英文法の解説はわかるのに問題で止まるときは、解答までの判断を読む練習から。完成例、穴埋め、自力演習の切り替えを、最初の語を自分で選べるかという目印で判断しましょう。

英文法は「解ける例」から—初めての単元は解答例を読んでから解く
1. 導入:解説を読んだのに、最初の問題で手が止まる
よくあるのは、教室のホワイトボードに書かれた疑問文を見て「これはわかる」とうなずいた生徒が、手元の並べ替え問題では最初の語を決められないという場面です。説明を聞いた直後なので、保護者の方も「さっき理解したはずなのに」と感じるかもしれません。けれども、完成した英文を見て納得することと、必要な形を選んで組み立てることの間には、練習で埋める段差があります。
初めての文法単元で、この段差を問題数だけで越えようとすると、どこから考えるかが曖昧なまま丸つけに進みがちです。正解を写したノートは増えても、次の問題で同じところに戻ってしまいます。そんなときに試したいのが、答えだけでなく、答えに至る判断が見える「解答例」を先に読む方法です。
ただ眺めてから解くのではありません。何を手がかりにし、どの順番で判断したかを短く確かめ、少しずつ自分が担当する部分を増やします。ここでは、中学生の疑問文を中心に、高校の新しい単元にも持ち込める学び方を考えます。

2. 解答例は、考える順番を見えるようにする
英文法の問題では、いくつもの判断が重なります。日本語が尋ねている内容を読み取り、主語を決め、時を確かめ、動詞の形と語順を選びます。知らない単語まで含まれていれば、その意味も調べる必要があります。初めて習う文法でつまずいたときは、規則を忘れたのか、規則を使う場所を見つけられないのかを分けて考えたいところです。
人がその場で情報を扱う働きは、認知科学ではワーキングメモリと呼ばれます。ここでは、考え途中の情報を置いておく小さな作業机として捉えてください。英文を組み立てる手順が定まっていないと、どの語を使うか探すことに気を取られ、動詞を原形にする判断まで手が回らないことがあります。解答例は、その机の上に判断の道筋を置く役割を果たします。
大切なのは、完成した英文だけを載せたものと、判断を示した解答例を区別することです。「Does she play tennis?」だけでは、なぜDoesなのか、なぜplaysではないのかは見えません。「現在の習慣を尋ねる」「主語はshe」「一般動詞の疑問文なのでDoesを先頭に置く」「後ろの動詞は原形」という道筋が並んでいれば、読み手は自分が迷った判断を探せます。
解答例の使い方は、持っている知識によって変える必要があります。解答例の完成度と学習者の知識を対応させた実験では、知識の乏しい段階には全手順を示す形が、知識のある段階には一部を埋める形が適していました(Zhengほか・2020)。160名で行われたこの実験は英文法への効果を直接示すものではなく、ここでは理解に応じて例の見せ方を変える際の参考にします。
この考えを英文法に応用すると、初回は判断をすべて示し、慣れてきたら「主語を見て、文頭に何を置くか」の部分を本人に任せる、といった調整が考えられます。支えを減らす基準は学年や授業回数ではなく、その判断を自分でできたかです。説明を読める生徒にも、実際には必要な規則を選ぶ段階で支えが要ることがあります。
また、例を読む活動だけで終わらせないことも重要です。読んで終える条件より、問題を解く活動も組み込む条件の方が成績が高かったという研究があります(Zeitlhoferほか・2026)。124名を対象にした研究で、ここから英文法に最適な練習時間までは定まりませんが、例を理解した後に自分で解く時間を確保する根拠になります。
そこで、以下では「完成例を読む」「一部を補う」「例を閉じて解く」という順番を提案します。これは研究の実施手順をそのまま再現するものではなく、英文法の家庭学習に使うための組み立てです。読む段階で安心を得て、補う段階で理解の穴を見つけ、自力で解く段階で支えを外せるか確かめます。
3. 今日からできる、例を読んで自分で解く手順
まずは、狭い目標と使うページを決めます
最初の目標は「疑問文を全部できるようにする」では広すぎます。「現在の習慣を表す一般動詞の文で、主語がheかsheのときに疑問文を作る」くらいに絞ってください。すでに知っている単語を使うと、今日確かめたい文法の判断に集中しやすくなります。新出単語と新しい文法を一度に増やす必要はありません。
教材は、手元の教科書の例文、問題集の解説、ノートに残した授業の説明から選べます。完成文が載っているだけなら、その横に「何を見てこの形を選んだか」を補います。別の教材を何冊も開くより、例文と説明を同じ見開きに置き、対応する語を指で追えるようにしてください。
