予定表を貼っても動けないときは、終わり・未定・変更の表示を点検。本人が確認し、予定の変更も相談できる視覚支援の作り方を紹介します。
いつもの時間に塾へ向かおうとしたら、担当する場所が変わると知って子どもが動けなくなった。親には小さな変更でも、本人には何が起こるのか分からない出来事かもしれません。「行ってみれば大丈夫」と励ます前に、変わった内容がどこまで伝わっているかを確かめたい場面です。
自閉スペクトラム症(ASD)のある子への「見通し」は、予定を細かく決めて守らせることだけを意味しません。何が起こるか、どこで終わるか、分からないときにどう確認するかを、本人が利用できる情報にすることです。見通しがあっても負担が残るなら、予定そのものの調整も必要です。
出かける前に本人が予定表を指したら、どの情報を探しているか聞いてみてください。場所が知りたいのに時刻だけを読み上げても、問いは残ります。写真や文字を足す前に、本人が確かめたい項目を選び、変更を相談できる場所も作ります。表が役立ったかは、見た目の整い方より、それを使った本人の確認や質問から分かります。

ASDの見通しを支える視覚情報は何を伝えるものか
口頭の予定は、話が終わるとその場から消えます。途中の情報を聞き逃したり、別の活動へ移った後で確かめたくなったりしたとき、再び尋ねる必要があります。文字や写真などで予定を残す工夫は、この確認を本人が行えるようにするために使えます。聞くことができる子にも、見直せる情報が役立つかを試してください。
一方、視覚情報を増やせば安心するとは限りません。長い予定表や多くの色分けが、必要な箇所を探す負担になる場合もあります。今知りたいことが活動の順なのか、終了時刻なのか、担当者なのかを確かめ、それに合う情報量へ絞ります。大人が全部説明したい気持ちと、本人が必要な情報を分けます。
変更への対応では、何が変わるかに加え、理由や確認先も伝えます。すべての変更をなくすのは難しくても、変更を知らせる方法を一定にすることは考えられます。元の予定を消し、新しい予定を示し、本人が尋ねたいことを確認する。変更の手続きを教えることで、予測できない場面にも確認の手がかりを残します。
予定表には、時刻を示すものと順序を示すものがあります。「三時に算数」と「国語の次に算数」は同じ約束ではありません。前の課題が長引いたときにどちらを優先するか、大人同士でも確かめます。終了時刻だけが固定されている授業なら、途中の活動は順序で示し、終える時刻を別に書く方法があります。
「算数の後は帰る」と書いても、迎えが誰か分からなければ安心して始められない子もいます。ASDだから絵を好むと決めず、「次のことを知るのに、ここに何があるとよい」と尋ねます。表を使わない場合も、既に覚えているのか、読めないのかを確かめます。
通常学級のASD生徒に関する28研究をまとめたWatkins et al.(2019)では、視覚支援や自己モニタリングなどに大きな効果が示されています。家庭で予定カードを用意する際にも参考となる方向ですが、特定の書式なら必ず落ち着くという意味ではありません。教室の授業の順序を本人が確かめられたか、予定が変更されたときに尋ねられたかを、日々の課題で見ます。掲示物の完成度ではなく、使う場面での働きを確認します。
Rutherford et al.(2019)は、視覚支援が不安を減らし予測可能性を上げること、家庭では個別化・一貫性・使い方の訓練が鍵になることを示しています。家に表を貼るだけで終えず、帰宅時や外出前にどこを見るかを一緒に試す理由になります。一貫性とは変更を禁じることではなく、最新の予定をどこで確認できるかが分かる状態として考えられます。本人に合わない表示を固定するより、使えた表し方を保ちながら更新します。
ASDの子が家庭で使える予定表の作り方
家庭の予定表に終了条件と出発の合図を入れる
家庭では、始まりだけでなく終わった後も示します。「宿題の後は自分の時間。その前にこの箇所を終える」と説明し、何をもって終了かを確認します。避けたいのは、表にない家事や追加課題をその場で増やすことです。必要なら表を直して相談します。
時刻が書いてあっても、時計から残り時間を読み取りにくいなら、「この番組が終わったら出発」のような生活上の区切りを併記できます。ただし予定が延びる番組は合図に使いにくいため、本人と普段の流れを確認します。時刻の読み方を教える課題と、今から外出するための案内を混ぜず、出発直前には分かる合図を使います。
