苦手科目で手が止まるときは、解答例の使い方から見直せます。完成した解答を読む段階、一部を埋める段階、自力で解く段階を、テスト3週間前からの計画に落とし込みましょう。

苦手科目から始める順番—解答例と問題解決の組み合わせ
苦手科目を開いたのに、最初の問題で止まるとき
よくあるのは、自習室の時計の下でお子さまが、数学のワークを開いたまま「まだ最初の問題」とつぶやく場面です。今日は苦手科目から始めると決めていました。それでも、式をどこから書けばよいかわからず、消しゴムで同じ場所を何度も消しています。横にある得意科目なら進められそうですが、先に移ると逃げたような気持ちになり、ページを閉じることもできません。
保護者の方から見ると、まず取り組もうとした姿勢はうれしい一方で、この調子で試験範囲が終わるのか心配になるでしょう。「もう少し考えて」と励ますか、「答えを見て」と伝えるかも迷うところです。ここで見直したいのは、努力の量とともに、問題に向かう順番です。
苦手科目から始めることと、最初から何も見ずに解くことは別です。手順がまだ身についていない内容では、完成した解答を読み、途中を補い、最後に自力で解く道筋を用意できます。定期テストまでの時間を、止まったまま耐える時間から、自分で進める部分を増やす時間へ変えていきましょう。

解答例を先に読むことが、考える準備になる理由
「解答を見ると考える力がつかない」という心配には、もっともな面があります。答えだけを写して終えれば、次の問題で何をすればよいかは残りません。ただ、解答例には正答のほかに、問題文のどの条件に着目し、何を使い、どの順に処理したかという道筋があります。その道筋を学ぶ使い方と、正答を埋めるための使い方を分けて考えてください。
たとえば方程式の文章題なら、求める量を決め、文字で表し、数量の関係を式にする作業があります。計算自体はできても、何を文字にするかが決まらなければ先へ進めません。そこで計算問題を増やすだけでは、止まっている箇所を通り過ぎてしまいます。完成した解答例を使う意味は、自分に欠けている手順を、実際の問題と結びつけて見ることにあります。
解答例の形は、学習者がすでに持っている知識に合わせて選ぶ必要があります。Zhengらの研究では、知識が少ない学習者には完全な解答例が、知識がある学習者には一部を補う解答例が有効とされています(Zhengら・2020)。160名を対象にしたこの研究の焦点は知識の状態に応じた解答例の形であって、科目を始める順番の比較ではありません。苦手科目への応用では、先に取り組むという約束と、そこで使う支えの選択を分けて考えます。
この違いを勉強に置き換えると、手順そのものが見えない段階で空欄ばかりの問題を渡すと、埋めるための足場がありません。一方で、ある程度わかっているのに全部の手順を眺め続けていると、自分で選んで書く機会が少なくなります。解答例は、いつでも全部見せればよいものでも、早く隠せばよいものでもありません。今どこまでできるかによって、見せる場所を変えます。
判断の単位は「数学が苦手」といった科目全体より、小さくしてください。同じお子さまでも、文字式の計算は自力ででき、文章から式を作るところでは完成例が必要かもしれません。英語でも、語句の意味はわかるのに文の並べ方で止まることがあります。苦手という言葉を、その日の勉強を選べる大きさまで分けることが、最初の準備です。
また、解説を読んで納得することと、解説を閉じて手順を選ぶことは、確かめ方が違います。「読めばわかる」状態を責める必要はありません。ただし、その感覚だけを終了の合図にせず、一部を隠したときに続きが書けるか、条件が変わっても同じ考え方を使えるかを見ます。読む時間のあとに、小さな確認を置くことが大切です。
学校の課題量やその日の状態を見て、取り組む時間を調整してください。「苦手から始める」は、苦手科目で夜の全部を使い切るという意味ではありません。入口の短い時間を先に確保し、その中で必要な支えを使いながら進む、という約束にすると実行しやすくなります。
テスト3週間前から、支えを少しずつ減らす手順
3週間前は、苦手を問題の種類に分ける
まず、学校から示された試験範囲と提出課題を確認し、教科書、授業のノート、学校のワークを手元に置きます。新しい教材を増やす前に、習った内容と解答例の場所を対応させてください。ワークの問題番号の横に、参考にする教科書のページを書けば、止まったときに探す場所が決まります。解答が答えだけの場合は、授業で扱った途中式のある例を探します。
