「思い出す」練習の具体的なやり方|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

教科書を3回読んだのに、テストになると出てこない。ノートをきれいにまとめたのに、白紙を渡されると何も書けない。この落差は、勉強の量ではなく、勉強のやり方の向きの問題です。読んで入れる作業ばかりで、思い出して出す作業をしていない——多くの場合、原因はここにあります。

「思い出す練習」は、心理学の実験でもっとも繰り返し検証されてきた学習法の一つです。しかし研究の結論を知ることと、明日の勉強を変えることのあいだには距離があります。「思い出しましょう」と言われても、実際にノートの前で何をすればよいのかは分かりません。

この記事では、その具体的な動作だけを書きます。白紙に書き出す手順、自分で問題を作る手順、章末問題を先に解く手順。そして答え合わせの入れ方、難しすぎるときの引き返し方、効かない場面の見分け方までを扱います。

この記事の結論

  • やることは一つ。教材を閉じて、先に思い出す。眺めてから思い出すのではなく、思い出してから確認します。順序を入れ替えるだけで同じ時間の値打ちが変わります。
  • 効果は「あとになってから」しか見えない。直後のテストでは読み返しのほうが成績が良く、2日後・1週間後で逆転した実験があります。手応えで判断しないでください。
  • 答え合わせ(フィードバック)は必須の部品です。選択式のテストでは、答え合わせをしないと誤った選択肢まで覚えてしまいます。答え合わせを入れると正答が増え、誤りの混入が減りました。
  • 思い出せない状態で粘りすぎないこと。まったく手が出ない段階では、先に教材を読んで理解してから戻ります。ただし「間違えてから答えを見る」こと自体には効果があります。
  • 万能ではありません。形を変えた問題への応用(転移)の効果量は d = 0.40 で、教科書の練習問題のような課題や、初回の出来が悪かった項目では効果が薄くなります。

「思い出す」とは、具体的に何をすることか

思い出す練習とは、手がかりだけを見て、答えを自分の頭から出す作業のことです。教科書を見ながら書き写すのは含まれません。ノートの赤シートで隠すのは含まれます。判定の基準は一つで、「いま答えが目の前にあるかどうか」です。目の前にあるなら、それは読み返しです。

この違いが成績にどう出るかを示した代表的な実験があります。大学生に説明文を読ませ、そのあと「テストを受ける群」と「同じ回数だけ読み直す群」に分け、最終テストを5分後・2日後・1週間後のいずれかで行いました。

Roediger HL, Karpicke JD. Test-enhanced learning: taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science. 2006;17(3):249-255.

5分後のテストでは読み直した群のほうが成績が良く、2日後と1週間後のテストでは逆転して、テストを受けた群が大きく上回りました。しかも読み直した群のほうが「覚えられている」という自信は高くなっていました。短期的な手応えと長期的な結果が反対を向く——この構造を先に知っておかないと、正しいやり方ほど早くやめたくなります。

3つの型を、そのまま手順にする

思い出す練習には、机の上でできる型が3つあります。教材の性質で使い分けます。

型1:白紙に書き出す(ブランクページ)

  1. 教科書とノートを閉じ、机の上から出します。見えるところに置かないことが条件です。
  2. 白紙の上端に単元名だけを書きます(例:「光合成」「二次関数のグラフ」)。
  3. タイマーを5分に設定し、その単元について思い出せることを順不同で書き出します。用語・式・図・つながり、何でも構いません。
  4. 止まっても、すぐには開きません。30秒は粘ります。ここで出てこないものが、次に復習すべきものです。
  5. 時間が来たら教科書を開き、書けなかった項目に印を付けます。書けた項目は放置してかまいません。
  6. 印の付いた項目だけを、その場で読み直します。5分の書き出しに対して、読み直しは3分程度で足ります。

型2:自分で問題を作る

  1. 教科書の見開き1つを読み、そのページから出題されそうな問いを3つ書きます。答えは書きません。
  2. 問いは「〜とは何か」ではなく「なぜ〜なのか」「〜と〜はどう違うか」の形を1つは入れます。
  3. 作った問いは付箋に書いてノートの端に貼るか、別のページにまとめます。
  4. 翌日以降、その問いに答えます。答えられなければ、該当ページに戻ります。

