ノートの取り方——書き写しを学習に変える|武蔵野個別指導塾が薦める学習の仕方

板書を必死に写しているのに、テスト前にそのノートを開くと何も思い出せない。この連載で保護者から最も多く聞く相談のひとつです。写す速さは上がっているのに、書いた内容が頭に残っていない。原因は手が遅いことでも、字が汚いことでもありません。ノートを「写す道具」としてだけ使っていることにあります。

ノートの研究には長い歴史がありますが、そこから出てくる実務的な結論は意外に地味です。書く道具(鉛筆かキーボードか)を変えても結果はあまり変わらない。変わるのは、授業中に何を選んで書いたか、そして書いたあとにそのノートで何をしたか。この2つです。

この記事では、研究が何を示したかの解説は最小限にして、明日の授業から使える手順に落とします。授業中に何を書いて何を書かないか、余白をどれだけ空けるか、授業後に何分使って何を足すか、テスト前にそのノートをどう開くか。学年ごとに手順が変わる部分は分けて書きます。

この記事の結論

  • 「手書きのほうが頭に入る」は、研究では決着していません。有名な実験の直接的な再現では、手書きとタイピングの差は一貫して出ませんでした。道具選びに時間をかけるより、書く中身を変えるほうが確実です。
  • ノートには「書きながら覚える働き」と「あとで見返すための記録」という2つの仕事があります。どちらを狙うかで、書くべき形が変わります。
  • 大学生を対象にした総説では、授業の重要点のうちノートに残るのは3分の1程度だと報告されています。まず「取りこぼしを減らす」ことが先で、装飾や色分けは後です。
  • 取ったノートを見返さないと効果は大きく落ちます。古い実験でも、ノートを取って見返した条件が最も成績がよく、聞くだけで見返さない条件が最も悪いという結果でした。
  • 授業後の5分から10分で「抜けを埋める」「問いを書き足す」「自分の言葉で1行まとめる」の3つをやる。これがこの記事の中心です。

ノートには2つの仕事がある

研究の世界では、ノートの働きを2つに分けて考えます。ひとつは、書いている最中に頭の中で情報を整理してしまう働きです。もうひとつは、書いたものを後から読み返すための外部の記録としての働きです。前者は書いた時点で仕事が終わり、後者は見返して初めて仕事が始まります。

この区別は40年以上前から検討されてきました。キーウラ(Kiewra)らは96名の大学生を対象に、書くだけの条件、書いて見返す条件、書かずに他人のノートを見返す条件を比べ、さらにノートの形式(普通の書き方、箇条書き、表形式)を組み合わせて調べています。

Kiewra KA, et al. Note-taking functions and techniques. Journal of Educational Psychology. 1991.

リッカーズ(Rickards)とフリードマン(Friedman)は、読解場面でノートを取らせた実験から、ノートは書く働きと記録の働きの両方を果たすが、後者のほうが重要だと報告しています。つまり見返さないノートは、最も大事な仕事をしないまま終わっているということです。

実務上の意味は単純です。見返さないつもりなら、授業中に頭を使う書き方をしなければならない。見返すつもりなら、後から読んで意味の分かる形で残さなければならない。多くの生徒のノートは、そのどちらでもありません。板書を写すことに手が占領され、頭は動かず、しかも後から読むと文脈が抜けていて意味が取れない。だから開いても思い出せないのです。

見返すことの重要性は、1970年代の実験がすでに示しています。ヴァンマトレ(Van Matre)とカーター(Carter)は172名の大学生を、ノートを取る条件と見返す条件の組み合わせに分けました。

Van Matre NH, Carter JF. The effects of note-taking and review on retention of information presented by lecture. 1975.

取って見返した条件が最も保持がよく、聞くだけで見返さない条件が最も悪いという結果でした。古い研究ですが、その後の研究でも方向は変わっていません。ノートは書いた時点では半分しか終わっていないと考えてください。

手書きとタイピング——どちらが良いかは決着していない

2014年に、手書きのほうがキーボードより学習によいという実験が発表され、広く知られるようになりました。ミューラー(Mueller)とオッペンハイマー(Oppenheimer)の研究です。

Mueller PA, Oppenheimer DM. The pen is mightier than the keyboard: advantages of longhand over laptop note taking. Psychological Science. 2014;25:1159-1168.

