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数学の個別指導で塾が担うこと—単元の診断と戻る勇気|武蔵野個別指導塾
方程式や関数で止まったとき、どの学習内容へ戻るかをノートから探す手順を示します。戻る範囲と元の問題へ復帰する条件を具体化し、授業での支援と家庭の役割を相談する際の道案内にします。

数学の個別指導で塾が担うこと—単元の診断と戻る勇気
いまの単元が難しいとき、どこへ戻りますか
よくあるのは、塾の受付で次の相談日を決める際、保護者が方程式の答案を開き、お子さまが小さな声で「分数が出ると無理」と話す場面です。整数だけの問題には途中式が並んでいるのに、分数を含む問題では最初の行が空いています。「方程式をもっと練習したほうがよいのか」「分数から全部やり直すのか」。その間で迷うと、家で何をすればよいかも定まりません。
ここで必要なのは、苦手な単元の名前を増やすことではなく、解き進めるうえで止まる位置を探すことです。分数の計算そのものに困っているのか、等式の両辺を同じように扱う意味が曖昧なのか、それとも解き方を選ぶところで迷っているのか。同じ空欄でも、用意する練習は変わります。
数学の個別指導を考えるときは、説明のわかりやすさに加えて、つまずきをどう確かめ、どこへ戻り、何を確かめて先へ進むのかに目を向けてください。戻る範囲と終わりの条件が見えると、復習は終わりのないやり直しではなくなります。この記事では、その判断を生徒自身の学習と塾の指導の両側から整理します。

単元名だけでは、つまずきの理由を捉えきれません
数学の問題には、いくつかの学習内容が重なっています。たとえば x/3 + 2 = 5 を解くには、等式を保ちながら操作することに加え、x/3 が x を3で割った数だと読めることが必要です。答えが誤っていたという結果だけを見て「方程式が苦手」とまとめると、どちらを確かめればよいかが隠れてしまいます。
途中式を見ると、候補を絞れます。両辺から2を引いて x/3 = 3 まで進めたなら、その操作はできています。そこから x = 1 と書いた場合は、両辺に何をすれば x だけを残せるかを確認します。ただし、この答案だけで「割り算を理解していない」と決めるのは早計です。見直すと自分で直せる場合も、式の読み方を尋ねると説明できる場合もあります。
一方、分母をなくすつもりで x + 2 = 15 とした場合は、左辺の2にも3を掛ける必要があることを扱います。このとき、分数の足し算を大量に練習しても、等式全体を扱うつまずきとは離れてしまいます。必要なのは、間違いに名前を付けるだけで終えず、その見立てに合う小さな確認問題を用意することです。
「誤解を見つけた後、何を教え直すか」までをつなげて考える参考になるのが、診断テストに基づく指導の報告です。概念の捉え直しと足場かけを用いた取り組みでは、正答が17.6%から86.6%へ変化しました(Fikriyahほか・2025)。この分野には海外の小中学生を対象とする研究が多く、インドネシアの26名を調べたこの報告も、同じ伸びを各家庭に約束する材料にはなりませんが、誤解を探して支援につなぐという順序を考える手掛かりになります。
段階的な手助けとは、すべての手順を代わりに進めることとは違います。等式の両辺を囲って操作する範囲を示す、最初の途中式だけを示す、次にはその印や例を外す、といった進め方が考えられます。どの手助けで進めたかを残しておけば、次に何を減らすかも選べます。正解したかどうかと、どれほど支えが必要だったかを一緒に見るわけです。
「説明を聞けばわかる」と「自分で始められる」の間にも違いがあります。解説では、使う考え方も計算する順番も既に選ばれています。自分で解くときは、それらを問題文から選ぶ必要があります。そのため、解説を聞いた直後にうなずいたことだけで、戻る学習が済んだとは判断しません。例を閉じた後、最初の一行を自分で書けるかを確かめます。
診断という言葉は大げさに聞こえるかもしれませんが、ここでいう診断は、学習上のつまずきを見立てることです。能力に固定した名前を付ける作業ではありません。「符号が苦手」ではなく「引く数が負のときに、式を書き換える段階で止まる」と表せば、確かめる内容が明確になります。できる部分まで一緒に消してしまわないための観察でもあります。
また、同じ誤答が続いていても、毎回同じ理由とは限りません。符号の意味を迷っていた段階から、意味は言えるけれど途中式を省くと抜ける段階へ変わることも考えられます。見た目の誤りが同じだからと、説明を同じ形で繰り返すだけでは、この変化を拾えません。いま必要なのが意味の確認なのか、書き方の整理なのかを、解く過程から見直します。
