数学の「なぜそうなるか」を自分で説明する勉強|武蔵野個別指導塾

解答を見ればわかるのに、1人では式が進まない。「操作・理由・条件」の問いを使い、方程式や図形の一行に理由を添えます。家庭で聞く範囲と塾で検証する内容を分ければ、長い説明を求めずに始められます。

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数学の「なぜそうなるか」を自分で説明する勉強

1. 解答の隣に、理由を書く場所をつくる

よくあるのは、保護者面談の席で、赤い丸が並ぶ答案を広げたお子さまが、「この行では何をしたの」と講師に聞かれると、鉛筆を止めてしまう場面です。解答を見ながらなら同じ式を書けますし、計算の答えも合っています。それでも数字や聞かれ方が変わると、どの式から始めればよいか迷ってしまいます。

保護者の方には、「さっきはわかったと言っていたのに」と見えるかもしれません。けれども、書かれた手順を追えることと、次の手順を理由つきで選べることには隔たりがあります。お子さまの「わかった」は、その途中を表している場合があります。ここを一度に越えさせようとすると、説明すること自体が負担になってしまいます。

そこで取り入れたいのが、解いている途中で「なぜこの操作をしてよいのか」を自分の言葉にする勉強です。学習心理学では自己説明と呼ばれます。立派な解説文を書く必要はありません。「両辺から同じ数を引いた」「この角は平行線があるから等しい」と、式や図と理由を結ぶ短い説明から始めます。

この記事では、解答の読み方から1人での確かめ方までを具体化します。ご家庭では説明の上手さを採点するより、お子さまが理由を確かめる時間を持てているかに目を向けてください。

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2. 自分で説明すると、数学の何が変わるのか

数学の解答には、途中の判断が省略されています。たとえば「3x+6=18」の次に「3x=12」と書かれていても、「xを含む項だけを残したい」「等しい関係を保つために両辺から6を引く」という判断までは書かれていないことがあります。式を写すだけでは、この見えない部分を通り過ぎてしまいます。

自己説明では、前の行と次の行の間にある判断を補います。「6を移した」という手順の名前だけで終わらず、「両辺から6を引いたので等式が保たれる」と説明できれば、別の数が出てきたときも同じ理由を使えます。覚えた見た目と、使える関係を結び直す作業だと考えるとわかりやすいでしょう。

64報告をまとめたメタ分析では、自己説明を促す働きかけに学習成果の改善が見られ、効果量はg=0.55でした(Bisraほか・2018)。複数の学習内容を横断した値なので、数学の理由説明だけに絞った効果量としては使えません。効果量は研究内の成績差を共通の尺度で表したもので、点数が55点上がるという意味ではありません。

数学に絞ったメタ分析でも、自己説明を促すことで、解き方の習得、概念の理解、学んだことを別の問題へ使う転移に、直後の小〜中の効果が示されています(Rittle-Johnsonほか・2017)。数学学習の研究を統合した結果ですが、時間がたってからの効果や教室での持続を支える証拠は少なく、長期の定着まで保証する結果ではありません。この研究では、質の高い説明を支える手がかりがある場合に効果が大きいことも示されています。

つまり、「自分で説明して」と任せるだけでは十分ではありません。何について話すかが定まらなければ、生徒は問題文を言い直したり、解答に書かれた式を読み上げたりして終わります。「この変形は何のためか」「どの条件があるから使えるか」と、説明の焦点を絞る必要があります。

もう1つの役割は、理解の途切れを見つけることです。「約分した」とは言えても、何と何を共通の因数で割ったかを示せなければ、その部分を学び直す手がかりになります。説明が止まることは、勉強が失敗した印ではありません。次に見るべき箇所が具体的になった状態です。

ただし、自分の言葉で言えたことと、その内容が正しいことは別です。自信を持って誤った理由を説明する場合もあるので、教科書の定義や解答と照らす工程まで含めて取り組みます。誤った考え方がなぜ成り立たないかを説明する活動も、数学の自己説明を考えるうえで扱われています(Rittle-Johnsonほか・2017)。

説明には、言葉の長さより数学的なつながりが必要です。「分母をそろえるのは、同じ大きさの単位で数えるため」という短い文でも、操作の意味に届いています。逆に、長い文章でも式との対応がなければ、次の判断には使いにくいままです。まずは1つの変形に1つの理由を添えることを目標にします。

3. 今日からできる、解く・説明する・確かめる手順

最初の2分で、説明する箇所を1つ選ぶ

用意するのは、今使っている教科書か問題集、途中式のある解答、ノートです。新しい教材を増やす必要はありません。まだ習っていない難問ではなく、解答を読めば計算の流れを追える問題を選びます。以下の時間配分は家庭で始めるための目安で、速く終えることを目標にはしません。

