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理系の指定校推薦で入る前に固める数学と理科—大学の授業で置いていかれないための順番|武蔵野個別指導塾

時間割の「微分積分」に慌てる前に、履修した数学と理科の科目名を1枚の表にし、式の扱い、関数、微分の入口の順で抜けを埋めていけば、冬のうちに手をつけられる量へ絞れます。
指定校推薦で理系の学部に入った人が、春の授業に置いていかれるかどうかは、入試の方式では決まりません。決めるのは、高校で何という名前の数学と理科の科目を履修し、そのどの単元が手から抜けているかです。大学は高校で学んできてほしい科目をアドミッション・ポリシーに書き、推薦の出願の要件に特定の教科の単位や評定を入れることもできます。合格の後の冬にやることは、自分の履修した科目と学部1年の授業の名前を横に並べ、線が引けないところを、数学の式の扱いから順に埋めていくことです。
ここで指定校推薦と呼んでいるのは、学校推薦型選抜のうち、大学が前もって選んだ高校の生徒だけが、その高校の校長の推薦書を携えて出願できる入り方のことです。文部科学省の実施要項はこの通り名を使わず、学校推薦型選抜の中の非公募型という書き方で触れています。理系の準備に関わる決まりは、次の4つです。
| 令和9年度大学入学者選抜実施要項の箇所 | 決まりの中身 | 理系の入学準備で読むところ |
|---|---|---|
| 第2 | アドミッション・ポリシーには、入学後の教育課程をふまえ、履修してきてほしい高校の科目などを並べて、求める学びをできるだけ具体的に書く | 学部が土台にしている高校の科目名 |
| 第2 | カリキュラム・ポリシーには、どんな教育課程でどう学ばせるかを書く | 1年の授業の並び |
| 第5の2(2) | 大学が重要と見る教科・科目を指定し、その単位の修得や一定水準以上の評定を出願の要件にできる | 指定校の条件欄にある数学・理科 |
| 第3の1(3)② | 学校推薦型でも、数理的思考力を含む力を、調査書・推薦書とは別の方法で最低一つ評価する | 推薦でも数理の力は見られている |
よくあるのは、合格の知らせから一週間ほどたった冬の夜、大学から届いた入学の案内をめくっていて、1年生の時間割の欄に「微分積分」の4文字を見つけ、手が止まるという場面です。最後に微分の問題を解いたのは夏の終わりで、数学の教科書はもう棚の奥にあります。教室では、一般選抜に向かう同級生が昼休みにも問題集を広げています。あの背中との差が、そのまま4月に開くのではないか。その不安は、正体を紙の上で確かめれば、手の届く大きさに縮みます。
要項が大学に書かせている「高校で何を学んできてほしいか」
令和9年度の大学入学者選抜実施要項は、その冒頭で、大学の入試を高校の教育と大学の教育を接続する教育の一環だと位置づけています。入試は門であると同時に、高校と大学の継ぎ目でもあるという考え方です。その継ぎ目の形を大学に言葉で示させているのが、第2のアドミッション・ポリシーの決まりです。
要項は、大学に三つの方針を順に組み立てさせます。卒業までに身につける力をディプロマ・ポリシーに書き、そこへ向かう教育課程と学び方をカリキュラム・ポリシーに書き、その教育を受ける学生をどう選ぶかをアドミッション・ポリシーに書く、という順番です。そのうえでアドミッション・ポリシーには、入学後の教育課程をふまえ、履修してきてほしい高校の科目や取得が望ましい資格を並べるよう求めています。並べる目的は、「何をどの程度学んできてほしいか」を可能な限り具体的に示すことです。理系の学部が数学Ⅲや物理の名前を挙げているなら、入学後の授業がその科目を土台に組まれているという合図として読めます。
出願の場面にも同じ考え方が出てきます。要項の第5の2(2)は、大学が重要と見る教科・科目を指定し、その単位を修得していることや、一定の水準以上の評定を取っていることを、出願の要件として求めてよいとしています。理系の学部の指定校の条件欄に、数学や理科の科目名や評定の数字が入っていることがあるのは、この決まりがあるからです。