作問はそれ自体が読み込みを深くしますが、作って満足すると効果が出ません。必ず「答える日」を作った時点で決めます。

型3:解説を読む前に、先に解く

  1. 問題集の章末問題を、その章を読み終える前に1問だけ解いてみます。
  2. 3分考えて分からなければ、答えではなく解説の最初の1行だけを見ます。
  3. そこからもう一度、自力で続けます。最後まで自力で行けなければ、解説を全部読みます。
  4. 読んだあと、解説を閉じて、もう一度最初から自分で書き直します。この書き直しが本体です。

教科別に、どの型を使うか

教科 主に使う型 具体的な動作
社会(歴史・地理・公民) 型1 単元名だけ書いて白紙に流れを再現する。年表を写すのではなく、出来事の順と理由を書く
理科(生物・地学の用語) 型1と型2 図を白紙に描き直し、名称を入れる。教科書の図をそのまま写さない
理科(物理・化学の計算) 型3 公式を見ずに立式してから確認する。公式集を先に開かない
数学 型3 解法を思い出してから解く。5分で方針が立たないときだけ解説の1行目を見る
英語(単語・文法) 型1 訳や活用を隠して言う・書く。選択肢から選ぶ形を練習の中心にしない
国語(現代文) 型2 読んだ文章に対して「筆者はなぜこう言うのか」を自分で問い、本文の根拠を指で示す

教室での実施をまとめた系統的レビューでは、50の実験・のべ5,374人分のデータのうち、57%が中程度以上の効果を示しました。学校段階・教科・テスト形式が違っても効果の向きは安定していた一方、欧米以外の国で行われた実験は全体の6%にとどまっています。日本の教室でそのまま同じ大きさが出るかは、この研究からは言えません。

Agarwal PK, Nunes LD, Blunt JR. Retrieval practice consistently benefits student learning: a systematic review of applied research in schools and classrooms. Educational Psychology Review. 2021;33(4):1409-1453.

いつやるか——1日の中での置き場所

思い出す練習は、新しく習った直後よりも、少し時間をおいてからのほうが効きます。とはいえ複雑な設計は続きません。次の3か所に固定してしまうのが現実的です。

  1. その日の勉強を始める前の5分。前日にやった単元を白紙に書き出します。教材を開く前にやるのが条件です。
  2. 宿題を解く前の3分。これから使う公式・文法事項を、教科書を見ずに書き出します。思い出せなければ、そこで初めて開きます。
  3. 週末の20分。その週に扱った単元を、教科ごとに1枚ずつ白紙に書き出します。書けなかった項目が翌週の復習対象になります。

この3か所は、どれも「新しく何かを覚える時間」を奪いません。すでにある勉強の直前に差し込むだけです。追加の教材も要りません。間隔の設計と組み合わせる場合は、週末の20分を復習日に合わせて動かします。

学年別に、分量と始め方を変える

小学生

  1. 白紙の書き出しは3分までにします。時間を延ばすより、毎日やるほうを優先します。
  2. 「単元名だけ書いて思い出す」は難しいので、最初は保護者が問いを3つ読み上げる形にします。
  3. 答え合わせは、書けなかったものに丸を付けるだけにします。点数を付けません。

中学生

  1. 数学と英語の2教科から始めます。5教科同時には始めません。
  2. 白紙の書き出しは5分、答え合わせと読み直しを3分、合計8分を1単位にします。
  3. 定期テスト2週間前からは、型3(先に解く)を問題集の周回に組み込みます。

高校生

  1. 科目ごとに「白紙に書き出す単位」を先に決めます(英語なら文法項目1つ、日本史なら1節、化学なら1分野)。
  2. 模試の前日ではなく、模試の1週間前に白紙の書き出しを入れます。前日は確認に使います。
  3. 型2(自作の問い)を、授業中のノートの右端に書く運用にします。あとから作る時間は取れません。

答え合わせをどう入れるか——ここを外すと逆効果になる

思い出す練習には、必ず答え合わせが要ります。とくに選択式では、答え合わせをしないと誤った選択肢のほうを覚えてしまうことが知られています。大学生に文章を読ませて選択式テストを行い、即時の答え合わせ・遅延の答え合わせ・答え合わせなしの3条件を比べた実験では、答え合わせをした条件は正答が増え、後の記述式テストで誤答(先のテストのダミー選択肢)が混入する割合が減りました。

Butler AC, Roediger HL. Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition. 2008;36(3):604-616.