次に、範囲に入る基本問題を種類ごとに選び、短く試します。問題を読んで最初の操作が思いつくかを見て、着手できないもの、途中まで進むもの、最後まで進むものに分けてください。ここでは難問を選ぶ必要はありません。問題番号と「式を作れない」「符号の処理で迷う」のような停止箇所を残します。正解か不正解かだけの記録より、次の勉強を選びやすくなります。
この確認をもとに、最初に取り組む内容を決めます。試験範囲の基礎になり、似た問題が学校の課題にあり、解答例を使えば手順を追える内容を入口にします。いちばん難しい問題を最優先にする必要はありません。提出日が迫る課題があれば、その期限も一緒に見ます。苦手の深さだけで予定を決めると、ほかの科目や提出物の時間が残らなくなります。
最初の学習は、準備に5分、完成した解答例を読む時間に10分、確認と記録に5分という区切りから試せます。解答例を読むときは、問題文にある条件と、それを使った解答の行を指で対応させてください。式の横に「同じ量を両辺から引く」のような理由を短く添えます。きれいな説明を書こうとせず、自分があとで読んで意味を思い出せる言葉で十分です。
読み終えたら、解答を伏せて「最初に何を決めるか」を声に出すか、余白に書きます。全体を再現できなくても、最初の操作が言えれば、何も見えなかった状態から一歩進んでいます。言えなければ、その箇所だけ開き直してください。完成例を何度も丸ごと写す代わりに、わからなかった行と、その前の行のつながりに戻ります。
たとえば「式を立てるところが苦手」と記録した場合、解答の計算部分を長く読む必要はありません。問題文のどの表現が、式のどの部分に対応するのかを線で結びます。「合計」「残り」「同じ数ずつ」といった言葉を見つけたら、それだけで式を決めず、何と何の関係なのかまで確認します。記号の形を覚える前に、書かれている関係を自分の言葉に直すことが目的です。
英語でこの流れを使うなら、完成した英文と日本語の意味を対応させ、主語や動詞がどこにあるかを確かめます。次に語句の一部を隠し、最後に別の内容を同じ文の形で表します。理科の計算なら、与えられた量と求める量を分け、式に入れる前に単位をそろえる箇所を見ます。科目をまたいで同じ作業を押しつけず、その問題で選ぶ必要のある手順を取り出してください。
2週間前は、解答例の一部を自分で埋める
完成例の流れを説明できる内容から、穴あきの解答例に移ります。教材に専用の問題がなくても、紙で解答の1行を覆えば始められます。最初は最後の計算や結論だけを隠し、そこが書けたら途中の式を隠します。いきなり問題文以外を全部覆わず、見えている前後のつながりから考えられる量にしてください。
この時期は、例の確認に5分、隠した部分を埋める練習に10分、近い問題を解く時間に10分、記録に5分を目安にできます。途中で止まったときは、すぐに全部を開くのではなく、必要な直前の1行を見ます。見た場所には小さな印をつけておくと、答えが合っていても支えが必要だった部分をあとから区別できます。
教材の使い方も段階に合わせます。教科書は考え方の出発点を確かめるために、ノートは授業で説明された言葉を確かめるために、ワークは条件を変えて試すために使います。同じ内容を全部の教材で最初からやり直す必要はありません。止まった理由に合うものを開き、確認が済んだら解いていた問題へ戻ってください。
近い問題では、例と何が同じで何が違うかを先に書きます。数字だけが変わったのか、求める量が変わったのか、条件の並び方が違うのかを見るのです。解答例の数字だけを入れ替えていると、問題の関係が変わったことを見落とします。「なぜこの式を使うのか」を短く説明してから計算すれば、手順を選べているかを確かめられます。
確認は、その場の正解だけで終えません。次の学習日に、前回の解答を見ずに同じ種類の問題を解いてみます。最初の式が書けるか、途中の理由が説明できるか、最後に問題で聞かれたものを答えているかを確認してください。難しかった箇所だけ解答例に戻ればよく、科目全体を最初の段階へ戻す必要はありません。
予定の時間内に終わらなかった日は、翌日に残りを全部上乗せしないようにします。進まなかった理由が、解答例を探すことなのか、説明の意味を読むことなのか、実際に解くことなのかを記録してください。探す時間が長ければ参照先を決め直し、読む段階で止まれば質問する箇所を囲みます。解く量が多すぎたなら問題数を減らし、同じ種類の確認を残します。遅れというひとつの言葉で片づけず、次の予定を直せる情報に変えます。
1週間前は、解答を閉じて選ぶ練習をする