学校推薦型選抜そのものについては、第3の1(3)②が、言語能力と数理的思考力を含む大学教育に必要な力をみるよう定めています。そのために大学は、高校の成績などの出願書類に頼るだけでなく評価の方法を最低一つ加え、そのことを募集要項に書かなければなりません。推薦で通った人は、書類のほかにも何かの方法で力を見られて、そのうえで通っています。
自分が何を履修したかの記録は、調査書の「各教科・科目等の学習の記録」の欄に残ります。科目名は指導要録にもとづいて書かれ、学年ごとの評定と、修得単位数の計が並びます。図1のように、大学の側の書類3つと、この履修の記録を照らし合わせると、入学までに埋める単元が浮かび上がります。

照らすときの物差しになるのが、高等学校学習指導要領の科目名と単元名です。数学で全員が履修するのは数学Ⅰだけで、数学Ⅱ・数学Ⅲ・数学A・数学B・数学Cは、高校の教育課程と自分の選択によって履修するかどうかが分かれます。微分は数学Ⅱの「微分・積分の考え」で初めて出てきますが、そこでは三次までの関数が中心で、導関数を求めるのに要る極限は直観的に扱うと定められています。極限を正面から扱い、三角関数・指数関数・対数関数の導関数まで進むのは、数学Ⅲの「極限」「微分法」「積分法」です。理科で全員が履修するのは、「科学と人間生活」と基礎のつく科目1つの組み合わせか、基礎のつく科目3つで、物理・化学・生物・地学という名前の科目は、高校の教育課程や本人の選択で履修した人だけが学びます。
高校の教育課程も学部の時間割も、組み合わせごとに違う
同じ理系のクラスにいても、高校で学んだ中身は高校ごとに違います。どの学年に何単位の数学を置くか、数学Ⅲを全員に課すか選択にするか、物理と化学と生物のどれを選ばせるかは、それぞれの高校が教育課程として決めます。調査書の学習成績概評が、類型や科で教育課程が違うときには類型別・科別に区切って示すことになっているのも、同じ学年の中でさえ学んだ科目が違いうるからです。評定も、5段階で表すことは共通でも、決め方の細目は各学校が定めます。数学Ⅱの評定4が、どの単元をどこまで身につけた4なのかは、その高校の評価の方法を見ないとわかりません。
高3の授業がこれからどこまで進むかも、高校ごとに違います。数学Ⅲの積分法や、物理・化学の後半の単元を2学期や3学期に学ぶ教育課程なら、卒業までの授業がそのまま入学の準備になります。高3で数学や理科の時間が少ない教育課程なら、その分は自分で補う計画が要ります。どちらに当たるかは、自分の高校の教育課程表と、各科目の年間の授業の予定を見ればわかります。
大学の側も、学部・学科ごとに違います。アドミッション・ポリシーにどの科目の名前を挙げているか、1年の必修の授業に何を置いているか、物理を履修していない人のための授業を用意しているかは、その学部が出している書類で確かめるほかありません。同じ大学の中でも、学科が変われば1年の時間割は別物です。入学前の課題が出るかどうかと、その中身も、学部ごとに違います。だから読むのは、自分が指定校の枠で受けた学部・学科の書類だけです。友だちの進む学部の話や、ほかの大学の時間割を自分の物差しにしないでください。
自分の場合を知るために手元にそろえる物は、次の五つです。
- 自分の高校の教育課程表(学年ごとの科目名と単位数の表)。手元に無ければ、担任の先生に見せてもらいます。
- 通知表3年分。数学と理科の科目名と、学年ごとの評定を読み取ります。
- 指定校の一覧の条件欄と、高校に届いた大学の書類。数学や理科の科目の指定が入っていたかを確かめます。
- 大学の学部のアドミッション・ポリシーとカリキュラム・ポリシー。公開されていれば、授業の一覧やシラバスも読みます。
- 進路の先生や数学・理科の先生と話した内容のメモ。