3つの実験で、キーボードで書いた学生のほうが概念を問う問題の成績が悪かった。理由は、キーボードだと話された言葉をそのまま打ち込んでしまい、自分の言葉に置き換える処理が起きないからだ——というのがこの研究の主張でした。

ところが、この結果を同じ手続きでもう一度確かめる研究は、うまくいっていません。アリー(Urry)らは、ノートパソコン群74名、手書き群68名で元の実験の第1研究をそのまま再現しました。

Urry HL, et al. (2021). Don’t ditch the laptop just yet: a direct replication of Mueller and Oppenheimer’s (2014) Study 1 plus mini meta-analyses across similar studies. Psychological Science. 32:326-339.

元の研究と同じく、キーボード群のほうが話された言葉をそのまま写した量も総語数も多くなりました。しかし小テストの成績では、キーボード群が手書き群より悪いという結果は出ませんでした。似た8本の研究をまとめた探索的な分析でも同じ傾向でした。著者らは「手書きが即時の学習を改善するという考えを、結果は支持しない」と結論しています。

モアヘッド(Morehead)、ダンロスキー(Dunlosky)、ローソン(Rawson)による再現と拡張も同じ方向です。手書きが有利に見える傾向はあったものの、群の間で成績は一貫して違わず、それはノートを取らなかった群を含めても同じでした。ノートを勉強したあとでは群の差はさらに小さくなり、直接再現を統合した分析では手書き有利の効果は小さく、統計的に有意ではありませんでした。

Morehead K, Dunlosky J, Rawson KA. (2019). How much mightier is the pen than the keyboard for note-taking? A replication and extension of Mueller and Oppenheimer (2014). Educational Psychology Review.

著者らは「どちらの方法が優れているかを結論するのは時期尚早だ」と書いています。この記事もその立場を取ります。手書きを勧めもしませんし、タブレットを否定もしません。

ただし、媒体によって「残りやすいもの」は違います。ルオ(Luo)らの研究では、キーボードの学生は文字情報を多く記録し、手書きの学生は矢印や図などの視覚的な要素を多く記録しました。そして、キーボードで取る場合は書いている最中の働きのほうが役に立ち、手書きで取る場合は見返す働きのほうが役に立つ、という非対称な結果が出ています。

Luo L, Kiewra KA, Flanigan AE, Peteranetz MS. Laptop versus longhand note taking: effects on lecture notes and achievement. Instructional Science. 2018.

実務的な判断はこうなります。図・グラフ・作図の多い授業(数学、理科、地理)は手書きが扱いやすい。文字情報が速く流れる授業(社会科の講義、英語の解説)はキーボードでも構わないが、そのぶん見返しの作業を必ず入れる。道具はこの程度の基準で選べば十分で、それ以上悩む価値はありません。

授業中に何を書き、何を書かないか

キーウラらの総説は、学生が授業の重要点のうちノートに残すのは3分の1程度だと指摘しています。そして、ノートに記録された要点の数は成績と正の相関を持つとも書かれています。

Kiewra KA, Colliot T, Lu J. Note this: how to improve student note taking. IDEA Paper #73. IDEA Center. 2018.

つまり最初の課題は、きれいに書くことでも速く書くことでもなく、取りこぼしを減らすことです。以下の手順で、書く対象を決めてください。

  1. 板書のうち、教科書と同じ内容はページ番号だけ書く。「教科書 p.84 の図と同じ」と書けば1行で済みます。写している時間が丸ごと浮きます。
  2. 先生が口で言ったことを優先して書く。板書は後から教科書や友人のノートで補えますが、口頭の説明はどこにも残りません。「なぜそうなるか」「ここが間違えやすい」「試験に出す」は、板書になくても書きます。
  3. そのまま写すのは、定義・公式・年号・用語だけにする。それ以外は短く言い換えて書きます。言い換えようとした瞬間に、理解しているかどうかが自分で分かります。
  4. 分からなかった箇所には記号を置いて先に進む。止まって考え込むと、その間の説明を丸ごと失います。「?」を書いて進み、授業後に処理します。
  5. 略記を5つだけ決めて固定する。例えば「∵(理由)」「⇒(だから)」「≠(違い)」「例(具体例)」「!(試験に出る)」。数を増やすと思い出すコストが書く手間を上回ります。

フラニガン(Flanigan)らの研究では、授業中に短い中断を入れてノートを直す時間を与えると、記録の完全さが変わることが調べられています。実際の授業でそれを自分から作るなら、先生が問題を解かせている間や、次の項目に移る切れ目が、その中断にあたります。書き足すのはそこです。