時間の区切りとして、準備に2分、完成例を読むのに4分、一部を補うのに4分、自力で解くのに5分、丸つけと記録に3分を置いてみます。この配分は始めるための目安です。区切りが来たら、無理に次へ進むのではなく、止まった箇所に印をつけて、その日の取り組みを整理します。
完成例では、答えより判断の順番を読みます
たとえば、「She plays tennis after school.を疑問文にしなさい」という問題を使います。もとの文は「彼女は放課後にテニスをします」という習慣を表し、動詞はplaysです。次のように、判断と結果を対にした完成例を用意します。
- 現在の習慣について尋ねる文に変えるので、一般動詞の現在形の疑問文を使います。
- 主語はsheなので、文頭にDoesを置き、続けて主語のsheを書きます。
- Doesの後ろでは一般動詞を原形にするので、playsをplayに変えます。
- 残りのtennis after schoolを続け、最後に疑問符を置きます。
完成文は「Does she play tennis after school?」です。読みながら、もとの文のShe、playsと、完成文のDoes、she、playの関係を確かめてください。文頭の大文字や疑問符も見ますが、最初は「Doesを選ぶこと」と「playに戻すこと」を別々の判断として読むのが要点です。
自分で確かめる最初の方法は、説明の行を指で隠し、完成文を見ながら「Doesを選んだ理由」を言うことです。「疑問文だから」だけで止まったら、「主語は何か」「動詞はbe動詞か一般動詞か」まで戻ります。長い説明は要りません。「主語がsheで、現在の一般動詞の疑問文だから」と言えれば、確かめる対象が明確になります。
次は、playsから消えたsがどこに関係しているかを説明します。「疑問文では全部sを取る」と覚えると、別の語まで機械的に変える恐れがあります。「Doesを使うので、後ろの一般動詞を原形にする」と結びつけてください。説明は、問題の中の具体的な語を指しながら行うと曖昧になりにくくなります。
穴埋めでは、自分の担当を少しずつ増やします
次に、完成例の一部を隠します。まずは「Does she( )tennis after school?」の空欄だけを埋め、その後で「( )she play tennis after school?」を埋めます。両方を一度に隠さず、動詞の形と文頭の語のどちらで迷うのかを確かめてください。
ここでの教材の使い方は、答えの上に紙を置く方法で十分です。書き込みを増やしすぎず、紙をずらせば必要な説明だけ読めるようにします。最初から解答全体を隠して動けなくなるなら、主語を示す行だけ残してもかまいません。支えの有無を細かく変えられることが、解答例を使う利点です。
2つ目の自己確認は、隠す場所を変えても補えるかを見ることです。いつも同じ空欄だけなら、語の位置を覚えている可能性があります。文頭を補う回と動詞を補う回を分け、それぞれ理由を一言添えます。理由が言えないときは、できなかった場所だけ完成例に戻って読みます。
慣れたら、「He reads books after dinner.」を疑問文にします。単語が読めることを確かめたうえで、最初は「主語→文頭の語→動詞の形」という判断の見出しを残します。完成文は「Does he read books after dinner?」です。元の例と同じ判断を、別の語にも使えるかを見る段階です。
例を閉じたら、少しだけ条件を変えます
次は例を閉じ、まだ答えを書いていない問題を解きます。「She likes music.」を疑問文にするなら、「Does she like music?」になります。解く前に完成文を思い浮かべられなくても、主語と動詞に印をつけ、最初に決めることから進めればかまいません。
3つ目の自己確認は、書いた英文を日本語の意味と照らすことです。誰について尋ねているのか、もとの習慣を尋ねる文になっているかを確かめます。そのうえで文頭の語と動詞の形を別々に見直してください。解答との見た目が似ているかだけではなく、必要な判断を通ったかを確認します。
ここまでできたら、主語をtheyに変えた「They like music.」も扱います。正しくは「Do they like music?」で、主語が変わると文頭の語も変わります。さっきと同じDoesを置いてしまうなら、完成文の形を覚えることと、主語に応じて形を選ぶことがまだつながっていません。例の主語を比較する段階へ戻ってください。
