指を使う計算を止めさせる前に、数量・位・式のどこで迷うかを確認。実物と図と式を結ぶ教え方、途中式を残す相談資料の作り方を示します。
計算の手順を何度説明しても、少し問題が変わると分からなくなる。指を使うことを注意された子が、机の下でそっと数えている。保護者が「さっきと同じでしょう」と声をかけても、本人にはどこが同じなのか見えていないことがあります。問題数を増やす前に、数や式が何を表しているかを確かめたい場面です。
算数が極端に苦手なときは、数量、数字、計算の手順、文章題の意味を分けて観察します。「算数障害」という言葉だけで家庭が診断するのではなく、限局性学習症の算数に関する困難などを含め、学校や専門家へ具体的に相談します。
間違えた答えを消す前に、数えた物や書きかけの図をそのまま残してみてください。本人がどの数を動かしたか分かれば、数量の意味を教えるのか、数字を書く位置を整えるのかを相談できます。道具や図の使い方は一律に決めず、本人の説明と答案を照らし合わせて選びます。途中の考えが見える誤答は、次の授業を組み立てる資料になります。

算数障害の数量・位・文章題を分けて見る
算数の誤りは、数字の見間違いだけではありません。数の大小が捉えにくい、位の意味が曖昧、計算の途中を保持しにくい、文章から必要な関係を取り出せないなど、異なる場所で起こります。「計算ができない」とまとめる前に、実物なら比較できるか、図なら説明できるか、式になると止まるかを確かめてください。
手順を暗記して答えが出せても、その手順が何を表すかは別に確認が必要です。逆に、数量の意味を説明できても、筆算の位置がずれて答えを間違える場合があります。理解と表記の問題を分ければ、概念を教え直すのか、書く枠や途中式の支援を用意するのかが決めやすくなります。
文章題では、読む技能の負担が算数の理解を隠すことがあります。教師が読み上げたときと、自分で読んだときの反応を比べます。読み上げで解けても、数量関係を教師が補足していないか確認してください。どこまで提示したかを残すことで、算数の支援と読みの支援を混同せず相談できます。
物を数える場面でも、数詞を順に言うこと、一つの物に一つの数詞を対応させること、最後の数が全体の個数を表すと捉えることは別に見られます。物が重なった配置でだけ数え違えるなら、数えた物を脇へ移す方法を試します。離して並べた後も個数が同じかを尋ね、見た目の長さと個数のどちらを比べたか確かめてください。正しい答えを一度言えたかで終えず、本人が何を手がかりにしたかを見ます。道具を使う提案は、このような操作を観察するためのもので、診断名から一律に選ぶものではありません。
算数の苦手さを整理するときは、学校で習った単元と、これまで使った説明を並べます。欠席で学んでいない内容と、繰り返し教わっても難しい操作を混ぜないためです。限局性学習症(SLD)に関する評価にも、日々の教材は相談の手がかりになります。家庭の観察だけで診断を決めず、何を教えたらどこまでできたかを残してください。指を使ったという事実だけから、困難の重さや学ぶ力の上限を判断することはできません。
SLDや注意欠如多動症(ADHD)のある学生を扱った研究では、自己効力感と自己調整学習が成績差を統計的に媒介したと報告されています(Sharabi et al.・2025)。算数に取り組む際も、本人が使える方法を選び、進み具合を確認できるかという観点を持てます。ただし、特定の計算手順や具体物の有効性を直接示した研究ではなく、自信を持たせれば数量の困難が解決するという意味でもありません。
「算数は全部無理」と言われたら、図形なら説明できる、物を分ける操作なら分かるなど、扱える課題を確かめます。その活動で使った図や具体物を、次に数量を説明する際の候補にし、本人に伝わる表し方を探します。
誤りを確認する課題と新しい内容を学ぶ課題は分けて計画します。難しい計算の点検だけで授業が終わると、本人が数量について考える機会が不足します。必要な計算を補助しながら関係を説明する場面も残し、できた説明と練習が必要な操作を両方記録します。
算数が極端に苦手な子を家庭で支える方法
指や物を使う数え方を隠さず確かめる
家庭では、指や物を使って数えることを恥ずかしい方法として扱いません。「何を数えているか見せて」と頼み、本人の操作を確認します。避けたいのは、途中の数え方を禁止して暗算だけを求めることです。道具を使った結果から、どの関係が分かっているかを見ます。
生活の場面を使うなら、買い物の合計を急に試験にしないでください。「この分を分ける方法を一緒に考えよう」と相談し、間違えても人前で責められない範囲で行います。日常の失敗が続くときは、練習する場面と大人が支える場面を分けます。