余白を先に作る——後から足す場所がないノートは育たない

ノートが「書いたら終わり」になる最大の理由は、物理的に書き足す場所がないことです。書き始める前に場所を空けてください。

  1. ページの左に3センチほどの縦線を引く。ここは授業中は使いません。授業後に「問い」を書く場所です。
  2. ページの下に5行ぶんほど空ける。ここに授業後、自分の言葉で1行から3行のまとめを書きます。
  3. 1つの単元が変わったら、必ず新しいページから始める。詰めて書くと、後から差し込む余地が消えます。紙は惜しまないでください。
  4. 右端は空けない。右を空けても人はそこを使いません。使うのは左と下です。

左の縦線に書く「問い」は、答えではなく質問の形にします。「フランス革命の原因は」「この式変形はなぜ両辺を2乗してよいのか」「不定詞の副詞的用法と形容詞的用法の見分け方は」。見返すとき、この問いだけを見て右側を隠せば、そのままテストになります。これがこの記事で最も効率のよい一手です。

授業後の5分から10分でやること

この5分から10分が、写しただけのノートを学習に変える工程です。その日のうちにやってください。翌日に回すと、口頭の説明の記憶が消えています。

  1. 「?」を処理する(2分)。教科書を引く、友人に聞く、先生に聞くために付箋を貼る。この場で解決しなくても構いません。解決の見込みを決めるだけで先へ進みます。
  2. 抜けを埋める(2分)。途中で追いつかずに切れた行、矢印だけで中身のない箇所、記号の意味が自分でも分からない箇所を補います。
  3. 左の余白に問いを3つ書く(3分)。そのページの内容から、テストに出そうな問いを3つ作ります。作れなければ、そのページは理解できていないという合図です。
  4. 下の余白に1行でまとめる(2分)。「今日の授業は要するに何の話だったか」を、ノートを見ずに書きます。見ずに書けなければ、もう一度読んでから書きます。
  5. 色を塗るのは最後(1分)。色分けは記憶を助ける保証がありません。やるなら「試験に出ると言われた箇所」だけ1色に限定します。

4番の「自分の言葉でまとめる」は、単なる要約ではありません。読んだ内容を自分に向かって説明し直す作業で、学習研究では自己説明と呼ばれ、効果が繰り返し確認されている数少ない方法のひとつです。ノートの下3行は、その練習場所になります。

見返すときの手順

テスト前にノートを「読む」のは、最も効率の悪い使い方です。読むと知っている感じが強くなりますが、それは思い出せることとは別です。以下の順で使ってください。

  1. 右側を紙か下敷きで隠す。左の余白に書いた問いだけが見える状態にします。
  2. 問いに声か手で答える。頭の中だけで「だいたい分かる」と済ませない。口に出すか、別の紙に書きます。
  3. 答えられなかった問いに印をつける。ページ単位ではなく問い単位で印をつけます。
  4. 印のついた問いだけを、翌日と1週間後にもう一度やる。できた問いに時間を使わないことが、この工程の要点です。
  5. 3回続けて答えられた問いは、線を引いて消す。ノートが軽くなっていく実感が、続ける力になります。

この手順は、ノートを「読み物」から「問題集」に変えるものです。ノート作りに凝る生徒ほど、この段階で読むだけになりがちです。きれいなノートは目的ではありません。

学年別の手順

学年 この時期の中心課題 やること
小学生 書く速さと正確さそのものを作る 板書を写し切ることをまず目標にしてよい。余白は下3行だけ空け、「今日習ったこと」を1行書く。問い作りは3つでなく1つでよい
中学生 取捨選択と、口頭説明の記録 教科書と同じ図は写さずページ番号で代替する。左の余白に問いを3つ書く。定期テスト2週間前から、隠して答える使い方に切り替える
高校生 情報量が増え、写す時間が足りない 写す量を半分に減らし、言い換えて書く。図の多い科目は手書き、文字中心の科目はどちらでもよい。問いは単元ごとに10問を目安にためる

小学生については、写す作業そのものが書字の練習になっている時期があります。低学年のうちから「写すな、考えろ」と言うのは早すぎます。まず写し切れるようになり、それから減らす順序です。