もう1つ確かめたいのが、問題の指示を外しても形を選べるかです。「疑問文にしなさい」と書かれた問題だけに慣れたら、次の段階では「彼女が音楽を好きか、相手に尋ねたい」という意味から英文を作ってみます。使う単語が難しければ、she、like、musicを先に示してかまいません。指示の言葉がなくても、何を伝える文なのかを考えて形を選べるかを見る課題です。
正しい英文を声に出して読むこともできますが、音読できたことだけで文法の確認を終えないようにします。読んだあとに主語を指し、「この文では、なぜDoesなのか」を短く確かめてください。声に出す活動と、形を選んだ理由を確かめる活動をつなぐと、口が覚えた文を再現しているだけなのか、自分で組み立てられるのかを見分ける材料になります。
過去形やbe動詞の疑問文まで同じ日に広げる必要はありません。まずは同じ規則を別の単語で使い、その後に条件の違いを扱います。解けた数が少なくても、何を変えたら答えが変わるかを確かめられれば、次に練習すべきところを決められます。
丸つけは、戻る場所を決める時間にします
最後の3分では、誤答の下に正解を何度も書く代わりに、迷った判断を短く残します。「Doesは選べたがplaysにした」「主語theyでもDoesを置いた」「単語の意味で止まった」のように書き分けてください。どれも不正解ですが、次に読む説明は違います。
書き直した後は、答えを隠してもう一度組み立てます。直前に見た形を再現できたら、その日の修正はできています。次の学習の冒頭には別の短い文で確かめ、同じ判断を自分で使えるか見ます。その場で直せたことと、次の機会にも使えたことを、記録では分けておきます。
途中で時間が来た場合は、解けなかった問題を白紙のままにするより、「主語には印をつけた」「文頭の語で止まった」と考えた位置を残します。次に開いたとき、最初からやり直すか、その判断から再開するかを選べるからです。自力で進めなかった箇所が残れば、授業で質問するときにも、何を教えてほしいかを伝えやすくなります。
たとえば記録欄は「読んだ例」「自分で補えた部分」「次に確かめる部分」の3つで足ります。「疑問文を勉強した」だけより、「Doesの後ろを原形にできるか確認する」と残した方が再開しやすくなります。ノートを整える時間が長くなったら、文を短くして、実際に考える時間を確保してください。

4. 個別指導では、どの支えを外すかを塾が判断します
正誤の奥にある、止まった判断を見ます
個別指導で塾が引き受けるべきなのは、丸つけの後に同じ解説を繰り返すことだけではありません。問題を前にした生徒が、どこを読み、何を決め、どこで止まったかを見ます。答えが間違っていても主語を見抜けているなら、その部分の説明を重ねる必要はなく、次の動詞の判断に時間を使えます。
反対に、正解していても「前の問題と同じだから」と答えたなら、規則を選べたかはまだ判断できません。主語だけを変えた短い問題を出し、文頭の語を選び直せるか確かめます。試す条件を小さく変えることで、知識が足りないのか、似た形をそのまま写しているのかを見分けやすくします。
「英語が苦手」という大きな評価だけでは、授業の次の一手が決まりません。「主語は見つかる」「一般動詞とbe動詞が混ざる」「Doesを置いた後もsを残す」と分けると、読むべき例と練習する問題が具体的になります。塾が持つべきなのは、この見立てと、見立てを確かめる小さな課題です。
完成例、穴埋め、自力演習の境目を調整します
完成例をいつまで使うかも、塾が確かめたい部分です。自力で判断できる生徒に説明を全部読ませ続けると、すでにできる箇所に時間を使ってしまいます。一方で、主語を拾う段階で迷っている生徒から解説を外せば、手が止まる時間が増えます。支えを一律に減らすのではなく、判断ごとに残すか外すかを決めます。
たとえば、文頭のDoesは自分で選べるけれども、動詞の原形を忘れる場合があります。このときは疑問文の説明を最初から読み直すより、Doesと原形を結ぶ行を残した穴埋めが候補になります。逆に原形にはできるのにDoとDoesで迷うなら、主語を見比べる例を置きます。同じ単元の生徒でも、机に置く説明は変わります。
家庭に出す課題にも、その調整を反映します。「このページを全部」ではなく、「この完成例を読んでから、この空欄を補い、最後の問題だけは例を閉じる」と順番を示します。家庭で迷いが出たときに開く説明の場所まで決まっていれば、保護者の方がその場で講師役を引き受ける必要はありません。
保護者の方には、判断できた部分が伝わる形にします
進み具合の記録は、正答数だけでなく、使った支えも一緒に残す必要があります。「完成例を見ながら正解」「判断の見出しだけで正解」「例を閉じても正解」は、同じ丸でも意味が違います。学習日とともにこの違いを残すと、前より少ない支えで考えられたことを捉えられます。