最初の2分では、問題文の条件と求めるものを分けます。文章題なら、長さなのか個数なのかを単位と一緒に囲んでください。図形なら、与えられた平行や等しい辺の印を図に書き込みます。そのうえで、解答の中から「ここでなぜそうしたのか」を確かめたい行を1つ選びます。

ノートは、左側に式、右側に短い理由を書けるように使います。問題文を全部写す代わりに、問題番号と必要な条件を残せば十分です。見返したときに理由の対象が曖昧にならないよう、選んだ行には印を付けておきます。説明のために清書の量が増えると続けにくくなるので、矢印や囲みも使って、どの式についての理由かがわかる形にします。

次の4分は、「操作・理由・条件」を言葉にする

選んだ行について、まず「何をしたか」を確かめます。次に「何のためにしたか」、最後に「何があるからしてよいか」を考えます。3つを毎回長く書く必要はありません。最初は解答を見ながら、声に出すか、短い語句で余白に添えてください。

「3x+6=18」から「3x=12」への変形なら、操作は両辺から6を引くこと、目的はxを含む項を残すこと、理由は両辺に同じ操作をして等しい関係を保つことです。続く「x=4」では両辺を3で割ります。「移項した」「割った」だけで止めず、操作がどこに及んでいるかを指でたどります。

分数の足し算なら、「1/2+1/3=3/6+2/6=5/6」を使えます。「2と3を足して分母を5にするのではなく、1個分の大きさを1/6にそろえ、個数を足した」と説明してみます。教科書の図を指しながら話してもかまいません。式だけで言いにくいときに、図を使って同じ関係を示すのが2つ目の教材の使い方です。

3分で閉じて再現し、2分で照合する

説明を作ったら、解答を閉じて同じ箇所を再現します。初めから全部解き直す余裕がなければ、理由を付けた変形だけでもよいでしょう。式を書いたあとに「何をしたか」「なぜよいか」を添えます。見ているときだけ言えるのか、手がかりがなくても言えるのかをここで分けます。

その後の2分で、教科書や解答を開いて照合します。答えだけでなく、両辺に操作したか、符号は合っているか、使った定義や条件は合っているかを見ます。自分の説明と解答の表現が違っていても、同じ数学的な関係を示していれば、文章をそっくり直す必要はありません。

正しさを調べる方法も持っておきます。方程式では出した値を元の式に戻し、左右が等しいかを確かめます。先ほどのx=4なら、左辺は3*4+6=18になり、右辺と一致します。これは答えの確認になりますが、途中の理由が正しいかは別に見直してください。

条件を変えた問題に、最後の4分を使う

次は、同じ問題の数字を変えるか、同じ範囲の近い問題を1問選びます。「3x-6=18」なら、今度は両辺に6を足してxを含む項を残します。「符号が変わったから」だけでなく、「左辺の-6をなくすために両辺に6を足した」と言えれば、元の説明を新しい式へ使えています。

図形では、見た目を確かめる問題に変えられます。平行な2直線に別の直線が交わる図で、錯角が等しい理由を説明したあと、平行の条件を外すと同じことが言えるか考えます。図にそう見えることと、条件から言えることを分けてください。確かな根拠が見つからなければ、「この条件では等しいとは決められない」と止まれればよいのです。

高校数学で分母に文字がある式では、「どの値なら式の意味が定まるか」を説明します。たとえば「(x+1)/(x-2)=3」では、最初にx≠2を確かめます。両辺にx-2を掛けてx+1=3x-6を解くとx=7/2となり、除いた値とは異なります。「分母が0になる値を外したうえで変形した」と言葉にし、元の式でも左右が等しいか確認してください。

平方根を含む方程式でも、操作の前後を行き来できるかに注目します。たとえば「√x=-2」の両辺を2乗すると「x=4」になりますが、元の式へ戻すと「2=-2」となり、成り立ちません。「等式の両辺を2乗することはできるが、2乗後の式を満たす値が元の式も満たすとは限らない」と説明します。計算が正しく進んでいても、最後に何を確かめる必要があるかが見えてきます。まだ平方根を習っていない場合は、この例は飛ばしてかまいません。

このように、自分で確かめる方法は、解答を閉じた再現、元の式への代入、条件を変えた問いの3つを使い分けられます。すべてを毎回行う必要はありません。計算の結果を確かめたいのか、理由を覚えているか知りたいのか、条件を見落としていないか調べたいのかで選びます。