大学の授業の中身について知りたいことが出てきても、指定校の書類は高校に届いているので、大学に問い合わせる前に、まず高校の先生に相談します。先生が書類の中で答えを先に見つけてくれることがあります。
合格の冬にやる手順—表を1枚作ってから数学に戻る
手順1は、履修の表を作ることです。A4の紙を横にして、左に「高校で履修した科目」、右に「学部1年の授業」の列を作ります。左の列には数学と理科だけを学年の順に書き、科目名は通知表の書き方のまま写して、学年ごとの評定を添えます。高3で授業がまだ続いている科目は、空けずに「履修中」と書いて入れます。
手順2は、右の列を埋めることです。カリキュラム・ポリシー、入学の案内の時間割、授業の一覧から、1年で履修する授業の名前を写し、必修には丸をつけます。名前だけでは中身がわからない授業は、シラバスがあれば最初の数回の内容まで読みます。
手順3は、線を引くことです。右の授業一つずつについて、土台になる高校の科目へ線を引きます。たとえば「微分積分」という名前の授業なら、数学Ⅱの「微分・積分の考え」と、数学Ⅲの「極限」「微分法」「積分法」へ。「線形代数」という名前の授業が時間割にあれば、数学Cの「ベクトル」へ。「力学」という名前の授業なら、物理基礎の「物体の運動とエネルギー」と、物理の「様々な運動」へ。線が引けない授業と、線の先の評定が低い科目が、入学までに埋める場所です。
たとえば、数学は数学Ⅱと数学Bまで履修して数学Ⅲは選ばず、理科は物理基礎と化学基礎と化学を学んだ人が、時間割に「微分積分」と「力学」を見つけたとします。微分積分から伸びる線は数学Ⅱには届きますが、数学Ⅲの行は空欄です。力学から伸びる線は物理基礎に届き、物理の行は空欄です。この人の冬の宿題は、数学Ⅲの極限と微分法の入口、物理の運動の単元、という2本に決まります。不安の大きさが、教科書の章の数に置き換わります。
手順4は、数学を三段の順で戻ることです。図2のように、式の扱い、関数、微分の入口の順に進みます。微分は関数に対する操作で、その関数は式で書かれているので、式が崩れていると微分の答案も崩れます。微分で間違えたつもりの答案を見直すと、展開や因数分解の行で手が滑っていることがあります。科目名と単元名で言えば、式の扱いは数学Ⅰの「数と式」と数学Ⅱの「いろいろな式」です。関数は数学Ⅰの「二次関数」と数学Ⅱの「指数関数・対数関数」「三角関数」、微分の入口は数学Ⅱの「微分・積分の考え」から数学Ⅲの「微分法」へと続きます。

どこから始めるかは、教科書を閉じて、次の三つを紙に書けるかで決めます。(x+3)(x-4) を展開する。y=x²-6x+5 のグラフの頂点を求める。f(x)=x³-3x を微分し、f’(x) が0になるxを求める。答えは順に x²-x-12、点(3, -4)、f’(x)=3x²-3 で x=1 と x=-1 です。一つ目で止まったら数と式から、二つ目で止まったら二次関数から、三つ目で止まったら微分・積分の考えから始めます。三つとも書けたら、数学Ⅲの極限へ進みます。
手順5は、理科を学部が使う科目から固めることです。物理を使う学部なら、数学の微分と並べて進めます。学習指導要領は、数学Ⅲの微分法に関連して、直線上や平面上を動く点の速度と加速度を扱うとしています。物理基礎で公式として覚えた速度と加速度の関係を、微分の言葉で言い直せるかどうかが、数学と物理の継ぎ目です。化学を使う学部なら、化学基礎の「物質量と化学反応式」を、モル質量やモル濃度まで含めて先に固めます。物質量の計算が揺らいだままでは、化学の「物質の状態と平衡」「物質の変化と平衡」の計算に入れません。生物を使う学部なら、生物の「生命現象と物質」「遺伝情報の発現と発生」が入口です。履修していない科目は、基礎のつく科目の教科書の1章から読みます。
手順6は、高3の授業と定期テストを、卒業まで準備の一部として受けることです。大学に入学する資格は高校の卒業などで得るものなので、残りの単位の修得はそのまま入学の条件につながります。数学Ⅲや物理の後半を高3で学ぶ教育課程なら、その授業のノートが、表の空欄を埋める一番近い教材になります。
