
読み物 家庭と子どもの日々(10-27 本人「読み物として引き込む記事」)
「わからない」と言えない子—授業でうなずくだけの子が家で崩れる理由と、一対一で言葉が出る瞬間

授業でうなずいている子が、わかっているとは限りません。「わからない」と言えない子は、家で宿題の前に固まり、親の前で初めて崩れます。その子に必要なのは、もっと厳しい授業ではなく、「わからない」と言っても誰にも見られない席です。

うなずく子は、わかっていない子ではない
学校の面談で、担任からこう言われたことはないでしょうか。「授業態度はとてもいいです。よく聞いています」。帰り道、少し誇らしい気持ちになる。けれど、返ってきた定期テストの点は、その言葉と合いません。
このずれには、理由があります。うなずく子は、聞いていないのではありません。聞いています。聞いたうえで、途中から何を言われているのかわからなくなり、それでもうなずき続けているのです。うなずきは、理解の印ではなく、「ここで止めないでください」という合図です。
教室の後ろの席から見ると、よくわかります。黒板に二つ目の式が書かれたあたりで、何人かの子の目が、黒板から手元のノートに落ちます。ノートには、黒板と同じ式が写されています。写すことはできる。写しながら、頭の中では「待って、さっきのところから」という声が鳴っている。けれど、その声を外に出すと授業が止まる。周りが自分を見る。だから出さない。
この子たちは、学校では「問題のない子」です。宿題も出す。提出物も遅れない。だから、気づかれません。気づかれないまま、中学2年の秋を迎えます。
「わからない」が言えなくなる三つの場面
「わからない」と言える子がいて、言えない子がいる。その差は、生まれつきではありません。言えなくなるには、場面があります。
一つ目は、小学校の高学年です。4年生までは、手を挙げて「わかりません」と言っても、誰も気にしませんでした。5年生のどこかで、空気が変わります。「え、まだそこ」という誰かの小さな声。笑いではないけれど、笑いに近い空気。一度それを浴びた子は、次から手を挙げません。
二つ目は、家の中です。親が「なんでこんなのがわからないの」と言った夜。その言葉は、親の側ではただの驚きです。子どもの側では、「わからない」と言うと叱られる、という記憶になります。一度の言葉で、十分です。
三つ目は、塾の集団授業です。周りはみな同じ学年で、同じ教材を使っています。隣の子が先に解き終える。講師が「できた人」と聞く。できた人が手を挙げる。自分は挙げない。挙げない自分を、講師と周りが見ている気がする。ここで「わからない」と言うには、相当の勇気が要ります。中学生に、その勇気を毎回求めるのは酷です。
三つの場面に共通しているのは、「わからない」と口にした瞬間を、誰かに見られることです。見られる、という一点が、言葉を止めています。

家で崩れる夜に、親が見ているもの
言えない子は、学校では崩れません。塾でも崩れません。崩れるのは家です。
夜、机に向かって30分たっても、ノートが白いままになっている。親が様子を見に行くと、子どもは問題集を開いたまま、消しゴムをいじっています。「進んでないじゃない」と声をかけると、「今やろうとしてた」と返ってくる。もう一度見に行くと、やはり白い。三度目に親の声が大きくなり、子どもは泣くか、黙ってドアを閉めます。
この夜、親が見ているのは「やる気のない子」です。けれど、本当にそこにいるのは、「どこから手をつければいいかわからない子」です。問題集の最初の一問が、すでにわからない。わからないことを、親に言えば叱られる。塾で聞けばよかったのに、聞けなかった。聞けなかった自分が、いちばん嫌になっている。消しゴムをいじっているのは、その時間です。
親ができることは、この夜に「なんでわからないの」と言わないことだけです。代わりに、一つだけ聞いてください。「どの問題で止まってる」。問題の番号が返ってきたら、それで十分です。その番号が、翌日、隣に座る人へのいちばん正確な伝言になります。
隣に一人だけ座ると、何が変わるか
武蔵野個別指導塾の授業は、講師1名と生徒1名の完全マンツーマンです。1対2で講師が二人の間を行き来する巡回型ではありません。隣に座るのは一人で、その一人は、この子だけを見ています。
この形が、「わからない」と言えない子に効く理由は、単純です。見ている人が、一人しかいないからです。周りの子はいない。手を挙げる必要もない。「できた人」と聞かれることもない。講師が式を一行書いて、「ここまでは」と聞く。子どもが少し黙る。講師は待つ。その沈黙を、誰も聞いていません。
最初の数回は、それでも「はい」と答えます。癖になっているからです。講師は、「はい」のあとに、もう一問、同じ型の問題を出します。手が止まる。そこで講師は「さっきのところ、もう一回やろうか」と言います。叱りません。驚きもしません。子どもにとって、これが初めての経験です。「わからない」がばれても、何も起きなかった。
数回の授業のうちに、子どもが自分から口を開くことがあります。「ここ、何でこうなるんですか」。講師にとっては小さな質問です。けれど、その子にとっては、長いあいだ外に出せなかった「わからない」が、初めて口から出た瞬間です。ここから、授業が変わります。
隣に座る講師は、大学教員や大学の非常勤講師、修士号・博士号を持つ元研究者、東京大学・一橋大学・東京外国語大学などの現役の学生、東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の大学院生です。専門の科目を担当制で受け持ち、アルバイト講師はいません。つまり、この子の「何でこうなるんですか」に、その場で、根元から答えられる人が座っています。「とにかく覚えて」で逃げる講師ではなく、「それはね」と言える人です。