言えなかったところを、次の質問にする

最後に、「自力で言えた」「手がかりがあれば言えた」「まだ理由がつながらない」のどれかを、その行の横に残します。丸の数だけで終わらせず、迷った部分には「なぜここで割るか」のように短い問いを書きます。この記録を次の授業で開けば、質問する場所を探し直さずに済みます。

記録には、計算の間違いと説明の疑問を混ぜないようにします。「18-6を取り違えた」なら計算を直し、「なぜ両辺から引くかわからない」なら等式の性質を見ます。図形で「等しい角を見つけられない」なら、図の向きが変わっても平行線と角の位置をたどれるか調べます。正解か不正解かに加えて、次に自分がすることを1つ書くと、翌日の開始地点が決まります。解けなかった問題をただ全部やり直すよりも、今回の疑問に合う確認を選びやすくなります。

解答の説明が短すぎるときは、教科書の定義や直前の例に戻ります。これが3つ目の教材の使い方です。それでもつながらなければ、理由を想像で埋めず、疑問を残して止めてください。次の日には前日の記録を隠して同じ理由を言えるか試し、言えなかった箇所だけ開き直します。

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4. 個別指導では、問いの選び方と確かめ方を塾が持つ

自己説明を宿題にするなら、塾は「説明してきてね」で終わらせるべきではありません。何を説明するか、どの知識に戻ればよいか、どこまで言えたら次へ進めるかを決める必要があります。家庭が毎晩、解説の正しさまで判定する仕組みでは、保護者の負担が大きくなってしまいます。

武蔵野個別指導塾が担うべき役割は、答案の正誤と説明の内容を合わせて見て、次に取り組む課題を絞ることです。同じ誤答でも、計算を取り違えたのか、等式の意味が曖昧なのか、何を求める問題か読み取れていないのかで必要な支援は違います。まず本人に選んだ行を指してもらい、そこから短く理由を聞きます。

答えを教える前に、つまずきの位置を分ける

たとえば「3x+6=18」で止まった場合、「次はどうする」と繰り返すだけでは、当てずっぽうの答えを誘ってしまいます。「最後はxだけの形にしたいね。左辺のどの部分を先になくしたいかな」と目的を示す問いに変えます。それでも難しければ、数だけの等式を使って、左右に同じ操作をする意味まで戻ります。

一方、正しく変形できている生徒には、同じ説明を長く求めるより、別の条件を出します。「両辺を文字で割るときは何に気をつけるか」「この図で平行という条件がなくなったらどうなるか」と、説明が使える範囲を確かめます。答えを先へ進める力と、使ってよい範囲を見分ける力を一緒に扱います。

問いの強さも調整します。最初は「両辺から同じ数を引くから等しい関係が保たれる」という説明を一緒に作り、次は「両辺に何をしたか」だけを聞き、最後は本人に理由を選んでもらいます。いつまでも講師の言葉をなぞらせず、どの手がかりを外せるかを見ながら進めます。

間違った説明は、反例と対応させて直す

誤った理由が出たときは、正しい文を覚え直すだけで終わらせません。「分数は分母どうし、分子どうしを足せばよい」と考えているなら、「1/2+1/2」で試します。その考え方では2/4になりますが、半分が2つ集まると全体1つになります。図と式を対応させ、どこで意味が食い違ったかを本人に指してもらいます。

ここでは、「どうしてそんな間違いをしたの」と責める問いを避けます。「その方法をこの数で試すとどうなるか」と、考え方を検討する問いにします。直したあとには、別の分数でも同じ単位にそろえてから足せるかを見ます。反例に納得したことと、自分で正しく使えることを続けて確かめるためです。

説明の修正は、本人の文を全部消す方法に限りません。「両辺」という語が抜けていたなら足し、条件を書き忘れていたなら図と線で結びます。使える部分を残しながら直せば、何が不足していたのかが見えます。次の問題では修正した場所を本人が先に確認できるかを見ます。

家庭は、説明を聞く範囲を小さくする

ご家庭にお願いしたいのは、教材を開く時間と場所を整え、短い説明を受け止めることです。「今日はどの行に理由を付けたの」「まだ質問したいところはどこ」と聞けば、数学の内容をすべて教えられなくても話ができます。忙しい日は、本人が余白の記録を残したかを見るだけでもかまいません。

お子さまの説明を聞いて判断に迷ったときは、「その言い方で合っているか、次に先生と確かめよう」とつなぎます。家庭で無理に結論を出す必要はありません。「なぜ」を何度も重ねて説明させると、答えが合っていても終われない時間になります。1つ聞いて、残る疑問は塾に渡すと区切りを決めておきます。

