草から始まる食物網と炭素の循環を図でたどり、発電の効率や環境調査の例題に取り組めます。生物のつながりと資源の利用を、原因と結果を結んで考えてみましょう。
よくあるのは、雨上がりの公園のベンチで理科の課題を開き、「ヘビが減ると草も減る」と書こうとして手が止まるという場面です。ヘビは草を食べません。それでも間にいる生物を順にたどると、遠く見える関係がつながります。ただし、自然の中では食べ物が1種類とは限らず、雨や気温も生物の数に影響します。
「自然と人間」は、生物の名前や環境問題を別々に覚えるだけでは整理しにくい単元です。食べる・食べられる関係、物質の移動、エネルギーの移り変わりを分けて考えると、どの変化が何につながるかを説明できます。多くの教科書では中3で学び、これまでの生物・化学・物理の内容を結びます。身近な落ち葉から発電まで、矢印の意味を言葉にしながら読み進めましょう。
この単元で身につけること
- 生産者・消費者・分解者を、栄養の得方とはたらきから区別します。分解者も有機物を取り入れる生物である点を押さえます。
- 食物連鎖と食物網を読み、一つの生物の増減が周囲へ及ぼす影響を考えます。予測には、ほかの条件をそろえる必要があります。
- 炭素の循環を、光合成・食べること・呼吸・分解で説明します。物質が循環することと、エネルギーが移っていくことを区別します。
- 自然環境の調査で、比べる場所・面積・時期・方法を確かめます。観察した事実と、その原因についての考えを分けます。
- エネルギー資源と発電方法の特徴を整理し、科学技術の便利さと環境への影響を合わせて判断します。
植物の光合成と呼吸、化学変化、エネルギーの変換で学んだことが土台です。用語を思い出せない場合は、「何を取り入れ、何に変えるのか」まで戻ると、つながりを取り戻せます。
基本の考え方
食物連鎖から食物網へ
植物などは、光合成によって二酸化炭素と水から有機物をつくります。このように無機物から有機物をつくる生物を生産者といいます。動物など、ほかの生物の有機物を取り入れて生活する生物は消費者です。草食動物だけでなく、草食動物を食べる肉食動物も消費者に含まれます。
生物の食べる・食べられるというつながりが食物連鎖です。「草 → バッタ → カエル → ヘビ」と表す場合、矢印は食べられる側から食べる側へ向きます。口を向ける方向ではなく、食物中の有機物が渡る方向です。実際には1種類の生物が複数の相手を食べるため、連鎖は網のようにつながります。これを食物網といいます。

図1のように、草からヘビへはバッタとカエルを通る経路も、ネズミを通る経路もあります。これは関係の一部を取り出した模式図です。ヘビが減った場合でも、カエルの数が必ず同じ割合で増えるとはいえません。餌の量、ほかの天敵、すみかの変化なども関わるからです。
生物の数量は、増減しながらつり合いを保つことがあります。「つり合い」は数がいつも同じという意味ではありません。食べられる生物が増えると、それを食べる生物が増えやすくなり、やがて食べられる側が減る、といった関係が見られます。一方、大きな環境変化が起こると、もとの状態に戻るとは限りません。
分解者と物質の行方
落ち葉や生物の死がい、ふんには有機物が含まれます。土の中などの菌類や細菌類は、これらの有機物を分解し、生活に必要なエネルギーを得ます。このはたらきに注目した呼び方が分解者です。菌類にはカビやキノコのなかまが含まれます。分解者も、生産者がつくった有機物を利用するという点では消費者に含めて考えられます。
ミミズなどが落ち葉を食べて細かくすることも、分解が進む助けになります。しかし、「細かくなった」だけで有機物が無機物に変わったとはいえません。分解者のはたらきを通して二酸化炭素や水などが生じ、土の中に戻った無機養分は植物に利用されます。生物と、それを取り巻く水・空気・土などの環境を一つのまとまりとして見たものが生態系です。
資源を使うことと環境を守ること
石炭・石油・天然ガスは化石燃料です。長い時間をかけてできた資源で、人間が使う速さに見合う速さでは補われません。火力発電では燃料の化学エネルギーを熱などに変え、発電機を回して電気エネルギーを得ます。燃焼に伴う二酸化炭素の排出は、地球温暖化を考えるうえで重要です。温室効果そのものは地表を暖かく保つはたらきですが、温室効果ガスの増加はその強まりにつながります。