言葉が出た子が、次に覚えること
「わからない」と言えるようになった子は、次に、「わかった」の確かめ方を覚えます。
武蔵野個別指導塾では、アクティブリコールと間隔反復を、授業の中で明示的に使います。難しい言葉に聞こえますが、やることは簡単です。教わった直後に、何も見ずに自分で言い直す。それを、たとえば翌日、三日後、一週間後と、間を空けて繰り返す。見ないで言えたら「わかった」、言えなかったら「まだ」。この「まだ」を、自分で判定できるようになることが、「わからない」と言えることの、次の段階です。
言えない子は、「わかった」の判定も、ずっと人任せにしてきました。講師がうなずけばわかった、テストが返ってくるまでわからない。その状態から、自分で「まだ」と言える状態へ。一対一の授業は、そこまでを目指します。
自習室も使えます。塾の許可があれば24時間利用でき、テキストは1500冊以上あります。言えるようになった子は、授業のない日に自習室へ来て、「ここがまだ」と自分で見つけた箇所を、次の授業に持ってきます。この往復ができるようになると、親が夜に様子を見に行く回数は、自然に減ります。
入塾前カウンセリングで、親が確かめること
「言えない子」を連れて来るとき、親が確かめることは一つです。隣に座る人が、この子の沈黙を待てる人かどうか。
入塾前カウンセリングには、できれば本人と一緒に来てください。家で聞いた「どの問題で止まってる」の番号を、そのまま持ってきてください。その番号があると、どこから手をつけるかを決めやすくなります。どんな経歴の人が、どの科目を担当制で受け持つのかを、入塾前に確かめられます。
もう一つ、聞いてほしいことがあります。「うちの子が黙ったとき、どうしますか」。答え方で、その人がこの子に合うかどうかが、だいたいわかります。「励まします」と返す人より、「待ちます。それから、一つ前に戻ります」と返す人のほうが、言えない子には合います。
入塾のあとは、LINEで学習の様子を伝え、保護者面談もあります。家で見えている固まる時間と、教室で見えている「まだ」の箇所を、親と講師が同じ番号で話せるようになります。親が夜に机をのぞきに行く回数は、ここから減っていきます。
よくある質問
Q. 本人が「塾は嫌だ」と言っています。無理に連れて行くべきでしょうか。 A. 「塾」が嫌なのか、「大勢の前でまた言えない時間」が嫌なのかを、分けて聞いてみてください。後者なら、隣に一人しか座らない形を、本人に説明してから入塾前カウンセリングへ来てください。本人と一緒に、どんな人が教えるのかを確かめられます。
Q. 学校の成績は普通です。それでも「言えない子」の可能性はありますか。 A. あります。提出物が遅れず、授業態度がよく、テストだけが合わない子は、この型であることがあります。宿題の前に固まる時間が長いなら、そのしるしです。
Q. 一対一だと、講師と合わなかったときが心配です。 A. 講師は専門の科目を担当制で受け持っています。合わないと感じたら、教室に連絡してください。講師の経歴は、入塾前にあらかじめ確かめられます。
Q. オンラインでも、同じ授業が受けられますか。 A. オンライン授業があります。形は対面と同じ一対一です。家から出たがらない時期の子には、まずオンラインで「隣に一人」を経験してもらう手もあります。
Q. 親が家でできることはありますか。 A. 「なんでわからないの」を言わないこと、「どの問題で止まってる」と番号を聞くこと、その番号を塾に伝えること。この三つです。教える必要はありません。
まとめ 「わからない」を見られない席を、用意する
うなずくだけの子は、怠けている子でも、理解の遅い子でもありません。「わからない」と口にした瞬間を、誰かに見られることが怖い子です。その子に必要なのは、見ている人が一人しかいない席と、その一人が「それはね」と根元から答えられる人であることです。
教室は東京都武蔵野市境2-2-3 渡辺ビル4F、JR中央線・武蔵境駅から徒歩30秒です。電話は0422-27-7828で、365日・24時間受け付けています。メールはmusashinokobetu.daily@gmail.comです。入塾前に、本人がどんな人から教わるのかを、確かめてください。
同じ分野のほかの記事
本気になった日が、入塾の日。
お子様の教育、迷ったら「丸投げ」してください。必ず、期待以上の結果で返します。武蔵野で育む、武蔵境で学ぶ。
電話は年中無休。365日、24時間、お電話可能。