ここからは、支えを外した基本問題を学習の中心にします。ただし、すべての単元を一律に移すのではなく、自力で進める種類と完成例が必要な種類を分けます。最初の10分で基本問題を解き、次の10分で答え合わせと停止箇所の確認をし、最後の5分で次回の問題を決める進め方が使えます。時間が短い日は、問題数を絞ってこの流れを保ちます。
自力で解く時間には、解答例とノートを閉じます。例を横に置いたまま正解した問題は、支えなしで解けた問題と区別してください。丸つけでは答えだけでなく、条件を書き落としていないか、途中の説明が飛んでいないか、単位や答え方が合っているかも見ます。誤りを見つけたら正答を写す前に、自分の解答のどの行から直すかを決めます。
また、単元名や解法名を見て方法を選んでいないかも確かめます。練習した基本問題をいくつか選び、別の紙に問題番号だけ並べ、解き方の見出しを手がかりにせず着手してみてください。方法を迷った問題は、解答例の冒頭に戻り、「この条件だからこの考え方を使う」と説明します。ここでも、難しい問題を大量に追加することが目的ではありません。
前日には、新しい難問で予定を広げず、印の残っている基本問題と提出物の状態を確認します。自力で進めた問題は確認を短くし、まだ支えが必要な問題は最初の手順を確かめます。終える時刻も先に決めてください。苦手科目の時間を区切ったあとには、ほかの科目の確認を入れます。苦手への取り組みを続けるためにも、毎晩の学習全体が収まる予定にします。

個別指導では、どこを見せてどこを任せるかを調整する
個別指導で塾が持つべきなのは、問題を解説する時間だけではありません。今のお子さまには完成した解答が必要なのか、途中を埋めれば進めるのか、もう一人で試す段階なのかを見立てることも含まれます。「苦手科目を頑張りましょう」で終わらせず、どの問題をどの支えで学ぶかまで決める必要があります。
授業の入口では、解答の前にお子さまの最初の動きを見ます。問題文を読めているか、意味のわからない言葉があるか、使う知識は言えるかを確かめます。最初から講師がすべて説明すると、その場では進んでも、もともと何ができたのかが見えなくなります。短く試してもらい、止まった位置から説明を組み立てます。
同じ誤答でも、支え方は変わります。計算の決まりを忘れているなら、その決まりを使う行を示します。問題文から式を作れないなら、数量関係と式の対応を示します。意味を理解しているのに書き落としたなら、完成例を最初から説明するより、自分の解答を見直す箇所を決めます。「間違えた問題」という分類だけでは、授業で何をするかは決まりません。
講師の説明後には、必ずお子さまが動く部分を作ります。「わかりましたか」と尋ねるだけで終えず、次の1行を書いてもらう、条件が変わった問題で最初の式を作ってもらう、どの例を参考にしたか話してもらう、といった確認をします。黙って聞いていた時間と、自分で判断できた部分を分けて見ることで、次に任せる量が決まります。
支えを減らす判断も、講師の印象だけにしません。同じ種類の問題で、使う考え方を説明でき、隠した部分を埋められたら、自力で解く機会を作ります。反対に、前回できたところで止まれば、疲れや問題の違いも見ながら必要な箇所を開きます。支えを戻すことを後退と呼ばず、その問題を進めるための調整として扱います。
家庭での記録を次の授業で使う時間も確保します。前回の説明をそのまま繰り返す前に、印のある問題を見て、どの支えを使えば再開できるかを試します。本人が「ここまでは一人でできた」と示せるようになれば、講師は残る部分に説明を絞れます。記録を提出して終わりにせず、次に出す問題へ反映させるところまでが一続きです。
家庭で取り組む課題には、問題番号だけでなく使い方を添えます。「例を全部読んで理由を言う」「途中式を隠して埋める」「何も見ずに解く」と書き分ければ、お子さまが迷いにくくなります。詰まったときの戻り先と、そこで止めて質問に回してよい条件も決めます。質問ができる次の授業まで、同じ問題で時間を使い続けないようにするためです。
進み具合は、正答数だけでなく支えの量で見えるようにします。記録には日付、問題番号、取り組み方、止まった箇所、次に試すことを残せば十分です。たとえば「全文を見て式を説明」「途中式を隠して正解」「解答なしでは式の立て方で停止」と残します。全部が丸でも解答を見ている日と、誤りはあるけれど一人で式を作れた日を区別できます。
この記録があれば、保護者の方への説明も具体的になります。「数学を頑張っています」だけでは、家庭で何を見守ればよいか伝わりません。「文章から式を作るところは支えが必要ですが、式ができたあとの計算は自力で進みました。次は最初の式を一人で作れるか確かめます」と伝えれば、現在地と次の確認がつながります。
