
読み物 家庭と子どもの日々(10-27 本人「読み物として引き込む記事」)
鞄の底で折りたたまれた答案—テストを見せなくなった子が、本当に隠しているもの

テストを見せなくなった子は、点数を隠しているのではありません。隠しているのは、点数を見た瞬間の、親の顔です。その顔を見なくていい場所が一つあれば、答案はまた開かれます。

洗濯の前に、ポケットから出てきた紙
制服のズボンを洗う前に、ポケットを確かめる。小さく四つ折りにされた紙が出てきます。広げると、二週間前の数学の小テストです。赤い数字が、右上に書かれています。
親は、その紙をしばらく見ています。点数そのものより、四つ折りの折り目のほうが、胸に刺さります。この子は、この紙を親の目から離したまま、二週間持ち歩いていた。
その夜、子どもの部屋の机の奥を、少しだけのぞいてしまう。引き出しの一番下に、学校のプリントの束があります。その間に、何枚かの答案が挟まっています。どれも、親が「テストはどうだった」と聞いたときに、「まだ返ってきてない」と言われたものでした。
親は、答案を元の場所に戻します。戻しながら、何を言えばいいのか、わからなくなっています。
隠すようになった、最初の一枚
子どもが答案を隠すようになるには、最初の一枚があります。
それは、たいてい、ひどい点の答案ではありません。少し下がっただけの答案です。前回より十点低い。子どもは、それを見せます。まだ、見せる子だったからです。
親は、悪気なく言います。「どうしたの、前はできてたじゃない」。何も言わずに、ため息をつく親もいます。点数を見たあとに、答案を裏返して机に置く親もいます。
子どもの側に残るのは、言葉ではなく、その一瞬の顔です。眉が少し寄る。口の端が下がる。目が、答案から自分の顔へ移る。その動きを、子どもは正確に覚えています。
次に点の下がった答案が返ってきた日、子どもは、その顔をもう一度見るか、見ないかを選びます。見ないほうを選んだ日から、答案は鞄の底へ行きます。

隠された答案は、直されない
答案を隠すことの、いちばん大きな損は、親に知られないことではありません。答案が直されないことです。
返ってきた答案には、その子がどこで止まったかが、そのまま書かれています。どの問題で手が止まったか。どこで計算を間違えたか。どの選択肢で迷ったか。答案は、止まった場所の地図です。
その地図が、四つ折りにされてポケットに入ると、誰も読まなくなります。本人も、読みません。読めば、点数を思い出すからです。止まった場所は、止まったまま次の単元へ運ばれていきます。そして次の答案で、また同じ場所で止まります。その答案も、また隠されます。
点が下がり続ける子の机の奥には、直されていない答案の束が眠っていることがあります。束が厚くなるほど、開けるのが怖くなる。開けるのが怖いほど、束は厚くなる。
隠す子の、もう一つの言い分
答案を隠す子には、もう一つの言い分があることも、知っておいてください。それは、「自分でなんとかするつもりだった」という言い分です。
四つ折りにした答案をポケットに入れたとき、子どもは、次のテストで取り返してから見せようと思っていたのかもしれません。点の下がった答案ではなく、取り返したあとの答案を見せたい。親をがっかりさせたくない。その気持ちは、親を大事に思う気持ちと、同じ場所から出ています。
困るのは、その「自分でなんとか」の中身が、空っぽのまま進むことです。どこで止まったかを読まずに、次のテストでは頑張る、と決める。止まった場所を知らないまま頑張っても、同じ場所でまた止まります。だから、隠した子を責めるかわりに、その言い分に中身を足してあげてください。中身とは、止まった場所が一つわかっていることです。