太陽光・風力・水力・地熱などは再生可能エネルギーです。太陽光発電は光を直接電気に変え、風力や水力では風や水の運動を利用して発電機を回します。原子力発電は核分裂で生じる熱を利用します。発電方法を比べるときは、資源の量、天候の影響、二酸化炭素の排出、設備が周囲へ及ぼす影響、廃棄物の扱いなどを合わせて見ます。一つの長所だけで判断しないことが、科学技術を使う際の基本です。
例題で解き方を確かめる
例題1 食物網の矢印を読む
図1で、草からヘビへ有機物が渡る経路をすべて挙げ、生産者と消費者を答えましょう。図に描かれた矢印だけを使うものとします。
- 矢印の始まりと先を確かめます。食べられる側から食べる側へたどるためです。
- 草を出発点にして、枝分かれを一つずつ追います。途中の生物を飛ばすと、図にない食べ方を加えてしまいます。
- 栄養の得方で役割を決めます。草は光合成で有機物をつくり、図の動物はほかの生物を食べるからです。
答えは「草 → バッタ → カエル → ヘビ」と「草 → ネズミ → ヘビ」です。生産者は草、消費者はバッタ・カエル・ネズミ・ヘビです。ヘビに向かう矢印が2本あることは、この図ではヘビの餌が2種類示されていることを表します。ヘビの数が2匹という意味ではありません。
例題2 数量の変化を順に考える
「草 → バッタ → カエル」という関係だけに注目します。カエルが減り、天候やほかの生物の影響が変わらないとすると、その後バッタと草にはどのような変化が起こりやすいでしょうか。
- 最初に変化したカエルと、直接つながる生物を探します。まず直接の影響を考えると、原因と結果が逆になりません。
- バッタは食べられる機会が減るので、増えやすいと考えます。ここでは繁殖などの条件も変わらないものとします。
- バッタが増えると草が多く食べられるので、草は減りやすいと考えます。バッタの変化を間にはさむことが必要です。
答えは「バッタは増えやすく、草は減りやすい」です。カエルが草を食べるからではなく、バッタを通じた影響です。「カエルが減ったので草が減る」とだけ書くより、間の理由まで書くと説明が通ります。この問題から、変化の時期や何匹増えるかまでは求められません。
例題3 発電のエネルギーを比べる
ある発電装置に入るエネルギーを1000 Jとし、そのうち350 Jが電気に、残りが周囲へ出る熱になったとします。熱になったエネルギーと、電気に変わった割合を求めましょう。図2は、この条件での内訳です。

- 入力から電気になった分を引きます。エネルギーが消えたのではなく、ほかの形に移った量を求めるためです。1000 – 350 = 650 Jとなります。
- 電気になった分を入力で割ります。もとの量を基準にするので、350 ÷ 1000 = 0.35です。
- 百分率に直します。0.35 × 100 = 35%なので、この条件での発電効率は35%です。
答えは熱が650 J、電気に変わった割合が35%です。図2の下の帯は、左の35%が電気、右の65%が熱に対応します。Jはエネルギーの単位、%は割合の表し方です。熱を別の用途に使えば有効に利用できる分は増えますが、電気になった割合まで増えたことにはなりません。この値を、すべての発電所に共通する値として覚える必要はありません。
例題4 自然環境の調査を比べる
同じ日に同じ方法で草の本数を調べたところ、場所Aでは2 m²に18本、場所Bでは3 m²に21本でした。1 m²あたりの本数を比べ、これだけで場所Bの草が少ない原因を決められるか考えましょう。
- 調べた面積を確認します。面積が違うまま本数だけを比べると、混み合い方を比べられないからです。
- 本数を面積で割ります。Aは18 ÷ 2 = 9本/m²、Bは21 ÷ 3 = 7本/m²です。
- 結果と原因を分けます。土の湿り気や日当たり、人の踏みつけなどを調べていないため、原因はまだ決まりません。
答えは、1 m²あたりではAのほうが多く、原因はこの結果だけでは決められない、です。同じ条件の区画を複数調べると、たまたま選んだ場所の偏りを確かめられます。生物の種類や数を環境の手がかりにするときも、一度の観察だけで全体を決めつけないことが必要です。
つまずきやすいところと直し方
植物は光合成だけをしている