保護者の方への共有も、「疑問文を復習しました」だけで終わらせず、今できる判断と次に確かめる判断をつなぎます。たとえば「主語からDoとDoesを選べるようになったので、次は動詞を原形に戻すところまで説明なしで行えるか見ます」と伝えます。予定ページの消化では見えにくい変化が、家庭でもわかる形になります。
家庭にお願いしたいのは、取り組む時間と教材を置く場所を決めること、止まった箇所に印をつけて持ち帰らせることです。「どうしてできないの」と理由を問い詰める代わりに、「どの行を見直すと続けられそうか」と聞いてみてください。本人が説明できない箇所は、保護者の方が解き明かさず、そのまま授業に渡してかまいません。
高校の単元でも、文が長いことと判断の難しさを分けます
高校で新しい文法を学ぶときも、いきなり長い英文に取り組む前に、何を判断する単元なのかを絞ります。たとえば関係代名詞なら、まずどの名詞を説明しているのか、説明する節の中で何の役割が欠けているのかを示した短い解答例が考えられます。単語の難しさを抑え、今回の判断が見える文から始めます。
その後に、説明する部分が長い文や、別の文法が含まれる文へ広げます。短い例だけで終わらせるのではなく、身につけた判断が長い文の中でも使えるかを確かめるためです。塾は、易しい問題で安心できた段階と、条件が変わっても使えた段階を区別して、次の課題を選ぶ必要があります。
5. よくある誤解 Q&A
Q1 答えを先に読むと、自分で考えなくなりませんか
読むだけで終われば、その心配は残ります。そこで、解答例を開くときから「後でどの部分を自分で補うか」を決めておきます。最初は完成した判断を読み、次は動詞の形を補い、最後に例を閉じて別の文を作るなら、読むことが考える準備になります。
保護者の方は、読んだ後のノートの量より、少し条件を変えた問いに答えられるかを見てください。「sheをtheyにしたら何が変わるか」に説明を添えられれば、少なくとも主語と文頭の語を結びつけて考えています。うまく答えられないときは、読むことを禁止せず、どの判断を読み落としたかに戻ります。
Q2 学校の宿題が多く、例を読む時間まで取れません
全部の問題の前に長い解説を読む必要はありません。手が止まる型について完成例を選び、似た問題に入る前に判断を確かめます。すでに理由を説明できる問題まで毎回同じ手順を踏まず、初めての形や、同じ間違いが続く箇所に時間を使ってください。
提出範囲そのものを生徒だけで変更するのは避け、学習の順番を調整します。負担が続くなら、止まった問題と、解説を読んでもわからない行を塾に持ってきてください。塾側が課題を出す際には、例を読む時間も含めた量にし、終わらなかった事実を意欲の問題だけで片づけないことが必要です。
Q3 解答例を見ても意味がわからないときはどうしますか
説明の言葉そのものが難しい可能性があります。「原形」「一般動詞」「主語」が指すものを、その例文の中で示せるか確かめてください。英文中の語を指せない状態では、説明を繰り返し読んでも判断の手がかりをつかみにくくなります。わからない用語に印をつければ、質問する場所が決まります。
単語の意味が原因なら、まず短くて意味のわかる例へ戻ります。説明はわかるのに複数の判断を続けられないなら、空欄を減らして一度に補う部分を小さくします。「例を読む方法が合わない」と結論を急ぐ前に、語彙、用語、判断の量のどこを調整すると続けられるかを見ます。
6. 最初の判断を、自分の手に戻すために
英文法を初めて学ぶとき、解答例を使うことは、学びの出発点を整える方法です。どこを見るかがわかれば、正解できなかったときにも、戻る場所を選べます。家庭ではまず、例を1つ読み、判断を1つ補い、例を閉じて短い文を1つ作るところから始めてください。
進歩の目印は、説明を読んだ量だけでなく、前は必要だった説明を少し外しても考えられるようになることです。保護者の方にも、その変化が見える記録を渡したいと考えます。解答例を閉じて選んだ最初の語に、その授業で渡せた理解が表れます。
参考文献
- Zhengほか(2020), European Journal of STEM Education. https://consensus.app/papers/details/331ff6fad26c5afd82f9932e82317efa/
- Zeitlhoferほか(2026), International Journal of Educational Research. https://consensus.app/papers/details/35130ff7bb305762865d98e4b6ecaec1/