実務では次のように組みます。(1) まとめて答え合わせをするなら、1回の練習が終わった直後にやる。(2) 分からなかった項目は、答えを見た直後にもう一度、答えを隠して言い直す。(3) 丸付けだけで終えない——間違えた理由を一言だけ書く。この3点目が抜けると、同じ間違いが次も出ます。

なお、答え合わせは即時でも少し遅らせても、どちらでも効果が確認されています。塾や学校で解説が翌日になる場合でも、答え合わせをしないよりは大きく有利です。「すぐに解説が返ってこないから意味がない」ということはありません。

難しすぎるときに引き返す基準

思い出す練習は、まったく手が出ない段階で始めると時間の浪費になります。目安は「白紙に5分で、その単元の3割も書けない」状態です。この場合はいったん教科書に戻り、通読してから翌日に再挑戦します。ここでの3割という数字は研究から出たものではなく、現場での運用上の目安です。

一方で、「間違えること」自体を避ける必要はありません。答えられない問題に挑戦してから答えを見る条件と、最初から問いと答えを一緒に見る条件を比べた実験では、答えられなかった場合でも、先に挑戦したほうが後の学習が良くなりました。

Kornell N, Hays MJ, Bjork RA. Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition. 2009;35(4):989-998.

この2つは矛盾しません。区別は「答えを見たあとに分かるかどうか」です。答えを見れば理解できるなら、先に挑戦する価値があります。答えを見ても分からないなら、その単元はまだ思い出す段階にありません。判定は1分でできます。

効かない条件と、過大評価しやすい点

もっとも注意すべきは、「覚えた内容が、形を変えた問題に使えるか」は別の話だという点です。転移を扱った大規模なメタ分析では、テスト形式を変えた場合や応用・推論問題への転移は認められましたが、その大きさは d = 0.40(95%信頼区間 0.31〜0.50)でした。覚えたこと自体の保持に対する効果よりも小さく、しかも条件によって大きく変わります。

Pan SC, Rickard TC. Transfer of test-enhanced learning: meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin. 2018;144(7):710-756.

同じ分析では、転移がとくに弱かった条件も報告されています。刺激と反応を入れ替えた項目、初回の学習時には見たが出題されなかった内容、そして例題形式の問題です。数学の例題を思い出す練習だけで、初見の応用問題が解けるようになるとは考えないほうがよいということです。さらに、初回のテストでの出来が転移の起きやすさを強く左右していました。

もう一つ。効果の出方はテストの形式でも変わります。テスト効果のメタ分析では、選んで答える形式(認識)より、自分で思い出して答える形式(再生)のほうが効果が大きいとされています。同じ「テストをする」でも、選択肢から選ぶ練習は効果が小さくなります。

Rowland CA. The effect of testing versus restudy on retention: a meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin. 2014;140(6):1432-1463.

逆に、過小評価してはいけない点もあります。ダンロスキー(Dunlosky)らが10種類の学習法を比較して有用性を評価した報告では、思い出す練習(練習テスト)と分散学習の2つだけが最も高い評価を受けました。アデソペ(Adesope)らのメタ分析でも、練習テストは読み直しだけでなく、比較対象となった他のすべての条件より有利でした。ただしその大きさはテストの特徴・学習者・測る対象・研究の方法で変動し、一つの数字には収まりません。

また、カーピキー(Karpicke)らの実験が示したように、一度正解した項目を読み直し続けても遅延後の成績は伸びません。伸ばすのは、正解したあとも思い出し続けることのほうです。医学部1年生47人を6か月追跡した研究でも、繰り返しテストを受けた条件と繰り返し自己説明をした条件の両方が読み直しを上回りましたが、効果はテストのほう(η² = 0.33)が自己説明(η² = 0.08)より大きくなりました。

Larsen DP, Butler AC, Roediger HL. Comparative effects of test-enhanced learning and self-explanation on long-term retention. Medical Education. 2013;47(7):674-682.