宿題の量や難しさの調整、誤った理由の修正、次に外す手がかりの判断は塾が持ちます。家庭には、勉強の開始が難しかった日や、同じ箇所で手が止まったことなど、生活の中で見えた事実を伝えていただきます。保護者がもう1人の数学講師になることを前提にしない分担です。

進み具合は、説明の変化を添えて伝える

進み具合の記録には、扱った問題と正誤に加え、本人の説明、必要だった手がかり、次に確かめる条件を残します。たとえば「移項した、とだけ説明していた。両辺から6を引く図を見たあと、等しい関係を保つためと言えた。次は引き算を含む式で自力の説明を確かめる」という形です。これなら、できたことと次の課題がつながります。

自立したかどうかは、講師と一緒に説明できた直後だけで判断しません。次の授業では最初にヒントを出さず、数や図の向きを変えた問題で同じ理由を使えるかを見ます。自力で使えれば確認する頻度を下げ、理由は言えても問題に当てはめられなければ、条件を拾う練習を残します。講師の問いに答えた回数ではなく、本人が必要な理由を取り出せたかを支援の調整に使います。この確認を記録に添えることで、前回できたのに戻ったように見える場合も、手がかりの違いから検討できます。

保護者への報告も、「理解が深まりました」だけでは判断しにくいものです。「式は正しく解けますが、割る数が0でないことにはまだ手がかりが要ります」と具体化すれば、今すぐ自立してできる範囲が伝わります。正解が増える前の変化も、言えた理由と必要な支援の両方から捉えられます。

5. よくある誤解 Q&A

Q1. 数学が苦手なのに、説明まで増やすと重くなりませんか

増やしすぎれば負担になります。最初から全問に解説文を付けるのではなく、1問の中の1行に絞ってください。計算そのものに手いっぱいなら、解答を見ながら「どちらの辺にも同じ操作をする」と指さすところから始めます。説明できない状態で長く考え込ませるより、必要な知識へ戻る方が次の作業が明確になります。

家で始めるときも、普段の演習に作業を積み上げるだけにしないことが必要です。同じ型を繰り返すうちの1問を、理由まで確かめる問題に置き換える方法があります。途中で時間が足りなくなるなら、塾に量の調整を相談してください。丁寧に説明する問題と、計算を滑らかに行う問題を分けて取り組みます。

Q2. 話すのが苦手な子でも取り組めますか

流暢に話せることを合格条件にする必要はありません。式の左右を同じ色で囲む、図の平行の印から等しい角へ矢印を引く、「両辺から6」のように短く書く方法も使えます。ただし、色や矢印を付けただけで理解したと決めず、それがどの操作や条件を指しているかは確かめます。

「だから」「この条件があるので」の後に語句を足す形からでも始められます。言葉が出にくいときは、講師が説明の候補を示し、式に合う方を選んでもらう方法もあります。その後、候補を隠して別の式でも判断できるかを見ます。発表の上手さと数学の理解を分けて受け止めてください。

Q3. 定期試験の前も、すべての理由を説明すべきですか

すべての行で立ち止まる必要はありません。自力で理由を言え、別の問題でも使えている操作は、通常の演習を進めます。解答を見たら納得するのに、1人では同じ所で止まる問題や、条件が変わると選べなくなる問題を優先します。説明の時間を置く場所を選ぶことも、この勉強の一部です。

試験が近いときは、苦手な問題から判断の分かれ目を1つ選び、その理由を確かめたあと、時間を区切って解く練習に戻します。理由を知っていることと、限られた時間内に最後まで処理できることは、別々に確認が要ります。説明を終えた問題が実際に解けるかまで見て、次の課題を決めます。

6. 答えの隣に、自分で選んだ理由を残す

自己説明は、数学のノートを文章で埋める勉強ではありません。「何をしたか」「何のためか」「どの条件があるからよいか」を、1つの式に結び付ける勉強です。まずは今日の宿題から、理由を言いにくい行を1つ選び、短く説明してから正しさを確かめてみてください。

保護者の方は、お子さまが止まったときに、わからない場所を示せたことにも目を向けていただければと思います。塾はその問いを受け取り、必要な知識とつなぎ、次はどの手がかりを外せるかを考えます。問題集のページ数だけでは見えない判断の変化を、毎回の指導につなげます。

宿題を出す側には、その量で何を確かめるのかを説明する責任があります。宿題を増やす判断には、本人が書いた式と理由のつながりを根拠に据えます。

参考文献


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