計算の誤りには「どこまで合っているか、途中を残して見よう」と声をかけます。すぐ消してやり直させると、位のずれや手順の抜けを確認できません。速さを競うことや、きょうだいに答えさせて比較することは避けてください。
筆算の練習と数量関係の理解で補助を使い分ける
宿題の狙いが筆算の手順なら、数を置く欄と繰り上がりを書く欄を本人と確かめます。数量関係を考える文章題なら、計算を補助しても関係を説明する活動を残せるか学校へ相談します。「今日は式を選ぶところを考えよう」と伝えれば、電卓を使う理由も分かります。どちらの課題でも同じ道具を使うと決めず、補助が答えのどの部分を担うかを明らかにして、本人の理解を確認してください。
たとえば答えが十だけ違う筆算では、答えを消す前に繰り上がりを書いた場所を見ます。別の問題でも同じ位置が抜けるなら、その位置を確かめる印を試せます。一方、実物をまとめる操作自体が分からないなら、欄を整えるだけでは足りません。「この十はどこから来た」と具体物へ戻って示します。同じ誤答に見えても、位置の支援が必要なのか、数のまとまりの説明が必要なのかを分けます。
家庭の反復は、同じ型を速く解く練習だけに偏らないようにします。合っていた問題について「この式の答えは何の数」と尋ね、物を動かしたり絵で説明したりできるか見ます。答えをすぐ言えなくても、意味を考える時間を切り上げないでください。毎問説明させると負担が大きいので、教師と確認する問題を選びます。計算の速さが変わらない日でも、どの量を求めているか分かれば、その学びを残せます。
分数などで図を使うなら、何を一つ分とした図か先に確かめます。大きさの違う紙を同じように分けて比べると、本人がどこを見ればよいか迷う場合があります。「元の一枚はここ」と示し、同じ全体を分けた図から考えます。図を描けば必ず分かると期待せず、本人が指した部分を見て説明を調整してください。家庭で図を増やしても混乱するなら、その図を消さずに教師へ見せる方が相談に役立ちます。
物差し・時計・グラフで算数のつまずきを探す
物差しの課題では、数字を読むことと長さを測ることを分けて確かめます。物の端を「一」の目盛りに合わせているなら、計算以前に開始位置の説明が必要です。まず紙の帯を零の目盛りへ合わせ、どこからどこまでを測ったか本人に指してもらいます。目盛りが細かく見づらい場合は、数を覚え直させる前に大きな目盛りの教材を試します。日用品を測る遊びに移るのは、道具のどこを見るかが分かってからにします。
時計や金銭の扱いが難しい場合は、生活に必要な情報を伝える時間と技能を練習する時間を分けます。急いで出発する朝に時計の読み方を試すと、失敗が生活上の衝突になりやすくなります。必要な情報は大人が分かる形で伝え、余裕のある別の場面で技能を確認します。生活を送るための補助を、練習が終わるまで使わせない条件にしないでください。
表やグラフを読む宿題では、値を間違えたところから単純に引き算の練習へ戻さないでください。縦軸の一目盛りが何を表すか、横軸でどの項目を選んだかを確かめます。一目盛りを一と数えたのなら、目盛りに添えてある数と途中の区切りを一緒にたどります。図の色や高さだけで大小は分かっても数値が取れない場合は、その違いを残し、数値を読み取る段階を教師へ相談します。
家庭で説明が行き詰まったら、その問題を保留してかまいません。親が別の手順を次々に出すより、どの操作まで分かったかを残して授業へ戻します。本人には保留した理由と確認する相手を伝えます。「算数は親も苦手だから仕方ない」と可能性を閉じず、家庭で教えきれない内容を指導者の仕事として相談してください。

算数障害のある子への個別指導で実物・図・式を結ぶ
位の札や文章題の図を式の数字と対応させる
教師は、物を動かした操作と式の記号が対応する場所を示します。実物でできた後、いきなり式だけへ移さず、図にした場合に何が同じかを確認します。道具を片づけることを進歩の唯一の基準にせず、本人が数量関係を説明できるかを見てください。
たとえば机の上に一の位と十の位の札を並べ、筆算と比べる場面です。生徒が一の位の札を十の位へ置いたら、教師は「この札はどちらのまとまり」と尋ね、実物の数へ戻します。色で置き場所を覚えただけなのか、位の意味も分かるのかを分けて見ます。道具を触る活動で終わらず、動かしたものが答案のどの数字に対応するかを一緒に確かめます。
