科学者の苦労を読む授業では、発見だけを読む授業より高校生の科学学習が改善しました。動機づけの研究では、自分なりの価値を感じることが学習の継続と強く関連しています。家庭では、親の経験を話したあとに、子どもが試したい行動へ話を戻します。
答案を前に、子どもが「どうせ自分には無理」と言います。親は励まそうとして、自分も昔はできなかったと話し始めます。ところが、いつの間にか親の努力の話が長くなり、子どもの手は止まったままになります。失敗談を語るなら、話の主役を最後に子どもへ返します。
今回の中心は、偉大な科学者の苦労を高校生が読む研究です。動機づけの研究を隣に置くと、何を話せばよいかより先に、何を子どもに考えてもらうかという問いが見えてきます。
1. 論文を役割で並べる
Lin-Sieglerほか(2016)は、科学者の知的な失敗、生活上の苦労、発見だけを描いた物語を比べています。失敗や苦労を乗り越える過程を読んだ条件では、科学学習が改善したと報告しています [1]。対象は高校の生徒で、もともと成績が低い生徒で効果がより強かったです。大人の苦労を学習につなぐ直接の手がかりとなる研究です。
Howardほか(2021)は、学習に自分なりの価値を感じる動機が、学習の継続ととくに強く関連すると報告します [2]。内発的な動機は成功や良好な状態と関連し、報酬を得る、罰を避けるという動機は成績や継続と関連しませんでしたが、良好な状態の低さとは関連していました。これは失敗談の実験ではなく、話のあとに残したい動機を考える周辺証拠です。
Bureauほか(2021)は、教師の自律性支援が、親の自律性支援よりも、生徒の心理的欲求の充足と自己決定的な動機を強く予測すると報告します [3]。自己決定的な動機の予測では、有能感、自律性、関係性の順に関連が強かったです。家庭と学校の支援を区別して読む論文です。
2. 成功談より、苦労の話がよいのか?
中心の研究は、才能がある人だけが科学で成功するという見方に働きかけるために設計されました。知的な苦労の話には、研究で間違え、その間違いを努力で乗り越える過程が含まれます。生活上の苦労の話には、貧困や親からの支援の不足を乗り越える過程が含まれます。どちらの条件も、発見だけを読んだ条件より、介入後の科学学習が改善しました [1]。
研究では、物語にどんな過程が描かれたかを比べています。成功までの途中が見える話と、発見の結果だけが見える話を比べています。家庭で取り入れるなら、「昔はできなかった」で止めず、何を間違え、何を変えたかまで話します。家庭の会話では、本人の課題へ戻ることを具体的な目標にします。
苦労の話を読んだ生徒は、科学者や物語とのつながりも感じやすかったです [1]。科学者とのつながりの感覚は、学習改善とは別の結果として読みます。共感できたから必ず点数が上がる、とつなげず、子どもがどの過程に目を留めたかを聞きましょう。
科学者の物語には、知的な失敗を乗り越える過程と、生活上の苦労を乗り越える過程がありました。発見だけを読む条件との違いは、成功するまでの途中が見えることです。家庭で経験を話すなら、間違えた箇所、試した方法、その後に変えたことを言葉にします。話の終わりで子どもの答案へ戻り、本人がいま取り組みたいところを聞きます。[1]
科学者の物語を読む研究は 402人の高校生を対象にしています。知的な苦労には調査の間違いと努力による克服、生活上の苦労には貧困や親の支援の乏しさとその克服が含まれました。動機づけのメタ分析は344の標本をまとめています。前者の授業での比較と、後者の動機の種類ごとの関連は、研究の方法と結果を分けて読めます。[1][2]
3. 親の話を、子どもの挑戦へどう返すか?
