予想に合わない探究の結果も、結論を支える材料として記録します。研究では、予想外のデータの扱い方と、期待した効果が出なかった結果を報告する意義が検討されています。家庭では、当初の予想、実際の結果、その結果をどう扱ったかを並べて書きます。
子どもの実験が予想どおりに進まないと、「やり直して、きれいな結果にしよう」と言いたくなります。けれども、きれいに見えることと、起きたことを説明できることは違います。予想から外れた点を消す前に、その結果が何を問い返しているかを見ます。
この回は、仮説と合わなかった結果や、期待した効果が確認されなかった結果を、探究の中でどう扱うかを考えます。論文を読むと、予想外を見つけること、原因を考えること、残すか取り直すかを判断することが分かれて見えてきます。
1. 論文を役割で並べる
Crujeiras-Pérez ほか(2019)は、学校の探究型実験課題を追跡し、生徒が予想外の結果を確かめる対応に進展が見られたと報告しています。初めの課題では異常として認識しない対応や、認識しても原因を説明できない対応が多く、後の課題では確かめる力の向上を示す対応が多く見られました。予想外の結果を扱う力そのものを調べる役割の論文です。[1]
Adams ほか(2024)は、大学生が予想外のデータを見たときの考え方を調べ、原因について作る説明が、そのデータを残す、除く、取り直す、影響を軽減するといった判断に関わると報告しています。学生が異常の原因として考えた説明によって、その後に選ぶ対応が違っていました。予想外を処理する判断の中身を見る役割の論文です。[2]四本の研究を読み合わせます。対象は中等学校の生徒と大学生による異常データの解釈、特別支援教育と物理教育における効果未確認の研究報告です。学校の課題を継続して観察する研究、大学生が考える過程をその場で聞く研究、報告される研究全体の偏りを論じる研究では、根拠の作り方が違います。観察された対応の変化と、公表の意義を論じた主張は、それぞれの研究の役割に沿って読みます [1][2][3][4]。
Cook ほか(2017)は、特別支援教育研究で期待した効果が確認されなかった結果を取り上げ、期待した関係や良い効果が得られなかった研究も公表する重要性を論じています。そうした結果が公表されないと、研究全体が肯定的な方向へ偏り、不完全な情報に基づいて方針や実践を考える問題が生じます。結果を隠さず報告する意義を整理する役割です。[3]
Conlin ほか(2019)は、物理教育研究で期待した効果を結論づける証拠が十分でなかった結果についても、教え方や学びの理解に貢献すると論じています。有意かどうかだけで評価するより、新しい理解を生む可能性に注目する立場です。期待と違う結果から何を学ぶかを考える役割の論文です。[4]
2. 予想外の値は間違いとして消してよいですか?
まず、その値が予想とどう違うかを書きます。Crujeiras-Pérez らの研究では、異常を見つけているかどうかと、その原因を説明できるかどうかが、生徒の対応を読む点になっていました。予想に合わない値があるという発見と、なぜそうなったかという説明を分けて扱います。[1]
家庭で探究のノートを読むときは、「この値は違う」だけで終わらせず、何と比べて違うのかを尋ねます。もとの予想を記していなければ、あとから説明を合わせたのか、予想に反した結果を考えたのかが区別しづらくなります。予想と観察を別々に書いて、見比べる形を作ります。
Adams らが調べた学生は、予想外の原因の説明に応じて、データをどう扱うかを選んでいました。[2] 自分の探究でも、残すと決めた理由、取り直すと決めた理由を記します。外れた値を残すことだけを正解にせず、扱いを決めるまでの筋道を報告の一部にします。
3. 変化が見られなかった結果にも意味がありますか?
期待した変化が見られなかった結果は、研究全体を読むための情報です。Cook らが問題にしたのは、良い結果ばかりが公表されることで、研究の集まりが偏ることでした。目立つ成功だけを集めると、次の判断に使う情報が欠けます。[3]
自分の報告書でも、予想を支える結果だけを選ぶのではなく、支持しなかった結果を同じ説明の中に置きます。「こうなると思いました。しかし、得られた結果はこうでした」と区切って書きます。予想が外れたことを本人の資質の評価に置き換えず、調査で得た情報として読みます。
4. 結果と反省はどう書き分けますか?