「指定校の理系はついていけない」をほどく三つの思い込み
一つ目は、指定校で入ると理系の授業にはついていけない、という思い込みです。入試の方式だけで、入学後に追いつけるかどうかは決まりません。要項は学校推薦型選抜にも、数理的思考力を含む力を書類のほかの方法で見るよう求めていて、合格した人は大学の条件と評価を通っています。差が出るとしたら、それは方式の差ではなく、履修した科目と抜けた単元の差です。図3の分かれ道で、自分がどこから始めるかを決めてください。

二つ目は、評定平均が高いから数学も大丈夫、という思い込みです。調査書の全体の学習成績の状況は、すべての教科・科目の評定を足して評定の数で割った値なので、数学の弱さはほかの教科の高い評定に紛れます。たとえば評定が全部で30個あり、その合計が126なら、全体は4.2です。そのうち数学の5個が3・4・3・4・3なら、数学の教科の学習成績の状況は、17を5で割って3.4になります。調査書には教科ごとの学習成績の状況の欄もあるので、理系の準備では、全体の値ではなく数学と理科の教科の値と、その中の科目ごとの評定を見ます。
三つ目は、数学Ⅲを履修していないと理系の学部では無理だ、という思い込みです。数学Ⅲの履修を出願の要件にするかどうかは、大学が決めて書類に書きます。要件に入っていなかったのなら、履修していないことは入学の妨げではなく、入学までの宿題の一覧に一行が増えるということです。数学Ⅱの「微分・積分の考え」で三次までの関数の微分にはすでに触れているので、まったくの白紙から始めるわけでもありません。足りないのは極限の扱いと、三角関数・指数関数・対数関数の導関数で、範囲は教科書の目次で数えられます。
高校の先生に確かめる質問
進路の面談には手順1の履修の表を持っていき、次の問いを順に聞いてください。科目の名前を挟んで話すと、先生の答えも科目の名前で返ってきます。答えが「高校ではわからない」だったときは、その問いに印をつけ、大学の書類のどこを読めばよいかだけを聞き直します。
- 私が出願する学部の条件欄に、数学や理科の科目の指定や、教科の評定の条件は入っていましたか。
- 3年間で私が履修した数学と理科の科目名と単位数を、教育課程表で一緒に確かめていただけますか。
- 高3の2学期と3学期の数学と理科の授業は、どの単元まで進む予定ですか。
- 履修していない数学Ⅲや物理の教科書を、卒業までに手に入れる方法はありますか。教科の先生に質問できる時間はありますか。
- 大学から数学や理科の入学前の課題が届いたとき、わからない所を高校の先生に聞いてもよいですか。
- 同じ学部・学科に進んだ卒業生から、1年の授業の様子を聞ける機会はありますか。
- 卒業までに単位を落とさないために、高3の残りの授業と定期テストで気をつけることは何ですか。
個別指導で確かめること
塾では、通知表から作った履修の表と、学部1年の授業の一覧を机に並べ、線の引けない単元を一緒に探します。そのうえで、展開や微分の問題をその場で解いてもらい、どの行で手が止まるかを、書いた答案で確かめます。定期テストの答案が残っていれば持ってきてください。間違いの原因が単元の名前より一つ手前の計算にあることは、答案を見て初めてわかります。評定の表の数字と答案の中身が食い違うときは、答案の方を信じて冬の計画を組み直します。
まとめ
合格の通知は、出願の条件と大学の評価を通ったという知らせで、1年の授業の中身まで約束する紙ではありません。そのあいだを埋めるのが、冬に作る1枚の表と、教科書の目次に引いた線です。時間割の「微分積分」の横に、数学Ⅱと数学Ⅲの単元名を自分の字で書き込めた人から、4月の1限は怖い時間ではなくなっていきます。
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