親が今夜からできること
隠された答案を見つけた夜に、親ができることは多くありません。けれど、一つだけ、とても大切なことがあります。見つけたことを、責めないことです。
「なんで隠したの」と聞けば、子どもは次から、もっと見つからない場所に隠します。隠したことを責められた記憶は、点数の記憶より長く残るからです。
かわりに、次のように順番を変えてみてください。
まず、点数を聞かない日をつくります。「テストどうだった」ではなく、「どの問題がいちばん難しかった」と聞く。点数ではなく、問題の番号を聞くのです。番号には、良し悪しがありません。番号を答えるのは、点数を答えるより、ずっと軽い。
次に、番号が返ってきたら、その問題を見せてもらいます。答案の全体ではなく、その一問だけです。親は解き方を教えません。「ここで止まったんだね」と言うだけです。眉を寄せず、ため息をつかず、答案を裏返さずに。
この「一問だけ」を、何度か繰り返します。子どもの側に、答案を見せても顔が変わらなかった、という記憶が少しずつ積み上がります。その記憶が、鞄の底から答案を引き上げる力になります。
答案を開ける場所を、家の外に一つ持つ
それでも、親子のあいだでは、答案を開けにくいことがあります。親だからこそ、顔を見られたくない。それは、子どもが親を大事に思っているからでもあります。
そういうときは、家の外に、答案を開ける場所を一つ持つという手があります。
武蔵野個別指導塾の授業は、講師1名と生徒1名の完全マンツーマンです。1対2で講師が二人のあいだを行き来する巡回型ではありません。隣に座るのは一人で、その一人は、親ではありません。点数を見ても、眉を寄せる理由がない人です。講師が見るのは点数ではなく、どこで止まったかです。
隠していた答案を最初に開ける相手は、親でなくてもかまいません。四つ折りの答案を、教室の机の上で広げたとします。隣の講師が指でたどるのは、点数の欄ではなく、手の止まった問題です。「ここまでは合ってる。止まったのは、この一行」。子どもにとって、それは初めての経験になるかもしれません。答案を開けても、何も起きなかった。起きたのは、止まった場所が一つ見つかったことだけです。
隣に座る講師陣は、次のような人たちです。
- 大学教員・大学の非常勤講師
- 在野の哲学者・元研究者(修士号・博士号取得者)
- 現役の難関国立大学の学生(東京大学・一橋大学・東京外国語大学・東京農工大学など)
- 私立大学医学部の学生
- 東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の修士課程・博士課程の大学院生
- 現役の中学校の非常勤講師
講師は専門の科目を担当制で受け持つ業務委託の形をとり、アルバイト講師はいません。止まった一行の裏にある穴を、根元から説明できる人が座ります。
授業では、アクティブリコール(何も見ずに思い出す練習)と間隔反復を明示的に使います。止まった問題を、その日に直して終わりにしない。次の週の最初に、何も見ずに、同じ型の問題をもう一度解く。解けたら、その答案は、もう隠す必要のない答案になります。
束をほどく順番
机の奥の答案の束は、一度に全部ほどく必要はありません。むしろ、一度に全部広げると、子どもは束の厚さに押しつぶされます。
ほどく順番は、新しいものからです。いちばん最近返ってきた答案を一枚だけ選び、授業に持っていく。その一枚が直されたら、次の一枚。古い答案ほど、止まった場所が深い層にあります。新しいものから順に直していくと、深い層の穴にも、自然にたどり着きます。
入塾の前には、無料の事前診断テストと入塾前カウンセリングを受けられます。束の中から一枚だけ、持ってきてください。本人が選んだ一枚でかまいません。点数の欄を折って隠してきても、かまいません。見たいのは、点数ではなく、止まった場所だからです。
通い方のこと
授業は1回90分が基本で、小学生は60分と90分から選べます。対面の時間割は4限から7限まであります。
- 4限 15:00〜16:30
- 5限 16:40〜18:10
- 6限 18:20〜19:50
- 7限 20:00〜21:30
オンライン授業もあり、10:00から24:45までのあいだで組めます。教室は武蔵境駅から徒歩30秒で、塾の許可があれば24時間使える自習室があり、テキストは1500冊以上あります。授業で直した答案の問題を、自習室で何も見ずにもう一度解いてから帰る。そういう使い方もできます。第5週は閉室で、授業はありません。
月謝は学年ごとに週1回の月額で決まっていて、入塾金25,000円(税込27,500円)、登録料5,000円(税込5,500円)、諸経費は毎月5,000円(税込5,500円)です。どの月謝の行になるかは、入塾前カウンセリングで確かめてください。
よくある質問
Q. 隠していた答案を見つけてしまいました。本人に言うべきでしょうか。 A. 見つけたことを責める形では、言わないほうがよいと思います。かわりに、点数を聞かずに「どの問題がいちばん難しかった」と番号を聞く日をつくってください。
Q. 塾の講師には、答案を見せられるものでしょうか。 A. 子どもによります。ただ、親ではない一人が隣に座り、点数ではなく止まった場所だけを見る。この形は、答案を開けるきっかけになりやすいと考えています。できれば本人と一緒に、どんな人が教えるのかを、入塾前に確かめてください。
Q. 塾に入ったら、答案を家でも見せるようになりますか。 A. 必ずそうなるとは言えません。ただ、答案を開けても何も起きなかったという経験が積み上がれば、家で番号を口にできる見込みは高まります。
Q. 授業の様子は、親にも伝えてもらえますか。 A. LINEで学習の様子を伝え、保護者面談もあります。点数ではなく、どの問題のどこで止まり、どこまで直ったかを、番号で話せます。
Q. 小学生でも、同じことが起きますか。 A. 起きます。小学生は60分と90分から授業の長さを選べます。どちらが合うかは、入塾前カウンセリングで相談してください。
まとめ 点数の前に、顔を変えない
テストを見せなくなった子は、点数を見た瞬間の親の顔を隠しています。隠された答案は、直されません。直されない答案は、束になります。
今夜からできることは三つです。点数ではなく問題の番号を聞くこと。見せてもらった一問の前で顔を変えないこと。答案を開ける場所を家の外に一つ持つこと。
教室は東京都武蔵野市境2-2-3 渡辺ビル4F、JR中央線・武蔵境駅から徒歩30秒です。電話は0422-27-7828で、365日・24時間受け付けています。メールはmusashinokobetu.daily@gmail.comです。束の中から一枚だけ、持ってきてください。
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