「植物は二酸化炭素を取り入れるだけ」という考え方は、呼吸を見落としています。植物も昼夜を通して呼吸を行い、有機物を利用してエネルギーを取り出します。光合成では二酸化炭素を使い、呼吸では二酸化炭素を出す、と二つのはたらきを分けましょう。

図3のように、二酸化炭素に含まれる炭素は光合成で植物の有機物に入り、食べることによって動物へ渡ります。死がいやふんなどの有機物は分解者に利用されます。植物・動物・分解者の呼吸によって、炭素は二酸化炭素として環境へ戻ります。矢印は炭素の移動を示しており、酸素の移動を示す図ではありません。
物質と同じようにエネルギーも循環する
「炭素が戻るのだから、エネルギーも植物へ戻る」という考え方は、物質とエネルギーの性質を混ぜています。食物中のエネルギーは生命活動に使われ、その一部は熱となって周囲へ移ります。その熱がそのまま植物の光合成に戻って使われるわけではありません。
正しくは、炭素などの物質は形を変えて循環し、エネルギーは光から有機物、生命活動、熱へと移っていくと考えます。図3に光から始まる矢印を重ねて暗記するより、何の移動を表す図なのかを先に決めると混乱を減らせます。
再生可能なら環境への影響はない
「風や日光はなくならないので、設備を増やしても問題はない」という考え方では、発電以外の過程が抜けています。設備をつくるには資源が必要で、設置場所や廃棄の方法も周囲に影響します。太陽光や風力は、時間帯や天候によって発電量も変わります。
正しくは、資源が補われる性質と、環境への影響の小ささを分けて判断します。水力では川の環境、原子力では放射性廃棄物の管理など、確かめる点が異なります。省エネルギー、蓄電、複数の発電方法の組合せも、必要な電力を得るための科学技術の利用です。
練習問題
練習1
図1で、ネズミから有機物を受け取る生物を答えましょう。また、食べる側から食べられる側へ矢印を描いてはいけない理由を説明しましょう。
練習2
落ち葉の有機物を分解する菌類や細菌類を、はたらきに注目して何と呼びますか。また、それらが呼吸で出す、炭素を含む気体を答えましょう。
練習3
入力が800 J、電気になった分が240 J、残りが熱となる装置があります。熱の量と、電気に変わった割合を求めましょう。
練習4
同じ方法で調べた場所Cには4 m²に28本、場所Dには2 m²に16本の草がありました。1 m²あたりで多い場所と、原因を調べるために追加で比べたい条件を一つ答えましょう。
答えと解説
練習1はヘビです。この図の矢印は、食物中の有機物が渡る方向を表すからです。矢印の約束を確認してから読むことが出発点です。
練習2は分解者、二酸化炭素です。分解者が有機物を利用し、呼吸を行うことも炭素の循環につながります。
練習3は800 – 240 = 560 J、240 ÷ 800 × 100 = 30%です。560 J + 240 J = 800 Jで、入力との対応も確かめられます。
練習4はDです。Cは7本/m²、Dは8本/m²です。追加の条件は、例えば日当たりです。日当たりに差が見つかっても、それだけが原因とはすぐに断定できません。
次の単元へのつながりと家庭での確かめ方
この単元は、今後、身近な環境の変化を資料から読み取る学習につながります。水質の変化、生物のすみかの減少、外来生物の影響なども、「何が変わり、どの生物へ影響するか」と問い直せます。資源の利用では、ごみを減らす、繰り返し使う、資源として再利用するという選択も考えられます。
家庭では5分ほどで二つの確認ができます。一つ目は、食卓の野菜と肉を紙に書き、肉となる動物の餌を調べるつもりで、生産者までの経路を考えることです。餌が不明な部分は決めつけず、疑問として残します。二つ目は、手元の紙箱の材料表示を見て、使い終えた後に再利用できそうな使い方を考えることです。分別方法は地域の案内に従います。
個別指導では、矢印の意味が曖昧なら光合成と呼吸まで戻り、割合で止まるなら入力を100%とするところから確かめます。説明と計算のどちらで止まったかを分けると、復習する場所を絞れます。
まとめ
自然について説明するときは、結論の前に、たどった経路と考えた条件を添えましょう。「草が減る」なら間にいる生物を、「環境への影響が小さい」ならどの過程を比べたかを示します。わからない原因を残すことも、観察から確かにいえる範囲を守る態度です。
食物網の一本の矢印を理由つきで読めることが、自然と人間の関係を自分で判断する足場になります。