「合わせて」という語があるから足し算にした場合は、同じ語を含む別の関係も示します。「合わせて八個、赤が三個、青はいくつ」なら、全部の数と片方の数を図へ置きます。教師が演算名を先に告げず、まだ分からない部分を指してもらいます。式を選んだ後に答えを図へ戻し、全部で八個になるか確認すれば、単語への反応だけではないかを見られます。
算数の誤答から筆算・数直線の説明を選び直す
文章題を扱うときは、最初に数字だけを拾わせず、登場する物と変化を確認します。「持っていた」「渡した」「残った」を実物や図で示し、本人に順をたどってもらいます。教師の図を写せても関係を理解したとは限らないため、「ここは誰の数」と尋ねます。文を読み上げる援助と数量関係を描く援助を区別して記録すると、読みの負担と算数の説明のどちらを調整するか判断できます。
計算手順の説明では、教師が答えへ飛ばさず、数字を置く位置と操作の理由を並べて示します。繰り下がりなら、どのまとまりをどのように分けたかを図と式で対応させます。本人が見本を見て同じ操作を行った後、数を少し変えた問題で試します。止まったら必要な見本へ戻り、「さっき説明した」と突き放しません。どこを見返すと動けたかを、本人が使う手順の中へ残します。
数直線を使うなら、点の数と間隔の数を区別する説明が必要です。零から三まで進むとき、零の点を一つ目として数え始めていないか見ます。教師が始点に指を置き、一つ動くたびに数を言う様子を見せ、本人が同じ移動を試します。目盛りを読むだけの課題と移動量を表す課題を分け、どちらで止まるかを記録します。数直線は読み方を教えてから、計算の補助として使います。
中学生が小さな数へ戻るときには、「大きな数では計算が混ざるので、式の意味を小さな数で確かめる」と説明できます。幼い教材へ戻されたという印象だけを残さず、現在の単元との関係を示してください。割合の意味を確かめるなら、本人が関心を持つ場面を使うこともできますが、話題が複雑すぎて量が見えなくならないようにします。関心を引くことと、数量関係を見やすくすることを両立させます。
報告には「計算正答」と「式の理由」を別に残します。教師が式を示して計算できた場合と、本人が図から式を選んだ場合では成果が違います。道具を使ったことも明記し、その道具があれば次も取り組める範囲を示します。誤答が残っていても、前は分からなかった量の違いを説明できたなら、そこで変化を伝えます。正答率だけで指導を続けるか決めず、次に必要な説明が減ったかも確認します。
算数の授業目標を数量の意味と計算手順に分ける
授業前に、今日は数量の意味を扱うのか、計算手順を練習するのかを本人に知らせます。意味を確認する回なら、答えを出す速さを競う課題は外します。「図のこの部分と、式のどの数が同じかを説明する」と目標を示せば、計算が全部終わらなくても到達点を見られます。保護者にも同じ目標を伝え、ノートのページ数が少ないことを学習不足と受け取らないよう、扱った関係を具体的に返します。
見本から本人の試行へ移るときは、援助を一度に全部消さないようにします。教師が数字の位置を示した問題の次は、枠だけを残して本人に入れてもらうなど、変える条件を限定します。誤ったら答えを教える前に、枠の意味を本人がどう理解したか聞きます。意味が分からなければ説明へ戻ります。枠を見なくてもできたことだけを褒めると、必要な補助を使うことをためらう場合があるので気をつけます。
途中式を修正する際は、元の式と直した式を並べると違いが見えます。「ここを足すことにしたのはなぜ」と尋ね、正答に至った理由を本人の説明から確かめます。言葉が難しければ具体物で示してもらえます。今回の目標が数量関係なら、細かな字形を全て直す時間に変えないでください。誤答から必要な説明を選び、直した操作を次の問題で試すところまでを一つの学習として扱います。
最後は、本人に今日使った物・図・式から説明しやすいものを選んでもらいます。図を選んだなら、家の宿題にも似た図が使えるか教師が確認します。使えない問題を渡す場合は、新しい図の描き方を授業で教えてからにします。保護者が家で一から橋渡しをする計画にはしません。次回は家庭で残した途中式を見て、つまずきが計算なのか表し方なのかを再確認し、練習を調整します。
算数の途中式と使えた道具を学校・塾へ伝える
学校へ相談するときは、計算の答案と、本人が数えたり説明したりした様子をセットで伝えます。文章を読んでもらうと解けるのか、道具を使っても関係が分からないのかなど、支援による違いがあると指導の焦点を絞れます。
塾では、学校と異なる計算手順を導入する前に、本人が混乱しないか確認します。別の方法を教える場合は、どの場面で使うのか、既存の方法とどうつながるのかを説明し、家族にも伝えます。方法の多さをそのまま支援の豊かさと考えないでください。
