総合型選抜データベース / 連載「総合型選抜を数字で考える」

評定平均は何を測っているのか

高校の評定平均は「テストが苦手な人のための代替指標」ではありません。 大学を卒業できるかどうかを予測する力では、標準化された学力テストより安定して強い—— というのが、大規模データで繰り返し確認されている結果です。

1. 47,303人のデータが示したこと

米国の全国標本(47,303人)を用いた研究では、4年での大学卒業を予測する力について、 高校の評定平均(HSGPA)の増分予測力がオッズ比1.28であったのに対し、SAT/ACTの得点は1.12にとどまりました (Galla ほか, 2019)。同じ方向の結果は他でも出ています。シカゴ公立学校の追跡では、 評定平均は ACT の得点よりも約5倍、大学卒業をよく予測しました(Sorgente ほか, 2024 の整理による)。 ある州立大学システムの分析では、評定平均が1標準偏差上がることは、SATが同じだけ上がることに比べて 6年卒業率を4〜6倍強く予測しました(Joyce ほか, 2026)。

なぜ評定が効くのか

研究者たちは、評定が「自己制御に関わる力」——出席し続ける、課題を出し続ける、 気が乗らない日にも一定の質を保つ——を捉えているためだと説明しています(Galla ほか, 2019/Noble ほか, 2004)。 テストは、ある1日の到達度を測ります。評定は、2年半のふるまいを測ります。

2. 高校をまたいで安定しているのは評定のほう

見落とされがちな点があります。評定と卒業の関係は高校が違っても一貫しているのに対し、 ACTの得点と卒業の関係は弱く、しかも高校によって傾きが変わります(Allensworth ほか, 2020)。 評定は「学校が甘い/辛い」でぶれる、というのが通念ですが、 卒業を予測する力という点では、ぶれているのはテストのほうだったわけです。

評定は、人種的・宗教的マイノリティの学生に対してより強い予測因子であり(Hoffman, 2005)、 不利な立場の集団に対する負の影響も標準化テストより小さいことが報告されています(Geiser & Santelices, 2007)。

3. ただし、逆転する場面がある

証拠が反対を向いている点

極めて選抜性の高い大学では関係が逆転します。Ivy-Plus 系の大学では、人種・性別・社会経済的地位を 統制したうえで、標準化テストの得点が1年目の学業成績を評定平均の4倍よく予測しました(Friedman ほか, 2025)。 また、高校ごとの評定基準の差を統計的に補正する役割は、テストの得点が担っています(Koretz & Langi, 2018)。 医学部入試では、入学試験が評定平均に対して大きな増分妥当性を示す一方、その逆は小さいという報告もあります(Jaehn ほか, 2025)。

したがって正確な言い方はこうなります。評定は「卒業できるか」を、テストは「上位層の中での学力差」を、 それぞれ別々に予測している。両方を使った場合が、どちらか一方より常に強い(Sawyer, 2013/Jaehn ほか, 2025)。

4. 総合型選抜の出願資格に評定がある理由

当塾が集計した825大学のデータでは、総合型選抜・学校推薦型選抜(公募制)の出願資格として 評定平均の基準を置く大学が多数あります。上智大学は多くの学科で「全体の学習成績の状況4.0以上」に加えて 科目別の基準を重ねます。明治学院大学は学科ごとに3.2〜3.8と差をつけています。 早稲田大学 社会科学部の全国自己推薦入試は4.0以上に加えて「欠席45日以内」という条件まで置いています。

欠席日数まで見るのは、恣意的な足切りではありません。上に挙げた研究が示すとおり、 出席と提出の継続そのものが、大学で卒業まで到達できるかを予測する情報だからです。

実務的な含意は単純です。評定は3年生の秋から作れません。1年生の1学期から積み上がるものです。 総合型選抜を選択肢に入れるなら、入試方式を決める前に評定が決まっている、という順序を理解しておく必要があります。

この記事の出典

Galla ほか (2019)全米標本47,303人。4年卒業の増分予測力は HSGPA が OR 1.28、SAT/ACT が OR 1.12
Allensworth ほか (2020)評定と卒業の関係は高校をまたいで一貫、ACTは弱く高校により傾きが変わる
Geiser & Santelices (2007)HSGPA は4年間の成績・卒業の最良の予測因子。不利な集団への負の影響も小さい
Joyce ほか (2026)州立大学システム。GPA 1SD の上昇は SAT の4〜6倍、6年卒業を予測
Friedman ほか (2025)Ivy-Plus 大学では逆にテスト得点が HSGPA の4倍よく1年目成績を予測
Koretz & Langi (2018)テストは高校間の成績基準の差を統計的に補正する役割を持つ
French ほか (2015)HSGPA は24〜34歳時点の学歴到達と収入を有意に予測
Bastedo ほか (2023)高校環境で文脈化した HSGPA は、文脈化したテスト得点より一貫して大学成功と関連

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この記事は、査読つきの学術論文を根拠に書いています。出典は各節に著者名と発表年で示しました。論文の結論が割れている論点は「割れている」と書いています。
作成:武蔵野個別指導塾(2026年09月14日)

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