戻ることへの抵抗には、復習の終わりが見えない不安も含まれます。前の学年の教材を渡されただけでは、いま学んでいる関数や図形にどうつながるのかがわかりません。「この計算を使って、グラフ上の点の座標を求め直す」と目的を添えれば、戻る学習と現在の課題がつながります。過去へ戻すこと自体ではなく、現在の問題へ帰ってくるところまでが指導の範囲です。
今日のノートから、戻る場所を探す手順
まず、学校で使っている問題集、直近の答案、白紙のノートを机に置いてください。新しい教材を増やす前に、実際に止まった問題を選びます。ここでは、短く区切って取り組める進め方を示します。時間が来たら無理に最後まで進めず、止まった行に印を付けて終えて構いません。その印が、塾で相談するときの材料になります。
最初の3分で、直近の問題から「解けなかったが、問題文は読めるもの」を1問選びます。難しそうな問題を並べる必要はありません。余白に、求めるものと与えられているものを短く書きます。文章を読んでも何を求めるかがつかめないなら、その段階で止めて、読めなかった言葉や数量の関係を残します。計算へ進めない理由を、そのまま記録してください。
次の5分で、答えを見ずに解き直します。途中式を消して整えるより、考えた順に残すことを優先します。手が止まったら「次の操作が選べない」「分数の計算で迷う」「図のどの角を使うか決められない」のように、いま起きていることを書きます。「全部わからない」と感じたら、最後に意味がわかった式や文に線を引くだけでも十分です。
ここで最初の自己確認をします。問題文から写した数字、符号、求める文字が合っているかを、元の問題と指で対応させてください。写し間違いを直して進めたなら、そのことを記録します。書き写す段階の問題と、考え方の問題を分けておくと、復習の内容を広げすぎずに済みます。見直しで直った部分にも、短い印を残しましょう。
次の5分では、問題集の解説を最初から最後まで写すのではなく、自分が止まった箇所に対応する一行を探します。その一行について「何をしたか」「なぜその操作をしたか」を書きます。x/3 = 3 から x = 9 なら、「両辺を3倍した。左辺を x にするため」となります。説明が読めても理由を言えないときは、その一行を相談する場所として囲みます。
次に、いまの問題から一部分だけを取り出して確かめます。x/3 = 3 で迷ったなら、まず 9/3 の意味を言い、その後で「ある数を3で割ると3になる。その数は何か」と考えます。9を入れれば成り立つとわかるのに式の操作で迷うなら、割り算の意味と等式の操作を区別して相談できます。自分一人で原因を確定しようとせず、何ならできたかを集めてください。
取り出した部分が難しいときは、教科書や問題集の該当する説明へ戻ります。目次で分数、等式、比例などの項目を探し、いま確認したい操作に近い例を選びます。最初のページから順番に埋める必要はありません。教材は、つまずきを確かめるための元の問題、意味を読み直す説明、支えを外して試す練習問題、という役割で使い分けます。
意味を読み直す時間は、ひとまず5分で区切ります。例の途中式を紙で隠し、次の一行を予想してから開いてください。予想と違ったときは、計算結果だけでなく、操作の対象を見比べます。式全体に掛けるのか、一部の項を計算するのか、括弧の中を先に見るのか。ここが読めないまま答えだけを覚えそうなら、その日は質問の文を作って終えます。
もう一つの自己確認は、答えを元の条件へ戻すことです。x = 9 なら、最初の式に入れて 9/3 + 2 = 5 となるか確かめます。計算を同じ順序でもう一度繰り返すだけでなく、求めた答えが問題の条件を満たすかを見る方法です。左辺と右辺が合わなければ、答えを消す前にどの途中式からずれたかをたどってください。
部分の練習ができたら、最初に選んだ問題へ戻ります。解説を閉じ、白紙の場所で最初から解き直してください。ここを省くと、分数だけはできたのに方程式ではまた止まる、という違いを見落とします。部分の練習と元の問題の両方を残し、同じ考え方をどこで使ったか、矢印で結びます。戻った学習を、現在の単元へつなぎ直す段階です。
最後の3分で、ノートに「一人でできたこと」「助けがあればできたこと」「次に確かめること」を書きます。「わかった」だけで終わらず、「例を閉じて両辺から2を引けた」「分母をなくす操作は解説を見た」のように書くと、後で読み返せます。長い感想は不要です。実際の途中式を指せる言葉にしておくのがこつです。