この記事で言えないこと

引用した研究の多くは、大学生を対象とした実験室の研究です。教室で行われた研究も蓄積されていますが、上に書いたとおり、その大半は欧米で実施されています。日本の中学生・高校生に同じ手順を当てはめたとき、同じ大きさの効果が出るかは確認されていません。

また、比較の相手が何かによって結論は変わります。多くの実験は「思い出す練習」と「読み直し」を比べています。読み直しは、学生がもっとも多く使う一方で効果の薄い方法です。したがって「思い出す練習が最善」ではなく、「読み直しよりは有利」というのが正確な言い方です。実際、思い出す練習を概念地図の作成と比べた有名な実験に対しては、ミンツェス(Mintzes)らが方法論と前提の両面から異議を申し立てており、この比較は決着していません。

もう一つ、手順そのものの限界があります。白紙に書き出す方法は、覚えているかどうかの検出には強い一方、「なぜそうなるか」の理解が抜けていることは検出しにくいという弱点があります。用語をすべて書けても、仕組みを説明できないことは普通に起こります。理解の側を点検したいときは、書き出しではなく、自分に説明させる手順のほうが向いています。

時間あたりの効率についても、断定はできません。上の手順は読み直しよりも負荷が高く、疲れます。1日にこなせる量には限りがあり、全教科に一斉に導入すると破綻します。成績が上がることを保証する記事ではありません。

当塾の立場

この記事の手順は、塾に通わなくても実行できます。必要なのは白紙とタイマーだけで、教材を買い足す必要もありません。まずは1教科・1単元で、白紙5分の書き出しを1回やってみてください。書けなかった項目の多さに驚くはずですが、それが分かること自体が最初の成果です。

その上で塾を使う意味があるとすれば、二つの点だと考えています。一つは、答え合わせの質です。Butler らの実験が示すとおり、答え合わせは思い出す練習の部品であり、省略すると誤りごと定着します。間違えた理由を一言で言語化する作業は、一人だと最も飛ばされやすい部分です。もう一つは、手応えの悪さに耐える期間を支えることです。Roediger らの実験どおり、正しくやっているときほど直後の自信は下がります。武蔵野個別指導塾では、白紙の書き出しを授業の冒頭に固定し、書けなかった項目だけを扱う形を取っています。答え合わせと継続を外に預けたい方には、この使い方を勧めます。

出典

  1. Roediger HL, Karpicke JD (2006). Test-enhanced learning: taking memory tests improves long-term retention. Psychological Science, 17(3), 249-255. doi:10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x
  2. Karpicke JD, Roediger HL (2008). The critical importance of retrieval for learning. Science, 319(5865), 966-968. doi:10.1126/science.1152408
  3. Butler AC, Roediger HL (2008). Feedback enhances the positive effects and reduces the negative effects of multiple-choice testing. Memory & Cognition, 36(3), 604-616. doi:10.3758/mc.36.3.604
  4. Kornell N, Hays MJ, Bjork RA (2009). Unsuccessful retrieval attempts enhance subsequent learning. Journal of Experimental Psychology: Learning, Memory, and Cognition, 35(4), 989-998. doi:10.1037/a0015729
  5. Rowland CA (2014). The effect of testing versus restudy on retention: a meta-analytic review of the testing effect. Psychological Bulletin, 140(6), 1432-1463. doi:10.1037/a0037559
  6. Adesope OO, Trevisan DA, Sundararajan N (2017). Rethinking the use of tests: a meta-analysis of practice testing. Review of Educational Research, 87(3), 659-701. doi:10.3102/0034654316689306
  7. Pan SC, Rickard TC (2018). Transfer of test-enhanced learning: meta-analytic review and synthesis. Psychological Bulletin, 144(7), 710-756. doi:10.1037/bul0000151
  8. Agarwal PK, Nunes LD, Blunt JR (2021). Retrieval practice consistently benefits student learning: a systematic review of applied research in schools and classrooms. Educational Psychology Review, 33(4), 1409-1453. doi:10.1007/s10648-021-09595-9
  9. Larsen DP, Butler AC, Roediger HL (2013). Comparative effects of test-enhanced learning and self-explanation on long-term retention. Medical Education, 47(7), 674-682. doi:10.1111/medu.12141
  10. Mintzes JJ, Canas A, Coffey J, Gorman J, Gurley L, Hoffman R, McGuire SY, Miller N, Moon B, Trifone J, Wandersee JH (2011). Comment on “Retrieval practice produces more learning than elaborative studying with concept mapping”. Science, 334(6055), 453. doi:10.1126/science.1203698
  11. Dunlosky J, Rawson KA, Marsh EJ, Nathan MJ, Willingham DT (2013). Improving students’ learning with effective learning techniques: promising directions from cognitive and educational psychology. Psychological Science in the Public Interest, 14(1), 4-58. doi:10.1177/1529100612453266

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