予定を示すのは、本人が今していることを中断できる時点にします。動画を見ている背後から翌日の変更を告げただけでは、届いたか分かりません。「終わったら明日の迎えを確認したい」と予告し、本人の使う手帳を開いて伝えます。返事があったことだけで共有済みとせず、出発前に本人が必要な情報を見つけられる場所へ残します。
写真カードの意味・未定・予定変更を見える形にする
写真のカードを使うなら、場所と活動のどちらを表す写真かを確かめます。食卓の写真を「夕食」の意味で貼っても、本人は「食卓へ行く」と受け取るかもしれません。「このカードの後は何をする」と聞き、実物を使って意味を合わせます。理解している文字があれば短い語を添える方法もあります。大人の想像だけで絵を選ばず、本人が指して説明できる範囲から作ると、必要以上にカードを増やさずに済みます。
未定の予定には、空白のままにする代わりに「連絡待ち」と記せます。その下へ「分かったら親がここを直す」と更新者を書きます。「もうすぐ決まる」と根拠のない時刻を約束するのは避けてください。待っている間の生活まで止まるなら、「迎えが決まるまではこの部屋で本を読む」など今できる活動を示します。決定を早められなくても、何を待ち、どこで過ごすかは具体的に相談できます。
変更に気づいて動けなくなったときは、説明を重ねる前に古い表と新しい表の食い違いを直します。「場所だけ変わる。終わる時刻は同じ」と、変更点を絞って示してください。本人が理由を聞いたら、分かる範囲で答えます。説明を聞いた後も納得できない場合は、理解不足と決めつけず、変わった場所の何が困るかを聞きます。情報の更新と、参加の負担についての相談は別の作業です。
予定を本人が変えたいときは、表の横へ「相談したい」欄を設ける方法があります。「算数と国語の順を替えたい」と示せれば、家族は変更できるかを具体的に考えられます。替えられない場合も「迎えの都合でここは同じ。帰宅後の順は選べる」と説明します。断るたびに表を取り上げると相談の道具にならないため、希望を出すこと自体は受け止め、決まった内容を一緒に更新してください。
翌日や雨天の予定を分け、外出先の確認方法を決める
予定が日をまたぐ場合には、今日の欄と明日の欄を分けます。夜に翌日の用意を書き足したために、今すぐ出かけると思って着替え始めることもあります。「今日はここまで、これは明日の朝」と日付を指して確認します。終えた日の紙を新しい紙と重ねて掲示せず、本人が見返したい記録は別に保管します。記録として残す物と、これから行うことを示す物を同じ場所に混ぜない工夫です。
雨で外出するか決まらない日は、条件と分岐を示せます。「出発前に雨なら室内、晴れなら公園」と両方の予定を並べ、判断する時点と人を記します。朝から天気を何度も確認させず、決めるまでは通常の支度を進められる形にしてください。決定後は選ばなかった方に取り消しの印を付け、二つとも行う予定に見えないようにします。
初めての場所へ行く予定では、場所の写真や経路が役立つかを本人に尋ねます。細かな情報を大量に見せるより、入口、待つ場所、会う人など、本人が気にする箇所から確認します。写真と当日の状況が違う可能性も伝え、分からなくなったときに尋ねる相手を決めます。事前の情報だけで当日の負担を予測しきったと思わないようにします。
家族が予定を共有する場合も、本人の生活をすべて掲示する必要はありません。私的な相談や本人だけで確認したい予定があれば、別の手帳などへ分けます。皆に見える方が便利だという大人の都合だけで決めず、使う場所を相談してください。本人が予定を確認する道具と、大人が管理する連絡用の記録を区別することもできます。
外出先で紙をなくした場合の確認先も決めておきます。連絡できる家族の名前や集合場所だけを別に持つ方法なら、細かな日課をすべて覚えていなくても尋ねられます。携帯端末を使う子には、画面を開けない場合の連絡方法も確認します。「表がなければ何もできない」と困らせる練習をわざと行う必要はなく、普段の外出前に予備をどこへ入れたか一緒に見れば準備できます。

ASDの個別指導で授業の見通しを視覚支援にする
授業カードで進み具合と確認したい箇所を示す
授業では、取り組む課題と終えた課題の位置を分けます。本人が印を移す場合は、その操作が進み具合の確認に役立つかを見ます。教師の都合で細かな作業を増やさず、本人が今と次を分かることを目的にします。
たとえば机の端へ「説明」「練習」「確認」のカードを並べ、生徒が練習の途中で確認を指す場面です。教師は「今ここを確かめたい」と尋ね、必要なら途中に確認を入れます。最後の確認は残るのか、その場で終わるのかも表示します。本人がカードを使って授業の進め方を相談できれば、予定表が教師の命令を並べるだけの物になっていないと分かります。