翌日は、同じ単元から数値の違う問題を1問選び、5分を目安に取り組みます。これがさらに別の自己確認です。昨日の答えを覚えていることと、操作を選べることを区別するため、解説やノートを閉じて始めます。終わったら、最初の操作を選んだ理由を一言添えてください。できなければ昨日の全部を繰り返さず、新しく止まった場所を記録します。
図形や関数でも、この流れを使えます。関数なら、座標を読むこと、式に数を入れること、変化の様子を捉えることを分けて確かめます。図形なら、条件を図に書き込めるか、使いたい性質を言えるか、その性質を使う条件がそろっているかを見ます。単元名を丸ごと復習の対象にせず、元の問題へ戻れる大きさに切り分けてください。
慣れてきたら、解き方が違う問題を隣に置いて、使う操作を選ぶ練習もしてみます。たとえば x + 3 = 9 と x/3 = 9 では、文字だけを残すための操作が違います。答えを出す前に、前者は両辺から3を引き、後者は両辺を3倍すると書きます。続けて同じ型を解くとできるのに、型が変わると止まるなら、その違いをノートに残します。
ただし、確認のために難しい問題を次々と足す必要はありません。数値を変える、式の並びを変える、文章から式を作る、という変更を一度に入れると、どこで困ったかを捉えにくくなります。まずは数値だけを変え、できたら別の形へ進みます。問題集のどれが対応するか迷う場合は、次の授業で確認用の問題を選んでもらってください。
一人で進めるときの終わり方も決めておきます。同じ行で止まり続けたら、「この行まではできた。次の行で、なぜこの操作をするか知りたい」と質問を書きます。白紙のまま持っていくより、自分の到達点を添えるほうが話を始めやすくなります。質問を具体的にするところまでできれば、その日の学習には次へつながる成果が残っています。

個別指導が引き受ける判断と、家庭に残す余白
個別指導で塾が担う中心は、問題を説明することだけではありません。答案と生徒の言葉を照らし合わせ、戻る内容を絞り、教材を選び、支援を減らし、元の単元で確かめることです。この流れを生徒や保護者にも伝えれば、「今日は前の内容をした」という報告から、「現在の課題に向けて何を整えたか」という報告へ変えられます。
最初に塾が持つべきなのは、原因についての仮説を確かめる責任です。方程式の誤答なら、似た式をそのまま追加する前に、等式の意味、必要な計算、操作の選択を分けて見ます。本人に途中式を説明してもらい、少し形を変えた問題で反応を確かめます。説明できないことだけを理解不足の証拠にせず、図や指差しでも考えを示せるようにします。
たとえば、分母をなくすときに一部の項へ掛け忘れた場合、塾側は左辺全体を括弧で囲む方法を示せます。その印があればできたのか、印を外してもできたのか、別の式でも操作の範囲を選べたのかまで見ます。「分数の復習が必要」と広くまとめるより、何を補えば現在の問題に取り組めるかが具体的になります。
次に塾が持つのは、戻る範囲と戻り終える条件です。条件は、問題数をこなしたことだけには置きません。「必要な操作を選べる」「その操作の対象を示せる」「元の問題で使える」といった姿を設定します。自力でできる部分は残し、まだ支えが要る部分だけを次回へつなぎます。進みが遅いと感じるときほど、何を待っているのかを言葉にする必要があります。
学校の授業が先へ進んでいると、復習だけに時間を使うことにも不安が出ます。そこで塾には、目前の課題に取り組む時間と、そこへつながる土台を補う時間を組み合わせる役割があります。いま扱う問題に必要な範囲から戻り、復習で整えた操作を同じ授業の中で使います。広い範囲の抜けが見えた場合も、優先順位を示して取り組む順を相談します。
復習の効果が見えないときには、塾側の見立ても点検します。同じ説明で止まり続けるなら、前提としていた理解を別の問いで確認し直します。分数の意味を補っても方程式に戻れないなら、等式の操作にも困っていないかを見る、といった修正です。生徒の努力量だけを増やす前に、支援する場所が合っているかを検討し、その変更を本人にも伝えます。
教材の調整も塾が引き受ける部分です。説明を読み取ること自体に負担があるなら、途中式を省かない例を用意します。途中まで一人で進めるなら、できる行は本人に任せます。毎回同じ支援を続けるのではなく、どこまで自分で担えるかを見て減らします。生徒が教材選びからすべて背負うと、できなかったときに方法の問題まで自分の能力の問題として受け止めかねません。
家庭には、専門的な原因の判定までお願いする必要はありません。取り組む場所と時間を相談する、学校の答案をなくさず持っていけるようにする、困った行に印を付けておくよう声を掛ける。その程度でも、塾が判断するための材料はそろいます。保護者が解説できない内容だからこそ、答案と本人の言葉をそのまま渡して構いません。