困難が続く場合は医療機関や学校の相談窓口へ相談します。家庭と塾は診断をせず、試した説明と誤りの特徴を資料にします。計算は口頭ならできたのか、測定や時刻の読みでも困っているのかなど、授業と生活の両方で必要な支援を整理します。提出する資料を選ぶために家庭で新しい試験を作る必要はなく、普段の宿題に残った途中式から相談できます。
学校へ伝える例は「位の枠があると数字をそろえられました。繰り上がりをどこへ書くかは声かけが必要でした」です。「算数が全く分からない」とまとめるより、続ける支援と教える箇所が見えます。計算用紙を見せる場合には、教師が書き加えた箇所にその旨を添えます。家庭で使った別の計算法も併記し、授業の手順と混ざっていないかを相談してください。
道具の使用を共有する際は、本人が周囲の目をどう感じるかも確認します。指を使うことをからかわれた経験を、本人の許可なく関係者全員へ詳しく話す必要はありません。「数える補助を安心して使える席や方法を相談したい」と目的を絞れます。学校で使える道具が塾と違うなら、その条件で何を代わりに使うかを事前に試し、本人だけに現場で判断させないようにします。
見直しでは、同じ量の関係を別の文でも説明できたかを学校と塾で確かめます。学校は式の選択、塾は位の扱いなど焦点を分ければ、全員が同じ大量計算を追加する事態を避けられます。家庭の役割は、宿題で困った位置を残すことに絞ってもかまいません。練習した内容と変化を共有し、まだ説明していない技能を、家庭の反復不足として扱わない約束が必要です。
進級や単元の変更時には、以前使えた補助が新しい課題にも合うか点検します。整数の筆算で役立った枠が、小数の位をそろえる際には説明なしで使えない場合があります。引継ぎには道具の名前だけでなく、何を理解するために使ったかを添えます。本人が選べる方法を増やしつつ、使い分けの説明を学校・塾が担うことで、新単元のたびに家庭が別の方法を探し直す負担を減らせます。

算数障害の演算選び・九九・単位換算についてのQ&A
Q 答えが合わないと、演算記号を次々に替えます
正解を当てる前に、「答えは今ある数より大きくなりそうか、小さくなりそうか」を、問題の場面に戻って話します。持っている物を渡した話なら、渡した分を実際に別の場所へ移して残りを見ます。見当と計算結果が違うときは、式を消さず、どの操作を表したかを確かめます。大きくなるなら必ず足し算という新しい暗記にせず、その問いの数量関係を説明する補助にしてください。理由を言えなければ、物を動かして示してもらえます。
Q 九九を覚えれば算数の困難は解決しますか
計算の事実を使えることと、問題の数量関係を理解することは別です。覚える練習が必要な場合も、何を求める式かを教える時間を残します。暗記の不足だけで説明せず、文章の理解や位の扱い、途中式の記録も確認します。本人がどの段階なら説明できるかが教材選びの材料になります。同じ計算を含む問題でも場面が変わると迷う場合は、量の関係を図へ示す練習を別に用意します。
Q 単位の換算だけが覚えられません
単位の名前、実際の大きさ、単位同士の関係を分けて確かめます。たとえば一メートルの長さを見たことがあっても、それをセンチメートルで表す意味が曖昧な場合があります。帯に同じ長さを二通りで記し、単位を替えても物の長さは変わらないことを一緒に見ます。換算表を使う場合は、どの欄からどの欄へ読むかまで教えてください。長さの換算を扱う日に重さや時間も混ぜず、授業で確認した関係を少数の問題で使います。
算数のやり直し前に、元の式と本人の説明を残す
誤答を一つ選び、まず途中の数字を消さずに残します。次に、本人が数えた物や図のどこにその数字があるかを確認します。最後に、分からなかったつながりを教師へ渡します。この三つなら、家庭で新しい解法を教え込まずに次の授業を具体化できます。指を使う方法をやめさせるなら、代わりの数え方を教える責任が大人に生じます。教師が引き受けるのは、残された操作を見て、次に説明する量や関係を選ぶ仕事です。家で全部やり直す前に、元の式と本人の説明を一組残す。その一組を、追加の計算プリントより先に授業で扱います。
参考文献
- Sharabi et al.(2025), Learning Disabilities Research & Practice. https://consensus.app/papers/details/57b38a11153f51cfb39776cf325dafcd/