視覚支援を減らす場合も、使えたから突然片づけるのではなく、本人の確認が必要な箇所を残します。手がかりを使って自分で進めることは自立の形です。表示をなくすことそのものを卒業の条件にはしません。
課題の終了・延長・質問を授業の予定表へ反映する
授業の予定は、科目名だけで動けるかを見て具体化します。「国語」では何を出すか迷う子には、教科書の写真とページを示します。「読解問題を解く」と書いても終わりが分からないなら、扱う問いの番号を加えます。すべての子へ細密な工程表を渡すのではなく、動作が止まる地点に情報を足します。終えたカードを移す操作が負担なら、教師が線を引いて本人と確認する方法でもかまいません。
予定より問題が長引いた場合は、教師が新しい終了条件を示します。「残りの問いは次回へ移す。今日はこの説明を聞いて終わる」と、残る課題の行き先まで書きます。次回へ回した紙が今日の机に残って不安なら、本人の見えるところで別の袋へ入れます。口では終わりと言いながら未完了の山を机に置き続けると、表示が機能しないことがあります。言葉と教材の状態をそろえる点検が必要です。
表示の使い方を見るときは、本人が教師を何度見たかだけでなく、自分で表を参照して何を確認したかを記録します。「休憩の後の課題を指した」「終了済みのカードを移した」などです。同じ箇所を繰り返し見たなら、時間なのか内容なのかを尋ねます。確認回数を減らすことを先に目標にせず、必要な情報が表にあるかを見ます。使っても分からない箇所を直すことが、次の自分で確認する行動につながります。
質問カードを用意する場合には、「次は何」「いつ終わる」「変えたい」の違いを具体的な授業で教えます。本人がカードを出したとき、教師はその問いに対応する場所を示して答えます。すぐ確定できない内容は、決まっていないと正確に伝えます。いつでも同じ返答で流すのではなく、求められた情報へ応じることが大切です。話せる子にも、困ったときは指すだけで相談できる方法を残せます。
共同の課題では、相手を待つ部分も示します。「答えを書く→相手の説明を聞く→終わり」とし、待つ間の過ごし方を相談します。自分の作業が終われば全活動が終わるという取り違いを減らせます。相手が欠席したときは、その工程を誰が担当するか、あるいは省くかも明示します。カードを残したまま教師が別の話を始めると、本人には未完了の活動が続いて見えることがあります。
遅刻や担当変更の日も授業の予定表を使い直す
開始時には、本人が気にする変更から確認します。部屋や担当が変わるなら、前回と同じ教材でも先に伝えます。入口で使う表示と机上の予定が一致しているか、教師も点検してください。本人へは「今日変わったところを一緒に見る」と伝え、間違い探しの試験にはしません。変更を理解しても負担がある場合は、座席や開始方法を相談します。予定を読めたことだけで授業参加への同意を得たとは扱いません。
新しい予定表を教える回では、開始の操作だけでなく途中から再開する使い方も扱います。遅れて入室したら、終わった欄を教師と確認し、「今日はここから」と開始位置を示します。欠けた項目を後で全部行うのか心配する子には、行わない部分も明確にします。予定の先頭から進まない日を失敗とせず、現在の位置を表で見つけられるように教えると、日課が崩れた後にも表示を使えます。
本人が順番を取り違えたときは、表を見なかったと決めず、目線で追う方向や終えた印の見え方を確かめます。上から下へ並べた方がよい子もいれば、横に並ぶ方が分かる子もいます。大人の書式へ合わせるより、実際に次のカードを選ぶ動作で点検します。毎回配置を変えると確かめにくいため、変えるのは必要な部分に絞り、どの変更が役立ったかを記録してください。
授業後には予定と実際の違いを短く見返します。延長した、別の課題へ替えた、中止した項目を教師が確認し、次回の見積もりへ反映します。本人へ「守れたか」を採点するだけでは、予定を作る側の修正点が消えます。家庭へは、役立った表示と混乱した変更点を伝えます。家でも同じ大きな掲示を求めず、手帳の一行など本人が生活で使える形へ移せるか相談します。
ASDの予定変更を学校・家庭・塾で食い違わせない
学校で使う予定の表示を参考にする場合は、その形式が家庭でも分かりやすいか本人へ確認します。同じ記号が別の意味に使われていないかも見ます。書式をそろえることより、変更や終了の意味が伝わることを優先してください。
予定の変更が続く時期には、誰が最新情報を伝えるかを決めます。学校、家庭、塾から異なる説明が来ると、本人が情報を整理する負担が増えます。決まった内容と相談中の内容を分け、本人へ更新を伝える担当を置きます。