声を掛けるなら、「なんでまた間違えたの」より「どの行から困った?」が話を具体的にします。お子さまが答えたくないときは、すぐ聞き直す必要もありません。「印を付けたところを次の授業で見てもらおう」と区切れます。家庭での会話が毎回採点の場になると、途中のノートを見せにくくなります。途中のまま渡せる余地を残してください。
進み具合は、単元名に丸を付けるだけでは伝わりません。塾への確認では「今回止まった箇所」「授業で用いた支援」「支援を外した結果」「家庭で行うこと」「次回の確認」の順に聞くと、動きが見えます。たとえば「両辺を3倍するときに一部の項へ掛け忘れた。括弧で全体を囲むとできた。印なしでは再確認が必要。家庭では授業の問題を解き直し、次回は数値を変えて確認する」とまとめられます。
家庭から伝える情報も、正誤の数だけでなくて構いません。「取り掛かる問題を選ぶまで迷った」「例を開かずに始めたが、途中で見た」「昨日はできた操作で今日は止まった」といった観察が役立ちます。塾では、その報告を実際の答案と照らし合わせます。家庭での様子と授業中の様子が違うときも、どちらかを誤りとせず、問題の形や支援の有無を比べます。
この記録があると、保護者は「いつまで分数をするのか」ではなく「印を外してできるかは、次に確かめるのですね」と見通しを持てます。生徒も、前の内容へ戻ったことだけで自分を評価せず、支援が減った点を捉えられます。点数以外の記録は点数を軽く扱うためではなく、その結果につながる学習の過程を具体的に見るために使います。
受付で相談する際にも、答案と一緒にこの記録を示せば、話の焦点は変わります。「苦手だから戻る」ではなく、「ここは一人で進めたので、次はこの支援を外す」と話せます。戻った後の出口を塾側が説明し、本人が実際の問題で確かめる。その往復があれば、復習は過去の不足を並べる時間ではなく、今後の学習を組み立てる時間になります。
個別指導を考えるときのよくある疑問
Q. 前の内容に戻ると、学校の授業にますます遅れませんか。
A. 戻る範囲が広すぎると、現在の課題に触れる時間は減ります。だからこそ、必要な箇所を絞り、元の問題へ帰る条件を決めます。関数の式への代入で負の数の計算に困るなら、まずその計算を取り出し、できたら関数の式で使います。「戻るか進むか」だけで選ばず、戻った内容を現在の問題に使う流れを塾に尋ねてください。広い復習が必要な場合は、その理由と優先順位を共有してもらいましょう。
Q. 説明を聞いて正解できたら、次の内容へ進んでよいですか。
A. 正解は前進ですが、どんな助けがあったかも見ます。最初の操作を教えてもらった場合と、自分で選んだ場合は、次に確かめることが違います。例を閉じて解く、数値の違う問題で試す、翌日に最初の一行を書く、といった確認を挟んでください。その確認で止まっても、授業が無駄だったとは限りません。助けが必要な箇所が絞れたなら、次の指導を具体的に調整できます。
Q. 塾に任せると、家庭では数学に触れないほうがよいのでしょうか。
A. お子さまが相談したいときに、一緒にノートを見ることはできます。ただし、原因の判定や別の解き方の追加まで家庭が担う必要はありません。「授業ではどのように確かめた?」と記録を見るところから始めます。説明が食い違ったら、どちらが正しいかをその場で決めず、式を残して塾へ相談してください。家庭で確保したいのは、できない箇所を隠さず次の授業へ持っていける状態です。
戻る一歩に、先へ進む条件を添える
数学で前の内容へ戻ることは、いままでの努力を取り消すことではありません。既にできる部分を残しながら、次の問題を解くために必要なところを整える学習です。そのためには、つまずいた行、用いた支援、自力でできたこと、次に確かめることをつなげて見る必要があります。
個別指導を相談するときは、答案を1枚持ち、「どこへ戻り、何ができたら元の単元へ進めますか」と尋ねてください。復習の範囲と出口が具体的になれば、家庭の声掛けも、生徒が今日取り組むことも決めやすくなります。戻った先で覚え直した操作を、最初に止まった問題で使うところまで確かめましょう。復習の出口は、元の単元で自力の一行を書ける地点に定まります。
参考文献
- Fikriyahほか(2025)。診断テストによる誤解の特定、概念変化と足場かけを用いた指導。https://consensus.app/papers/details/a0f1def71e73520f9fe469dab56399bb/
本気になった日が、入塾の日。
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