「自分も努力した。だからあなたもやりなさい」では、親の経験が命令の根拠になります。Howardほかの研究では、自分の価値と結びついた動機が継続と強く関連していました [2]。家庭での問いは、「親のようにできるか」より、「自分は何をできるようになりたいか」に置きます。
たとえば親が、解き方を覚えても問題が変わると使えなかった経験を短く話したあと、「今の問題なら、どこを自分の言葉で説明したい?」と聞きます。本人が望むことと、目の前の課題をつなぐための問いです。親の苦労の大きさを比べる必要はありません。話した内容より、子どもが自分の課題に戻れたかを確認します。
研究は、興味から動くことと、価値を感じて動くことも区別します [2]。すべての勉強を楽しく感じることを目標にしなくてよいです。子どもが学ぶ理由をどう捉えているかを聞き、親が用意した理由をそのまま復唱させる会話から離れます。
学習に価値を感じる動機と、興味から学ぶ動機は分けて読みます。継続との関連を考えるときは、本人が学ぶ意味をどう説明するかを聞きます。親の経験を聞いたあと、似ていた点、違った点、自分の課題に関係した点を話してもらいます。親と同じ苦労をしたかを比べるより、子どもが自分の学習について何を選びたいかへ会話をつなぎます。[2]
4. 年齢や教科が変わっても同じか?
科学者の物語の研究は高校生の科学学習を扱います [1]。中学受験の算数、小学生の漢字、親子の口頭の会話は、対象も教材も違います。日本の家庭で使うときは、題材を本人の学習に合わせるという実務の判断が必要です。
教師と親の自律性支援の関連の強さを区別して読みます [3]。家庭で話を聞くことと、授業でできる手応えを得ることを競争させません。親が気づいたつまずきを学習の担当者へ伝え、本人がどこまで説明できるかを確かめる場へつなぎます。
心理的な欲求の研究では、有能感、自律性、関係性が自己決定的な動機と結び付いています。家庭では、本人が説明できた内容を具体的に聞き、次に扱う課題への希望も聞きます。授業での支援を考えるときは、親が気づいたつまずきを学習の担当者へ伝えます。親の話の長さではなく、本人が自分の問題へ戻る場を、家庭と授業のそれぞれに用意します。[3]
【反証】この回が言えないこと
直接の実験は、親自身の失敗の開示ではなく、高校生が科学者の物語を読む授業です。親の口頭の会話、中学受験の算数、小学生の漢字に同じ効果があるとは言えません。科学者とのつながりだけが改善の原因だったとも示されていません。[1]
親の失敗談の長さや回数、日本の受験への効果は今回の研究にありません。動機の種類の関連を、個々の励ましや報酬が必ず逆効果になるという判断に変えません。ここで示す家庭の問いかけと復習の手順は、失敗談の研究で比較した介入ではありません。[2][3]
実務——家でできる 3 つの確認
まず、親の話に「間違えたところ」と「変えた行動」が入っているかを確認します。苦労の量を誇る話にせず、子どもが自分の課題へ移れる材料として話しましょう。
次に、話のあとで子どもが教材を閉じ、自分のつまずきを説明できるか確かめます。武蔵野個別指導塾が採用するアクティブリコールを、ここでは理解の確認に使います。説明できなかった箇所を、親の昔話で埋めません。
最後に、日をあけて同じ箇所をもう一度説明する場を決めます。説明できた内容と止まった内容を、次の復習に引き継ぎます。完全1対1の授業では本人の説明を確かめます。学習の組み立ては武蔵境の大学受験へご相談ください。具体的な復習の置き方は復習の間隔を実際にどう決めるかも参照してください。
よくある質問
Q. 親も失敗したと伝えれば、やる気は上がりますか?
この研究は、親の失敗談そのものの効果を調べていません。科学者の苦労を読む授業の結果は、成功までの過程を話題にする材料として読みます。[1]
Q. 成績がよい子にも使えますか?
研究には成績がよい生徒も含まれますが、改善は成績が低い生徒でより強かったです。学ぶ内容の理解は、本人の説明で確かめます。[1]
Q. どんな言葉で終えればよいですか?
「あなたは次にどこを試したい?」と、本人の課題へ返します。自分なりの価値と学習の継続の関連を、子どもの理由を聞く手掛かりにします。[2]
出典
- Even Einstein Struggled: Effects of Learning About Great Scientists’ Struggles on High School Students’ Motivation to Learn Science(Xiaodong Lin-Sieglerほか、2016、Journal of Educational Psychology)
- Student Motivation and Associated Outcomes: A Meta-Analysis From Self-Determination Theory(Joshua L. Howardほか、2021、Perspectives on Psychological Science)
- Pathways to Student Motivation: A Meta-Analysis of Antecedents of Autonomous and Controlled Motivations(Julien S. Bureauほか、2021、Review of Educational Research)