観察したこと、そこから考えたこと、次に確かめたいことを分けます。たとえば、「予想と違った」は結果の比較です。「この点が原因だと考えた」は解釈です。「条件を変えてもう一度確かめる」は次の計画です。それぞれが同じ文に混じると、実際に起きたことと本人の推測が読者に伝わりにくくなります。
Adams らの研究が扱うのは、まさに原因の説明とデータの扱いの関係です。[2] 報告では、原因の候補を考えた段階と、それを確かめた段階を区別します。候補を思いついただけの箇所を、解決済みの原因として書き換えず、いまの判断をそのまま表します。
説明の構成を練習するなら、小論文の型——主張・反論・再反論をどう書くかも合わせて読みます。探究では、都合の悪い材料も読者に見せ、その材料を受けて主張をどこまで置くかを決めます。意外な結果は、文章の外へ捨てる物ではなく、説明の中で位置を決める物です。
【反証】この回が言えないこと
予想外の値と、期待した効果が確認されなかった研究は同じではありません。前者の扱いを調べた学校の研究と大学生の研究、後者の公表を論じた教育研究を合わせて読んでいます。[1][2][3][4] 記録するだけで探究の質が上がるという因果効果は、この組合せから言えません。
課題間の対応の変化が観察されたことから、予想外に出会うだけで深い考察が始まるとは言えません [1]。また、効果が確認されなかったことは、効果が絶対に存在しない証明ではありません。大学生の判断を日本の高校生全員に広げたり、失敗結果の報告が入試で評価されると保証したりはできません。
実務——家でできる 3 つの確認
最初に、実験や調査の前に書いた予想を読み直し、実際の結果をその隣に置きます。都合の良い結果だけを囲まず、合わなかった箇所にも印を付けます。親は「失敗したのか」と判定する前に、何が予想と食い違ったのかを本人に聞きます。
続いて、資料を伏せて、外れた結果をどう扱ったかを説明します。アクティブリコールとして、残した理由や取り直した理由を本人の言葉で確かめます。説明できない箇所は、結論を書き足すより、判断の理由を整理する作業へ戻します。
締めに、日をあけて同じ結果を見直し、最初といまの解釈を比べます。間隔反復の機会を、考察の筋道を思い出す時間に使います。武蔵野個別指導塾の完全 1 対 1 では、本人が結果と解釈をどう分けて説明するかを確かめます。探究の文章を組み立てる相談先は、武蔵境の総合型選抜対策です。
よくある質問
Q. 予想から外れた値は全部残しますか?
データを残すか除くかは、原因について考えた説明と判断理由を添えて決めます。予想外の原因についての説明が、残す、除く、取り直すなどの選択に関わった研究を踏まえ、選択の筋道を読める形にします。[2]
Q. 仮説が支持されなかったらテーマを捨てますか?
仮説が支持されなかった結果も、新しい理解を生む材料として検討します。期待した効果が確認されなかった研究にも、新しい理解へつながる意義があると論じられています。[4]
Q. 親はどこを褒めるとよいですか?
きれいな結論より、予想と結果を分けて説明した箇所を読みます。「ここでは何を根拠に判断したのか」と尋ねて、本人が考えた道筋に目を向けます。
出典
- Students’ Progression in Monitoring Anomalous Results Obtained in Inquiry-Based Laboratory Tasks(B. Crujeiras-Pérez et al.、2019、Research in Science Education)
- Exploring Student Sensemaking When Engaging with Anomalous Data(Adrian A. Adams et al.、2024、CBE Life Sciences Education)
- Null Effects and Publication Bias in Special Education Research(Bryan G. Cook et al.、2017、Behavioral Disorders)
- How null results can be significant for physics education research(Luke D. Conlin et al.、2019、Physical Review Physics Education Research)