中学生と高校生で最も差が出るのは、授業の情報量です。高校の授業は板書が終わる前に次の説明が始まることが珍しくありません。ここで全部写そうとすると、必ず頭が止まります。写す量を減らす決断は、サボりではなく技術です。

この記事で言えないこと

第一に、手書きとタイピングのどちらが優れているかは、現時点で言えません。再現研究は差を見つけられておらず、統合しても効果は小さく有意ではありませんでした。「手で書くと記憶に残る」という説明を見かけたら、それは2014年の研究を根拠にしていることが多く、その後の検証まで踏まえていない可能性があります。

第二に、ここで紹介した研究の大半は大学生を対象にしたものです。小中学生の授業は、板書の量も、教師が要点を示す度合いも違います。手順はそのまま当てはまらない部分があります。学年別の表はこの記事の実務上の整理であり、研究がその通りに検証したわけではありません。

第三に、ノートの取り方だけで成績が上がるとは言えません。ボイル(Boyle)とリベラ(Rivera)は、学習障害などのある生徒を対象にした9本の介入研究(合計125名)をまとめ、ノートの技法を使った生徒で成績とノートの質・量が改善したと報告していますが、対象も文脈も限定されています。また、シー(Shi)らが42名を3群に分けて6週間の授業で比べた研究では、共同でノートを取る群が最も成績がよく認知的な負荷も低いという結果でしたが、参加者が少なく、そのまま一般化はできません。

第四に、授業中に書く量を減らすことには失敗の危険があります。減らしすぎて後から読んで意味が分からなくなる生徒は実際にいます。1週間試して、見返したときに再現できない箇所が増えたなら、減らしすぎです。量を戻してください。

当塾の立場

ここまでに書いた手順は、塾に来なくても実行できます。必要なものはノートと定規と、授業後の10分だけです。左に線を引き、下を空け、問いを3つ書き、隠して答える。これで大半は足ります。市販のノート術の本を何冊も読む必要も、特別な文房具を買う必要もありません。まずご家庭で、1教科だけ2週間試してみてください。

そのうえで、通うことに意味がある部分もあります。この記事の手順のうち、生徒が自力で最もつまずくのは「左の余白に書く問いを作る」ところです。良い問いを作るには、その単元で何が問われるかを知っている必要があり、それは生徒がまだ持っていない知識だからです。武蔵野個別指導塾では、生徒が持ってきたノートを一緒に開き、その日の範囲から問いを一緒に作ります。キーウラらが指摘するとおり、ノートは重要点の3分の1しか残らないのが普通で、何が抜けているかは本人には見えません。抜けているものを外から指摘できることが、1対1で見る側の役割だと考えています。

出典

  1. Mueller PA, Oppenheimer DM (2014). The pen is mightier than the keyboard: advantages of longhand over laptop note taking. Psychological Science, 25, 1159-1168. doi:10.1177/0956797614524581
  2. Urry HL, Crittle CS, Floerke VA, et al (2021). Don’t ditch the laptop just yet: a direct replication of Mueller and Oppenheimer’s (2014) Study 1 plus mini meta-analyses across similar studies. Psychological Science, 32, 326-339. doi:10.1177/0956797620965541
  3. Morehead K, Dunlosky J, Rawson KA (2019). How much mightier is the pen than the keyboard for note-taking? A replication and extension of Mueller and Oppenheimer (2014). Educational Psychology Review.
  4. Luo L, Kiewra KA, Flanigan AE, Peteranetz MS (2018). Laptop versus longhand note taking: effects on lecture notes and achievement. Instructional Science.
  5. Kiewra KA, et al (1991). Note-taking functions and techniques. Journal of Educational Psychology.
  6. Van Matre NH, Carter JF (1975). The effects of note-taking and review on retention of information presented by lecture.
  7. Kiewra KA, Colliot T, Lu J (2018). Note this: how to improve student note taking. IDEA Paper #73. IDEA Center.
  8. Flanigan AE, Kiewra KA, Lu J (2023). Computer versus longhand note taking: influence of revision. Instructional Science.
  9. Boyle JR, Rivera TZ (2012). Note-taking techniques for students with disabilities: a systematic review of the research. Learning Disability Quarterly.
  10. Shi Y, Yang H, Yang Z (2022). Examining the effects of note-taking styles on college students’ learning achievement and cognitive load. Australasian Journal of Educational Technology.
  11. Rickards JP, Friedman F (1978). The encoding versus the external storage hypothesis in note taking. Contemporary Educational Psychology.

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