. 触れることはいつ学ぶ内容に関係しますか?
実物と仮想の探究の分析は、触覚の情報が概念に関係するかどうかを条件として扱っています。手に持てることだけを優位の理由にすると、この条件が消えます。指で動かしたときに、学習したい内容のどんな情報を受け取っているかを考える読み方です [1]。
この分析では、全体で実物が勝ったという結果も、仮想が勝ったという結果も出ていません。成人と子どもや青年の違いも調べています。日本の中高生の教材を考えるときは、成人で仮想が有利だった条件を、そのまま中高生の規則にせずに読みます [1]。
家で模型を使うなら、「触れるから覚える」で説明を終えず、何を確かめるために動かすのかを言葉にします。位置関係を見たいのか、形の違いを見たいのかを確かめます。模型の種類を選ぶ前に、本人が説明する対象を決める確認です。
3. 空間の理解と用語の知識はどう違いますか?
解剖学の模型の分析は、空間的な知識と事実の知識を分けています。空間的な知識で模型に有意な利点があり、事実の知識では有意差がありませんでした。模型が有効という短い説明だけでは、結果が分かれたことが伝わりません [2]。
家庭でも、部位の名前を答える問いと、どこにありどう関係するかを説明する問いを別にします。名前を言えたから位置関係も説明できる、と採点をまとめないようにします。逆に、向きや関係を説明できたことを、用語が正確に出ることの代わりにもしません。
研究が扱うのは解剖学の教育です。学校の理科で使う模型が同じ結果を出すと扱う前に、内容と評価の違いを読みます。家庭では研究の結果を借りて模型の購入を決めるより、すでにある教材で何を説明できたかを聞きます。模型を置くことと、理解を確かめることを別の作業にします [2]。
模型の分析が長い期間を置いた知識も扱っていることは、その場で分かった感想と区別する材料になります。家庭での復習日程は、本人の説明を聞いて組み立てます。研究が報告した評価と、家庭で決める確認の機会は別に置きます [2]。
立体化学の比較には、文章による指導と指導なしの群もあります。実物と仮想の名前だけに注目すると、何に対して理解の違いが出たかが見えなくなります。理解の評価と反応機構への応用で、それぞれ比較相手がどうなっていたかを読むことが大切です [3]。
家では模型を見たままの説明と、置いたあとの説明を比べます。言葉が止まった場所で、模型のどの部分を見直したいかを聞きます。この作業では、模型を見たときと離したときの説明を聞き、本人が理解した関係を確かめます。
4. 画面の模型では置き換えられますか?
立体化学の研究では、実物模型の結果が仮想模型を上回った場面があります。反応機構への応用で実物模型が有利だった結果を残しつつ、広い範囲の探究をまとめた分析では全体の優位がなかったことも並べます。異なる研究を片方にそろえず、学ぶ内容の違いとして読みます [1][3]。
立体化学の研究で空間技能が理解に影響しなかったことも、結果の一部です。空間が苦手な生徒ほど模型が効く、と条件を足す読み方にはしません。模型の比較と、生徒の技能が結果に関わったかの分析を別々に扱います [3]。
操作権の問いに戻ると、今回の研究には、実物か仮想か、模型か別の方法かという比較が含まれます。本人が操作する条件と見学する条件だけをそろえた比較とは異なります。家庭の学習では、動かしたあとに模型を置き、どの関係を理解したかを話す場を設けます。手を動かした事実より、説明の中身を次の学習へ持っていきます。
【反証】この回が言えないこと
著者らは、それ以前の記述的レビューが少数研究と小標本に基づく点を課題として挙げています [1]。
今回の比較から、「自分で動かせば観察だけよりよい」とは言えません。実物と仮想、解剖学の教育方法、立体化学の指導は比較の軸が違います。空間的な知識で有利だった結果を、すべての理科の知識へ広げることもできません。仮想に有利な条件と、事実の知識で有意差がなかった所見を残して判断します [1][2][3]。
実務——家でできる 3 つの確認
初めに、模型で見たい関係を本人に言ってもらいます。回す前に問いを置き、操作したあとにその問いへ答えてもらいます。単に動いた感想と、学習内容の説明を分けます。
次は、模型を脇へ置いて図や言葉で説明します。当塾のアクティブリコールを、位置関係の取り出しに使う場です。後日同じ関係を別の向きから説明する機会を、間隔反復につなげます。
最後に、模型を見ながら言えたことと、離して言えたことを講師へ伝えます。武蔵野個別指導塾の完全1対1では、その説明を聞いて学習内容を確かめます。模型の扱いに慣れたかと、概念を説明したかを分けて次の課題を決めます。
模型で分かったことを答案へ結ぶ学習については、武蔵境の定期テスト対策をご確認ください。
関連記事:図と言葉をどう組み合わせるか
よくある質問
Q. 模型は紙の説明より必ずよいですか?
模型の利点は、空間知識か事実知識かによって異なります。全体や空間的な知識の利点と、事実の知識では有意差がなかった結果を合わせて読みます [2]。
Q. 仮想の教材を使うのは不利ですか?
広い探究の分析で全体の優位はなく、仮想がより有効だった条件もあります。学ぶ概念と触覚情報の関係に注目します [1]。
Q. 動かすのを楽しんでいたら理解も進んでいますか?
楽しさの感想とは別に、操作後の説明で理解を確認します。今回の研究が比較した評価に沿い、楽しさの感想を知識の測定と分けて扱います。
出典
- Learning from physical and virtual investigation: A meta-analysis of conceptual knowledge acquisition(Sifra E. Muilwijkほか、2023、Unknown Journal)
- The effectiveness of physical models in teaching anatomy: a meta-analysis of comparative studies(Kaissar Yammineほか、2016、Advances in Health Sciences Education)
- Advancing multimedia learning for science: Comparing the effect of virtual versus physical models on student learning about stereochemistry(M. D. Casselmanほか、2021、Science Education)