見通しを示しても強い負担が続くときは、予定の理解だけが問題とは限りません。活動の内容や人間関係、環境について学校の相談窓口へ相談し、必要に応じて医療機関とも連携します。
連絡には「担当変更を口頭だけで伝えると旧教室へ向かった。教室名を書き換えて一緒に確認すると移動した」と、情報の出し方を残します。本人の柔軟性の不足だけで説明せず、大人が何を更新したかも共有します。学校の掲示と家庭の予定が違う場合は、どちらが新しい情報かを担当者へ確認してください。本人に二つを見比べて正解を推測させる状態を解消する相談になります。
予定表の写真を共有するときは、支援の相談に関係しない通院や家族の予定を隠す方法があります。本人が携帯する表には、他人に見せる必要がある項目だけ載せてもかまいません。学校へは「変更を示す欄を使えるようにしたい」と目的を説明し、生活全体の管理表を配らない形を考えます。本人にも誰が見る表かを伝えると、必要な情報を自分で持つことと、公開することを分けられます。
更新担当が不在の日の扱いも決めます。家庭の予定を書き換える人が連絡を受けられないなら、学校で確定した紙を持ち帰るなど代わりの経路を相談します。何も分からないまま古い表を使うことを避け、「ここは確認中」と記せるようにします。次の面談では、表が作れたかより、情報の食い違いがどこで起きたかを見て、連絡を増やすべきなのか更新先を減らすべきなのか検討します。
長期休み明けや進級前には、以前の予定表を全部作り替えるより、残せる表現と変える情報を整理します。授業場所や帰宅方法など生活への影響が大きい部分から知らせます。新しい担当者には、使っていたカードの名前だけでなく、本人がどう質問していたかも引き継ぎます。予定変更のたびに新しい相談方法を覚え直さなくて済めば、本人は必要な情報を尋ねる技能を次の環境でも使いやすくなります。

ASDの見通しと予定カードの使い方Q&A
Q 行事で終了時刻が読めないときは、何を示せますか
確定していない時刻を約束せず、「最後の発表→片づけ→出口で迎えを待つ」のように終了までの出来事を示します。進行が遅れた際に情報を聞ける担当者と、待つ場所も確認します。本人が長く待てない可能性があるなら、途中で休める場所や帰る判断を事前に主催者へ相談してください。時計が読める子にも、何が終われば帰れるかという情報は別に必要です。案内にない退出方法を家庭だけで決めず、当日の担当者と共有します。
Q 絵のカードは年長の子には幼すぎますか
年齢だけでなく本人の理解と好みで選びます。写真、文字、手帳の形式など選択肢があります。大人には分かりやすくても本人が嫌がる表示なら、使う場面や形を相談してください。視覚支援の目的は、特定の道具を持たせることではなく、必要な情報を本人が確認できることです。外で使う形と家庭で掲示する形が違ってもかまいません。本人が同じ意味で確認できれば、見た目の統一は必須ではありません。
Q 本人が終了済みのカードを片づけたがりません
終わった活動が見えなくなると、何を済ませたか確かめられず困る場合があります。「終わった」欄へ移して残す、日付のある台紙に貼るなど、本人が振り返れる方法を試します。捨てることまで成功条件にせず、これからの課題と見分けられるかを優先してください。逆にカードが増えて探せなくなるなら、保存する分を一日の終わりにまとめます。保管場所が足りなくなったときには、本人と残す記録を選び、写真で保存してよいか相談できます。
予定が変わった日は、大人の伝え方も見直す
授業が予定どおり進まなかった日の記録には、子どもの反応と並べて、大人がどの情報をいつ直したかも残します。変更を告げ忘れたなら、次回の課題は子どもの柔軟性ではなく、教室の伝え方です。大人が守らなかった予定の責任を、子どものこだわりへ転嫁しません。本人が「ここは違う」と指したとき、表を一緒に直せることが、使い続けられる条件になります。項目を増やす前に、古い情報を除き、今決まっていることを確かめ、尋ねる先を示す。予定表は、その三つに大人が答えられる状態で本人へ渡します。
参考文献
- Watkins et al.(2019), Psychological Bulletin. https://consensus.app/papers/details/66cec1a45a025e2099ce759f5037a2a7/
- Rutherford et al.(2019), Autism. https://consensus.app/papers/details/e6dcf78580a456a4a699a8fa34dbdd86/