家庭が持つ役割は、講師の代わりに毎問教えることまで広げなくて構いません。取り組む時間と教材の置き場所を一緒に確認し、決めた区切りで終えられたかを聞いてください。「何ページ終わった」だけでなく、「今日はどこを隠してできた」と尋ねると、取り組み方の変化を話せます。説明できない箇所は、保護者の方が埋めず、そのまま塾への質問にできます。
もちろん、ご家庭からは生活上の条件を共有していただく必要があります。帰宅が遅い日、学校の課題が増える日、学習場所が使いにくい日があれば、同じ分量を毎日求める予定は続きません。塾はその条件の中で優先する内容を絞り、課題の量を調整します。家庭は時間や様子を伝え、塾は内容と支え方を組み直す、という分担です。
説明を聞けば進むのに一人になると止まる場合は、宿題を増やす前に、授業の最後の確認を見直します。講師の言葉がない状態で最初の操作を選べたか、見本の数字を覚えていただけではないかを確かめます。家で止まった記録は、本人を評価する材料だけでなく、授業で渡した課題が今の理解に合っていたかを点検する材料になります。
テストまでにすべてを自力の段階へ移せない場合には、取り組む範囲を相談します。基礎のどこを優先し、どの問題は例を使って理解をつなぐのかを明らかにします。決めた課題を増やすときも、ほかの科目と提出予定を見直してからにします。個別指導の調整は、授業中の説明量だけでなく、家庭で実行できる全体量まで含めて行います。
よくある誤解へのQ&A
Q1. 苦手科目は、毎日必ず最初にやるべきですか
毎日の絶対的な決まりにする必要はありません。苦手を後回しにして着手できないなら、最初に短い枠を置く方法を試せます。ただ、提出期限が近い課題がある日や、帰宅が遅く時間が限られる日は、順番を変えて構いません。優先したいのは、苦手科目が予定から消えず、その日に行うことが具体的である状態です。
「数学を最初にする」だけでなく、「夕食後に例の途中式を隠して埋める」と決めてください。短い課題から入り、区切りが来たら次の科目に移ります。始める順番と、解答例から自力へ進む順番を分けて考えると、予定を柔軟に調整できます。
Q2. 解答例を先に見せると、答えを覚えるだけになりませんか
その可能性があるので、読み終えたあとに何をしてもらうかまで決めます。解答を閉じて最初の操作を説明する、途中の1行を隠して補う、条件の異なる近い問題を解く、といった確認を置いてください。「見たからできた」で終えず、見なくてもできる部分があるかを探します。
答えを覚えていそうな問題では、理由を説明してもらいます。正答だけは言えても、なぜその式になるか話せなければ、式と問題文の対応に戻ります。完成例を使うこと自体を禁止するより、使ったあとに自分で行う作業を明確にするほうが、今の状態を確かめやすくなります。
Q3. 一部を隠しても解けない場合、もっと簡単な問題に戻しますか
まず、何が難しいかを見ます。用語の意味が曖昧なら用語の確認へ、前の単元の計算ができないならその計算へ戻ります。必要な知識はあるのに空欄の量が多すぎるなら、隠す範囲を小さくします。解けないという結果だけで、すべてを簡単な問題に置き換える必要はありません。
戻る場所を決めたら、元の問題へ帰る予定も残してください。基礎練習だけが続くと、何のために取り組んでいるかが見えにくくなります。「この計算を確認したら、止まった式の続きを書く」とつなげれば、戻った学習をその日の問題で使えます。
苦手の入口に、使える手順を置く
苦手科目を開いて手が止まったとき、次に必要なのは「もっと頑張る」という目標だけではありません。完成した解答を読むのか、途中を埋めるのか、自分で解いて確かめるのか。今のお子さまが進める段階を選ぶことで、その日の作業がはっきりします。
保護者の方には、解答を見た回数だけで判断せず、何を自分でできるようになったかを見ていただきたいと思います。昨日は見ながら書いた式を今日は説明できた。その変化を記録し、次に隠す部分を決めます。苦手をひとまとめにせず、手順を小さく受け渡していきましょう。昨日は例を見ていた生徒の手元に、今日は自分で書き出した最初の1行が残ります。
参考文献
- Zheng et al.(2020)European Journal of STEM Education. 知識の状態に応じた完全な解答例と穴あきの解答例の効果。https://consensus.app/papers/details/331ff6fad26c5afd82f9932e82317efa/





